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クラリスとクラーラ ~魔王を倒した勇者に導かれて旅をしていたら大魔王になっていました~  作者: 哀飢え男
第五章 その依頼、クラリスと…… /クラーラが引き受けました
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5-9

 クラリスは性欲の権化。

 それは実体験を通して嫌と言うほどわかっていましたが、まさかあのようなオッサン、しかも、モンスターのような巨体でゴツくて、オマケに猿のような顔をした男に欲情するほど趣味が悪いとは知りませんでした。


「まったく、相変わらず女子に弱い……」


 とは、拙僧の無いクラリスを怒り半分、あきれ半分で睨んでいたわたしから数メートルほど離れた場所で、わたしと似たような顔をしていたヨシツネの呟きです。

 ですが大男の方ではなく、クラリスに投げつけた方が良かったのでは? と、鞘が直撃した大男の額を撫でるクラリスを見ながら思ってしまいました。


「娘よ。一つ、確認しておきたいことがあるのだが……」

「かまいませんが、あの二人を放っておいていいのですか?」

「良くはないが、今は良い」

「はあ、そうですか。では、確認とやらをどうぞ」


わたしに視線を戻したヨシツネは、微かに聞こえてくる談笑で後ろがどうなっているのか察しているでしょうが、とりあえずは目の前のわたしに集中することにしたようです。


「見たところ、貴女は魔術師。その貴女が、本当に某と戦うつもりか?」

「そのつもりですが?」

 

 ヨシツネの問いに、子馬鹿にしたような顔と口調を意識してと答えましたが、ヨシツネが言いたいことも理解できます。

 彼は、護身術程度の武術の心得しかないわたしからすれば、能力をつかわなくても瞬間移動にしか思えないほど早く移動できますし、能力で別空間を経由して移動することも可能。

 接近されたら対抗手段が皆無と言っても過言ではない魔術師にとっては、天敵と言って良いでしょう。

 ですが、それは並の魔術師の場合です。


「では、ヒミコ殿には悪いがこちらも遠慮なく、手早く済まさせてもらう。某の能力で何とか逃がせたものの、兵たちの治療もせねばならぬのでな」

「どうぞ、どうぞ。そうでなくては、こちらもやりがいがありませんので」


 律儀で真面目。

 オマケに正義感が強く、恨み辛みの末の復讐心に駆られて、オオヤシマに攻め込んで来たわけでもなさそう。

 しかも、わたしたちがヒミコによって送り込まれた刺客だと、状況から推理するほど理知的。顔もまあ、中年と言える歳の割にはイケメンの部類ですね。が、少し話してみて彼に抱いた感想です。

 できれば、敵としてお会いたくなかった。と、男性を蔑視しているわたしにしては珍しく、好感を抱いています。

 ですが、依頼を受けた以上はお相手しなければと思いなおし、詠唱を始めました。。

 わたしが知る限り最も汎用性と拡張性に富み、発動さえしてしまえば一流の剣士ですら瞬殺してしまう最上級魔術を。


「|彼の者は剣の虜囚《He is a prisoner of the sword》 。|彼の者は剣そのもの。《He is the sword itself》|剣に魅入られ、《A sword god who was fascinated》|剣を極めた剣神。《by swords and mastered swords》

|私は彼を想像する。《I imagine him》|私は彼を夢想する。《I dream of him 》

|私は彼を創造し、再現する。《I creation him and reproduce》|その名はラーサー。《His name is Larser》|剣聖、ラーサー・ペンテレイア……《Sword Master Larser Penterre》」


 最後に「剣聖再現魔術(リメンバー・ラーサー)」と唱え、発動しました。

 ですが今回は、相手が相手ですので前回よりも多くの補助魔術を付与しています。

具体的には、次元を歪めて全ての物理攻撃を無効化する『次元断絶防御壁魔術』ディメンション・アーマー。三百六十度の視界と音速で飛ぶ物すら視認できる動体視力を得る『超視覚付与魔術(ゴッド・アイ)』。高速戦闘も予想されますので『衝撃緩和魔術ショック・アブソーバー』と『体感時間調整魔術(ジャネーズ・ロー)』。他にも、細かな物も含めると三十近い数になります。


「ラーサー? 貴女の詠唱や魔術名に含まれていたラーサーとは、西欧で最強と謳われた騎士。剣聖ラーサーか?」

「ええ、その通りです」


 ヨシツネの質問に答えつつ、わたしは「準備が整うまで待ってくれるとは、随分とお人好しですね」と、内心で呆れました。

 詠唱時間を稼ぐためにあらかじめ撒いておいた、『浮遊機雷魔術(フライング・ボム)』に気づいていたから? とも疑いましたが、準備が整うまで攻めてこなかったのは、自身の能力と経験に基づいた余裕故でしょう。

 ですが、それは判断ミスです。

 この魔術を創り、本来の使い手であるアリシア様のリメンバー・ラーサーよりも、わたしのリメンバー・ラーサーの方が内包している魔術の数が多い。

 それはつまり、魔術を無効化されるなどしない限り、今のわたしはアリシア様よりも強いということになるのです。


「待たせておいてなんですが、そろそろ始めませんか?」

「承知した。だが、今一度確認する。本当に、某と戦うのだな?」

「ええ、戦います。フルボッコにしてさしあげますから、とっととかかってきてください」

「その言葉、後悔するでないぞ」


 しません。

 わたしは常日ごろから、選択した行動の果てに得た結果で後悔しないよう、心掛けています。

 今回だってそうです。

 わたしは自分の強さを確認し、より高みへと昇るための踏み台として、ヨシツネと戦うことを選びました。

 仮に負けたとしても、努力不足だったと反省し、改善の努力をするだけで後悔はしません。


「ゲン国皇帝兼、ゲン軍総司令、チーンギ・スハン……いや、転生者が一人、ミナモト・ヨシツネ。推して参る」


 ヨシツネは剣を構え、すぐにでも突っ込んできそうなほどの前傾姿勢を取りました。

 ですが、何かを待っているかのように動こうとしません。

 もしかして、わたしが名乗るのを待っているのでしょうか。

 そうだとしたら間抜けにもほどがあるので、魔術を一つ二つ撃ち込んで先制しようと考えましたが……。残念ながら、それが許される雰囲気ではないようなので、好みではありませんが……。


「元ブリタニカ王国立魔術院所属、特級魔術師。序列三位。『虚言の魔女』クラーラがお相手いたします」


 わたしは胸を張って、大勢の嫉妬を凝縮して名付けられた異名を名乗りました。

読んでいただけるだけで光栄なのですが、もし「面白い!」「続き読みたい!」など思って頂けたらぜひブックマーク、下の評価を5つ星よろしくお願いします!


ぜひよろしくお願いします!

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