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河原のジュンチャの修行は、常人には理解不能だった。
「オレ言う! 小石、10個ひろえ!」
「えっ……ええと、はい……」
「つぎ! 焼き芋、10本食え!」
「む、無理だよ!? そんなに食べたらお腹壊す!」
「大丈夫! オレ、20本食った!」
「基準おかしい!」
さらに極めつけは――
「美味しいもん、10個言え!」
「えっ……パン、シチュー、ステーキ、アップルパイ……」
「もっと! もっと!」
「カレー、ローストチキン、プリン、チーズケーキ、ラーメン!」
「よし! 修行おわり!」
「終わり!?」
まるで意味が分からない。
だが、なぜかトムは確かに“何か”を掴みかけていた。
体の奥で、熱のような、力のようなものが渦巻いている。
「……きた。これが、魔力……!」
トムは両手を前に突き出す。
全身の力を込め、イメージする。炎の揺らめき、燃え盛る火柱。
「火よ……出ろおおおおっ!!」
――ぷぅ。
河原に虚しく響いたのは、腹の底から絞り出された小さな音。
そして鼻を突く刺激臭。
「……屁……だと……?」
立ち尽くすトム。
河原のジュンチャは腹を抱えて笑い転げ、カッパのジュンチャは頭を抱えている。
「トム、すげー! 屁魔法!」
「いやいやいや! こんなもん魔法じゃない!!」
「でも出たでやんすよ、力が! ……方向性、ちょっと違ったでやんすけど」
「違いすぎるよぉぉぉ!!」
こうして、トムの初めての魔法は――“屁魔法”として歴史に刻まれることとなった。




