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ある日のことだった。
河原に座り込み、カッパのジュンチャが雑草を束ねている。
トムはいつものように水を汲みに行こうとしていたが、その様子を見て思わず足を止めた。
「……えっ?」
カッパのジュンチャは、両手を軽く握り、まるで包丁を持っているかのように雑草を刻んでいた。
トントン……トントン……。
指先は空っぽなのに、草はまるで刃物で切ったようにスパスパと真っ二つにされていく。
「な、なにそれ!? ま、まさか魔法!?」
「ん? ああ、これでやんすか。包丁の魔法でやんすよ」
「ほ、包丁の魔法……!?」
トムは目を見開いた。
炎を出す河原のジュンチャに続き、今度は刃物の魔法。しかも実用的すぎる。
「お願いだ! ぼくにそれを教えてくれ! なんでもやるから!」
「ふむ……わかったでやんす。これは力でなく、手先の感覚でやんす。よく聞くでやんすよ」
カッパのジュンチャは、まず手のひらを形作り、空を切るように何度も見本を見せた。
そのたびに空気が刃物のように震え、草や枝が音もなく切断される。
「大事なのは、“切るつもりで切る”でやんす。斧を思えば斧になる。ナイフを思えばナイフになる。心に刃を持つでやんす」
河原のジュンチャの「ドーン!バーン!」式とは違い、明らかに理にかなった説明。
トムは必死に集中し、何度も手を振る。最初はただ空を切るだけで、草一本すら切れなかった。
だが――夕方。
何度目かの挑戦で、雑草がスッと切り裂かれた。
「き、切れた……!? ぼ、ぼく、やっと魔法が使えたんだ!」
トムは涙をにじませ、その場に座り込んだ。
泣きべそをかきながら、何度も同じ草を刻んでみる。
確かに刃が生まれている。
「よかったでやんすな。これができれば、調理も戦いも少しは楽になるでやんすよ」
「……応用すれば、ナイフにも、斧にも……? すごい、すごいよ!」
その横で、河原のジュンチャはミミズをもぐもぐ食べながら「オレ、やらん」と言っていた。
ほとんど何もしない彼だが――実際には、こうしてカッパのジュンチャが支え続けていたのだ。
河原の夜に、刻んだ草の香りと焚き火の明かりが広がっていた。
トムは初めて、自分も“強くなれた”気がして胸を熱くした。




