1-1
「げっ……。また来た」
うっすらと照らし出された舞台上で、シーラは前回と変わらず揺り椅子に腰かけて、美しい顔を歪めて観客席を忌々しそうに見た。
「どうして来たの? 前回の話、聞いてた? 変態よ? 死んだ人間を甦らせて、犯したいだの犯されたいだの言う変態少女二人の話よ? そんな話の続きが聞きたいだなんて、あの二人並みの変態よ?」
シーラはどうあっても働きたくないらしく、「働いてもさぁ、昔と違ってお金もらえないのよ。タダ働きなのよ! 酷くない? 私、見てわかる通り高給取りだったのよ? その私が、客が来たってだけでタダ働きしなきゃいけないの。理不尽でしょ!」と、愚痴っている。
それでもプロ意識はあるようで、揺り椅子から立ってドレスの皺を右手で撫でて伸ばした。
「でもまあ、来ちゃったんなら、相手をしなきゃね。ええ、やるわよ。銅貨一枚にもならないけど、やってやるわよ」
そもそも、この劇場が料金を取っているのか疑問だが、シーラは気だるげで心底面倒くさそうにしながらも姿勢を正して、瞳を閉じた。
そして再び瞳を開くと、女神の如く荘厳な雰囲気が醸し出された。
「本日、お客様にお聞かせいたしますのは、二人がオオヤシマを構成する島の一つ、シコクを冒険……いえ、蹂躙する一連の物語。二人は到着して早々、腹ごしらえをしている最中に町のチンピラどもに絡まれます。まあ、あの国では異人が珍しいのに加え、私ほどではありませんが二人は美少女。金と女に飢えたチンピラに絡まれるのは当然でしょう。タカマツの町での騒動を皮切りに、二人はシコクを暴れ回ることになるのでございます。タイトルはそう……『異種超級二等武神/虚言の魔女』とでも、しておきましょう」
優雅にお辞儀をしながらタイトルを言ったシーラの口元は、観客席から見えなくなる寸前に、歪に歪んだ。