18
河原の朝日が昇りきるころ、四人は出発の準備を整えていた。
向かう先は「薄暗い洞穴」と呼ばれる、町の外れにある初心者向けの小さなダンジョン。巨人との死闘を思えば拍子抜けするような場所だが、今度は仲間が増えた。試すにはちょうどいい。
街道を外れ、小川沿いの小道を歩いていると、サラがそっと口を開いた。
「……あの、皆さん。こうして一緒に行動することになったのですし、自己紹介をしておきませんか?」
彼女は昨日の乱痴気騒ぎが嘘のように清楚で、声も落ち着いていた。
「おおっ!じこしょうかい!いい!」
河原のジュンチャが嬉しそうに飛び跳ねた。
「では、わたしから……」サラは胸の前で両手を組み、少しだけ微笑んだ。
「私はサラと申します。僧侶の見習いで、まだ未熟ではありますが回復魔法を扱えます。皆さまのお役に立てるよう尽くしますので、どうかよろしくお願いいたします」
その丁寧さに、思わずトムは背筋を伸ばした。昨夜の暴走姿との落差がすさまじい。
「オレ、ジュンチャ。石ころ、すき」
河原のジュンチャは胸を張って答えた。
「オマエらも、石ひろうといい」
「でやんすでやんす、あっしはカッパのジュンチャでやんす。泳ぎと、きゅうりが得意でやんすよ。よろしくお願いするでやんす」
カッパのジュンチャは妙に自慢げに、背中の皿をぴかぴかに磨いて見せた。
「……俺はトム。冒険者だ。剣を使う」
短く答えたあと、トムは少し照れながら続けた。
「この河原で暮らすようになって、こいつらとは腐れ縁みたいなもんだ。……まあ、力になってくれると助かる」
サラは小さくうなずき、真剣な瞳でトムを見つめ返した。
「はい、全力を尽くします」
そのやりとりを聞いて、河原のジュンチャがにやりと笑った。
「オマエら、なかよし。いい。オレ、うれしい」
道は森の中へと続き、やがてぽっかりと口を開ける洞窟の入り口が見えてきた。
そこからは冷たい空気が漂い、内部は真っ暗で奥が見えない。
「ここが……薄暗い洞穴」トムが呟いた。
「初心者がよく挑むダンジョンだ。だが油断は禁物だぞ」
「こわい……でも、いく!」
河原のジュンチャは目を輝かせて前へ進もうとする。
「でやんすでやんす、今度こそ祭りじゃないでやんすよね……?」
カッパのジュンチャは腰を引きながらついていく。
サラは胸の前で祈りを捧げる仕草をし、静かに呟いた。
「光よ、道を照らしたまえ」
柔らかな光球が彼女の手のひらに生まれ、洞窟の暗闇をほのかに照らし出す。
トムは仲間たちを見回し、剣を握りしめた。
――今度こそ、きちんと準備して挑むんだ。
四人の影が、薄暗い洞穴の奥へと伸びていった。




