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異世界河原暮らし  作者: 大ジュンチャ
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「この間は……正直、死ぬかと思った」


焚き火の前でトムはぽつりと呟いた。

初めてのダンジョン探索。

巨人と対峙し、仲間を失いかけ、自分も瀕死になった。

結果として生還できたのは、奇跡以外の何ものでもなかった。


――いや、奇跡に頼る冒険なんて、冒険者とは呼べない。


「今回は、ちゃんと準備してから行く。二度と同じ失敗はしない」


真剣な声に、カッパのジュンチャと河原のジュンチャが顔を上げた。


「おぉ、準備でやんすか! いい心がけでやんす!」

「オレ、石ころ拾う」

「……いや、石ころは準備にならんだろ」


思わず頭を抱えながらも、トムは決意を固めていた。


冒険者会館で調べてみると、あのダンジョンの正式名称は「不帰の古代神殿かえらずのこだいしんでん」だった。

名の通り、一度潜れば帰ってこられないと噂される危険地帯。


「どうりで強敵ばかりだったわけだ……」


記録を見返しても、近年で潜った者はほとんどいない。

巨人級の魔物がうろついている場所など、普通の冒険者は避けるに決まっている。

他の冒険者にはさけられているので、誰も危険なダンジョンだと教えてくれない。

そんな場所に、準備もせず足を踏み入れていた自分を思い出し、背筋が寒くなった。


「まずは水と食料だ」


町の商人から保存食をいくらか買い込んだ。乾燥肉、干し果物、硬いパン。どれも質素だが、腹を満たすには十分だ。

だが金は限られている。残りは――河原で調達するしかなかった。


「ほら、バッタ取れたでやんす!」

「オレ、カエルつかまえた!」


……どうしてこうなるのか。

乾燥肉の横に並べられるバッタとカエルの山を見て、トムは深いため息をついた。


「……悲しい……これが冒険食料なのか……」

「栄養満点でやんすよ!」カッパのジュンチャは胸を張る。

「カエル、うまい」河原のジュンチャはぺろりと舌なめずり。


トムは口元を引きつらせながら、袋に詰め込んだ。


次に必要なのは道具類だ。

たいまつ、火打石、縄、油、薬草、包帯……。


「金が……足りねえ」


財布を開けば、中はすっからかんに近い。

巨人を倒して得た大金は、あのレストランで消えた。三十人前の料理に消えたのだ。思い出しただけで胃が痛む。


それでも、最低限の道具は揃えた。なけなしの金をはたき、カッパのジュンチャに縄を持たせ、河原のジュンチャにはたいまつを持たせる。


「オレ、火つけたい!」

「危ないからやめろ!」


火遊びをしようとするジュンチャを止めながら、トムは必死で計画を立てていった。


だが、問題はまだあった。

町の冒険者達に声をかけても、返ってくるのは冷たい視線ばかり。


「お前……河原で裸のやつらと一緒に暮らしてるって本当か?」

「ちょっと……近寄らないでくれる?」


噂はすっかり広まっていた。

ジュンチャ達と一緒にいるというだけで、誰も真面目に取り合ってくれない。


「ダンジョン探索の準備ってどうすれば――」

「は? 自分で考えろよ」


肩をすくめて去っていく冒険者の背中を見送りながら、トムは拳を握った。


「……仕方ない。俺達だけでやるしかない」


河原の仲間たちを振り返ると、二人は相変わらず呑気な顔をしていた。

「オレ、肉たべたい」

「魚の干物も追加でやんす」


頼りない……けれど、不思議と心強い気もする。


準備を終えた夜。

河原の焚き火の周りで、三人はそれぞれの荷物を抱えて座っていた。


「……よし。これで最低限の準備はできた。次は必ず成果を出す」


トムの宣言に、カッパのジュンチャはにやりと笑う。

「スイスイーっと行って、宝を山ほど持ち帰るでやんすよ!」

「オレ、うまい物さがす」


……どうにも先が不安だった。

だが、仲間と共に再びダンジョンに挑む決意は固まっていた。


こうして、三人の新たな冒険が始まろうとしていた。

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