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異世界河原暮らし  作者: 大ジュンチャ
10/17

10

ゴブリンの群れを切り抜けたトムとカッパのジュンチャは、さらに奥へと進んでいた。


通路の先は一層ひんやりとして、壁に埋まった結晶の光が青白く揺れる。

二人の靴音が石の床に響き、誰もいないはずなのに妙に胸騒ぎがした。


「……なんか、空気が重いな」

トムは剣を握り直し、視線を前に送った。


カッパのジュンチャも皿を押さえながら頷く。

「確かに……今までのゴブリンとは違うでやんすな。奥に、何か……いる」


やがて通路の先に巨大な石の扉が現れた。

開いている。まるで、誰かが「入れ」と言っているように。


二人は目を合わせ、慎重に中へと足を踏み入れた。


広間の中央――そこに立っていたのは、巨人だった。

黒い結晶を体にまとい、鎧のような鱗を持ち、胸の中央には赤く脈打つ紋が光っている。

呼吸するたび、地面が低くうなりを上げる。


「な、なんだアイツ……でけえぞ……」

トムが思わず声を漏らす。


カッパのジュンチャも初めて目にするその姿に、皿の水が微かに揺れる。

「あっしも知らねぇ……けど、ただの魔物じゃねぇのは間違いないでやんす!」


巨人はゆっくりと頭を持ち上げ、真紅の目で二人を見下ろした。

次の瞬間、重い足が床を踏み抜き、広間全体が震える。


「来るぞ!」

トムは咄嗟に刃の魔法を放った。光の刃が一直線に巨人へ飛ぶ。


――しかし。

刃は鱗に弾かれ、火花を散らしただけだった。


「効かねぇ……!」


続けてカッパのジュンチャが手を広げる。

「スイスイーでやんす!」


水のカッターが一直線に走り、巨人の腕を斬り裂いた。

だが、深々と切り裂くはずの水刃は、黒い結晶に触れた瞬間、力を吸い込まれるように消えた。


「な、なんでやんす!? 水が……消えたでやんす!」


巨人はその大きな腕を振り下ろし、地面を砕く。

衝撃で床が割れ、二人は大きく弾き飛ばされた。

天井から石片が崩れ落ち、広間の出口がふさがっていく。


「やばい、逃げ道が……!」

トムは必死に立ち上がる。


カッパのジュンチャも皿を押さえて歯を食いしばった。

「あっしの魔法が効かねぇ相手なんて……どうするでやんす……!」


巨人は胸の赤い紋をさらに輝かせ、広間に重苦しい圧力を放つ。

その影が二人を飲み込むように迫ってきた。


トムは剣を握りしめたが、手が震えている。

「……勝てる気がしねぇ……!」


カッパのジュンチャも言葉を失い、ただ目の前の巨人を見据えるしかなかった。


そして巨人の拳が、稲妻のような速さで振り下ろされ――


――二人の視界を覆う。

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