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場面が暗転して緞帳が上るように視界が開けると、舞台上でおぞましいものでも見たかのように顔を歪ませたシーラに、視界が吸い寄せられた。
「あ、あのクソガキ、やっぱりオカズにしてやがったのか。しかも、毎晩」
ついに身体まで震わせ始めたシーラは、それと代わるように何かを諦めたような顔を浮べて、天井を仰いだ。
「ねえ、やめていい? もう見たくないんだけど! 女なのに男以上に性欲が強くて覗き魔で露出魔の変態なんて見続けたくないんだけど!」
身体の震えは嫌悪感からではなく怒りからだったらしく、シーラは表情を憤怒で燃え上がらせて、天井へ向けて怒鳴った。
「やぁだぁぁぁぁ! 絶対に嫌ぁぁぁぁだぁぁぁぁ! もう見たくない! だって、次はあの子たちの修業時代の話なのよ? あんなド変態になる過程なんて、見たいわけがないでしょ!」
次は二人の過去。その修業時代。それだけは、シーラの怒声で否応なくわからされた。
「いやいや、需要なんてないでしょ。アンタは知らないでしょうけど、今の若者は努力とか大嫌いなの。努力もしないくせに楽して成功したがる怠け者しかいないの。そんな奴らが、色気もクソもない子供時代のあの子たちの努力なんて聞きたいと思う? 思う訳ないじゃない! 昨今の若者の駄目っぷりを舐めるなクソジジイ!」
若者への偏見が凄いシーラは、天井へ向けて中指を立てた。
だが仮称クソジジイに言い包められたらしく、「チッ! そういうことなら、やってやるわよ!」と、吐き捨てて目を瞑り、額を右手の人差し指で数回、トントンと突いた。
「先ほどはお見苦しいところをお見せしてしまい、申し訳ありませんでした」
そして深々と頭を下げ、再び上げたシーラの顔は、営業スマイルになっていた。
「さて、それでは本編に参りましょう。お客様方にお聞かせするのは、先ほど私が口走ってしまった通り、二人の過去。二人の修業時代と言っても過言ではない時期のお話でございます。私としてはあまり……いえ、まったくお勧めいたしませんが、それでもお客様方は、お聞きになられますか?」
頭を下げたままなので、シーラが今どんな顔をしているのかわからない。
「……お帰りにならないと言うことは、お聞きになるということでよろしいですね? 本当に、よろしいのですね?」
だがシーラは頭を垂れたまま、暗に「帰れ」と言わんばかりに、観客席に向けて念を押した。
「帰らない……か」と、観念したような呟きを零したシーラは、頭を上げて姿勢を正して、「では、しかたありませんね。それでは改めまして、本編へと移らせていただきます。時は、二人がアワジへ漂着した日より、四年前に遡ります」と、続けた。
「出会ったばかりの頃の二人は、今以上に仲が悪かった……いえ、険悪でございました。これからお聞かせいたしますのは、殺し合いまで演じた二人の成長の過程。タイトルはそう……『これって、クラーラの涙なんじゃないの?/断じて、違います』で、ございます」
シーラがタイトルを言い終えると同時に優雅に両手を羽のように広げると、緞帳が降りるように徐々に、場面が暗転した。
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