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8-10

「はい、それでは第一回、超絶セクスィ~美少女、クラリスちゃんの花婿決定戦を開催しま~す! はい、皆の者、拍手!」

「どこに超絶セクスィ~美少女がいるのかな? わっちには、調子に乗ったクラリスちゃんしか見えないんだけど……」

「お? 言ってくれるじゃない。ヤナギちゃん基準では、あたしは美少女じゃないのかな?」

「美少女なのは認めるけど、セクシーではないかな。ペッタンコだし」

「ぺ、ペッタンコ!?」

「なんなら、スットントンって言い直しても良いよ? ハチロウくんもそう思わない?」

「うん。貧相だね」

「スットントン!? 貧相!?」


 こらこら、旅の仲間たち?

 何が気に食わないのかしらないけれど、ちょっと言い過ぎじゃないかしら。

 あたしは人間ができてるからその程度じゃ怒ったりしないけど、仮にクラーラに似たような暴言を吐いてたらぶっ殺されてるよ? 町ごとソドムで焼き払われるよ?

 あれ? そういえば、いつもならフォローしてくれるマタタビちゃんが何も言わないわね。

 正座してるヤナギちゃんの後ろに隠れたまま、タケミナカタをジーっと見てるわ。


「取り込んでおるとこ悪いが、どうやって花婿を決めるんじゃ? まずはこの二人に戦わせるか?」 

「うん、そうしてもらうと助かるかな。ほら、あたしって弱い男には興味ないから、とりあえず二人で殴り合って。勝った方とあたしが殴り合って、あたしに勝ったら結婚してあげる」


 それっぽい理由はつけたけれど、本当は龍王を二人も相手にする自信がないからよ。

 だって龍王よ?

 龍王の中では弱い部類だとスサノオは言っていたけれど、それでも人間を遥かに凌駕する力を持った上位ドラゴンであることに変わりはないの。

 クラーラと二人でならともかく、あたし一人じゃどちらか片方でも手に余るわ。


「だ、そうじゃ。お前たちもそれでええか?」

「拙者は構わんが……。おい、タケミナカタ。お前はどうなんだ?」

「あ? 何か言ったか?」

「話を聞いていなかったのか? 拙者とお前がまず戦って、勝った方が小魔王と戦う段取りになったのだ」

「そうなのか。じゃあ良いぜ、久々にやり合おうじゃねぇか」

「セリフは息まいているが、気もそぞろだな。そんなに、あの魔描族の娘が気になるのか?」

「ん? ああ、気になってる。正直、小魔王がどうでもよくなっちまってるよ」


 おっと? 

 まさかタケミナカタは、オオヤシマで言うところのロリコンなのかしら。

 でも、そんな感じには見えない。

 戸惑いと郷愁が入り混じっているような目でマタタビちゃんを見てる。

 

「ちょっ、ちょぉ~っと待ってクラリスちゃん。まさか、ここで始めさせるつもりじゃないよね?」

「いやいや、さすがに外で戦ってもらうよ。じゃないと、今晩の寝床がなくなるじゃない」

「外でも駄目だよ! せめて、人がいないところに移動しよ? こんなところで暴れたら、賞金がかけられちゃうかもしれないよ!?」

「心配ご無用! 何故ならあたしは、龍王に求婚されるほどの美少女! つまり、お高い女なのよ!」

「いや、賞金だからね? 町一つ壊滅するほどの被害を出したら、間違いなく生死を問わずだよ? デッドオアアライブなんだよ!?」

「ヤナギちゃん、発音が悪いよ。正しくはDEAD OR ALIVE。はい、Once Again」

「そこはどうでも良いよ! たぶん『もう一度』的な意味なんだろうけどどうでも良いから!」


 ヤナギちゃんが妙に必死だ。

 まあ、それも仕方ないのかもしれない。

 もしもクラーラがいつも通りなら、魔術で拘束なり吹っ飛ばすなりしてあたしを止めると思う。

 でもヤナギちゃんは、人体再現魔法(イザナギ)と非攻性魔術しか使えない……はず。仮に使えたとしても、あたしをどうにかできるとは思えない。もしできるなら、とっくにそうしているはずだしね。

 ハチロウくんと協力しても、それは同じ。

 ヤナギちゃんは「協力してどうにかしよ?」的な視線をハチロウくんに贈っているけど、ハチロウくんは首を激しく左右に振って「無理」と言ってる。


「りゅ、龍王様方! クラリスちゃんと結婚しようが犯そうが輪姦(まわ)そうが構いませんので、せめて町中で暴れるのはやめてください! この通りでございます!」


 だからなのか、ヤナギちゃんは龍王たちに土下座までして懇願した。

 だけど龍王たちは、ヤナギちゃんがお願いしたところで言うことは聞いてくれないと思う。

 だって、オオヤシマという国を護ることが存在意義で、人間は最低限いれば良いって言ってたもの。極端な話、町が二つ三つ消えようが何もしないと思うわ。

 

「安心しろ、幽霊の娘よ。べつに町が三つ四つ消えようが、何の問題もない」


 ほら、スサノオがトドメをさした。

 さらに表情を見た感じだと、タケミカヅチはすでにやる気満々みたい。タケミナカタも指をボキボキと鳴らし終えるなり、ストレッチを始めた。

 この二人が本気で暴れたらどれほどの被害が出るかはわからないけれど、あたしは早く二人のバトルが見たくてワクワクしている。

 いや、その前に、あたしを巡って戦おうとしている二人にあたしなりのエールを送りたい。


「ヤナギちゃん。あたし、生きてる内に言ってみたかったセリフがあるの」 

「一応、聞いてあげる。何?」

 

 必要はなかったけど、ヤナギちゃんに許可を求めたら何かを諦めたような顔をしてOKを出してくれたから、あたしは両手を胸の前で祈るように組み、上目遣いでタケミカズチとタケミナカタを見ながら……。


「さあ! あたしのために争って!」


 と、叫んで、試合のゴングを鳴らした。

 

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