プロローグ
ここは中世の世界のとある田舎町から外れた河原。
石ころと草むらばかりの殺風景な土地に、二匹の異形が住んでいる。
一匹は、頭に皿を持つカッパの青年。
名を――カッパのジュンチャ。
人間でいえば中学生くらいの知恵を持ち、仲間想いの性格だ。
服は着ていないが、河原で暮らす分には誰も気にしない。
もう一匹は、腹がぽっちゃりした河原のジュンチャ。
言葉は片言、知能は小学生くらい。
やはり服は着ていない。
それでも、二人は一年前に一緒に異世界転生してきてから、ずっとこの河原で生き延びてきたのだ。
主食はミミズやバッタ。今日も二人で草むらを掘っていたところだった。
「ジュンチャ。今日は大物のミミズ、見つかるでやんすかね」
「あ、オレ、さっきミミズ取った!三本!うまい!」
「おお、やるでやんすなぁ」
のどかな河原暮らし。
しかしその日、彼らの運命を変える一人の人間が現れる。
「……す、すみません! ここで休んでもいいですか!?」
声をかけてきたのは、剣を腰に差した青年。
まだあどけなさが残る顔立ちで、いかにも初心者といった風貌の冒険者だ。
名はトム。つい先ほど、冒険者ギルドに登録したばかりだという。
「なんだあんた、人間でやんすな? ここに何の用で?」
「い、いや……川で水を汲もうと……って、うわっ!? か、カッパ!? それに……なんかぽっちゃりした裸の……な、なにこれ!?」
「オレ、ジュンチャ! ミミズ、食う!」
「そ、そういう自己紹介の仕方ある!? ていうか食うなよ!? 生で!?」
トムは両手で頭を抱え、悲鳴を上げる。
しかし、河原の二匹にとっては当たり前の暮らし。
この出会いが、彼ら三人の奇妙で騒がしい冒険の始まりとなるのだった。