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クラリスとクラーラ ~魔王を倒した勇者に導かれて旅をしていたら大魔王になっていました~  作者: 哀飢え男
第九章 あ、やっと治った/これ、どういう状況ですか?
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9-30

 背中に注がれるクラーラの視線が、妙に熱い。

 痛いくらい熱い。

 あたしがやったことで旅に支障が出るから怒ったんだと最初は思ったけれど、そうじゃない。

 この感じは憶えがある。

 マタタビちゃんとシノさんがあたしに浴びせる欲望に満ちた視線と似ている。

 でも、どうして?

 クラーラとの信頼関係はオオヤシマに来てからそれなりに高まってると思うけど、好感度は上がっていないはず。

 だって、あたしとクラーラは真逆だもの。

 あたしは魔術の才能も興味もない強い人との殴り合いが大好きなバトルジャンキーだし、食欲と性欲には逆らえない。

 クラーラは魔術と歴史が大好きで、無駄だと判断した戦いは一発で終わらすか無視するかの二択で食も細いし (アタシ基準)性欲の捌け口はハチロウくんだけ。

 あたしはすぐに同情しちゃうほどであった人に感情移入しちゃうけど、クラーラはある程度親しくなった人でさえ冷酷に切り捨てられるくらい薄情。

 そのクラーラがあたしにお熱? 

 しばらく相手にしなかった時のマタタビちゃんやシノさんのように、あたしに欲情してる?

 そんな馬鹿な。

 もしも本当にそうなら、オオヤシマが海の底に沈んじゃうくらいの超異常事態よ。


「クラリス。何をボケっとしているのですか? 撃たれてますよ?」

「あ、あぁ~うん、わかってる」


 攻撃されているのはわかってた。

 だって、目の前が真っ赤? 真っピンク? に、なっていたから。

 それが気にならないくらい背中の視線に気をとられていたんだけど、投げかけられたクラーラの声はいつも通りのぶっきら棒。

 今も背中に感じている熱視線とは、温度差があり過ぎる。


「クラーラ。このまま受け続けても平気?」

「平気です。魔術の類ではないのでどのような技術なのか解析はできませんが、ピンク色の光線は何かしらの粒子を棒状に放出しているだけだと思います。あなたにもわかるように言うなら、水鉄砲のようなものですね。実弾も混じっていますが、全て対物理防御魔術(アンチ・フィジカル)で無効化できます」 

「あ、そう。じゃあ、そろそろ反撃しても良い?」

「むしろ、そうしてください。今現在、わたしたちを包囲して攻撃している巨人たちよりも、東北東方向から向かって来ているモンスターの方が脅威度は高いですから」

「はいはい。じゃあ、そうす……る? モンスター? どうしてモンスターが?」

「ナリヒラ氏が死亡したことで洗脳が解けたモンスターがウエノ魔物園を脱走し、こちらへ向かっているみたいなのです。保有魔力量からの判断しかできませんが、先頭の竜種の魔力量はあなたの半分。魔力量と七つの首と赤い鱗の特徴から予想するに、母の登場以前に世界の脅威とされていた伝説のドラゴン、サタニエルだと思われます。他にも、突如として歴史の表舞台から消えた伝説の魔物が多々確認できます」

「え? そんなやばいモンスターが近くにいたの? って言うか、飼育してたの? オオヤシマ人の危機意識ってどうなってんの!?」

「ナリヒラ氏の能力で支配して、見世物にしていたのでしょうね」


 伝説級の魔物なんて、そもそもどうやって集めたんだろう。

 ナリヒラがわざわざ出向いてまで捕まえたとは考えづらいから、捕まえたのは他の転生者?

 なんてことを考えてる場合じゃないわね。

 みんなが逃げ込んだ足元の部屋は評判通りビクともしていないけれど、塔自体が崩れたら中の人がシェイクされてミンチになりかねない。


「クラーラ。足元の部屋にみんなが避難してるから、防御魔術をかけといて」

「わかりました。では|対物理・対魔術用防御魔術アンタッチャブルと、衝撃緩和魔術ショック・アブソーバーをかけておきましょう」


 クラーラが手元の光る板を操作すると、みんながいる部屋が一瞬だけ淡い光に包まれた。

 これで遠慮なく暴れられる。

 まずは一番遠くに陣取って、両肩の筒からバカスカ砲弾を飛ばしてきてる奴から片付けるとしますか。


「救世崩天、蒼天滑空(エアリアルスライダー)! か~ら~のぉぉぉ……巨神踏歩(ギガント・ステップ)! さらに! 拳乱烈脚(マルチ・ラッシュ)


 一番遠くにいた奴を乗っていた踏み潰したあたしは、振り返るなり残りの巨人を拳乱烈脚(マルチ・ラッシュ)の弾幕で牽制した。

 左脇に大きな筒を抱えていた蒼い巨人と、他とは段違いの装甲を着込んでいた巨人は避け切れずに被弾して爆散したけど、残りの四体は空中で回避したり塔の影に隠れたりして回避した。


「クラーラ!」

「お任せを。征きなさい。|攻防一体全方位攻撃魔術フィン・ファンネル


 クラーラの詠唱が終わると同時に翼がバラバラになって、不規則な軌道を描いて巨人たちを追いかけ始めた。

 空中に逃げた一体は四方八方から魔力光線を浴びて爆発。

 塔の影に逃げ込んでいた三体の内二体はなんとか逃げようとしているけど、残りの一体は逃げきれなかったのか、塔と塔の間から炎と一緒に手足の残骸だけが飛び出て来た。


「ふむ。転生者がコスト度外視で造ったと言う割には弱いですね。手応えが無さすぎます」

「え? これって転生者が造ったの?」

「タムマロ様が言うには、そうらしいです」

「へぇ、タムマロから聞いたんだ」


 チバに移動してからはさっぱり姿を見せてなかったクセに起きたばかりのクラーラの前には現れて、しかも入れ知恵までしていたことを知って、あたしの嫉妬心に火が着いた。

 

「救世、崩天……」

「あ、クラリス。解体してみたいので、一体は捕まえて……」

「知ったことか! 爆熱神指(ゴッド・フィンガー)ぁぁぁぁぁ! からの! 外典! 滅龍烈破ドラゴン・ディソリューション!」


 あたしはフィン・ファンネルの攻撃を避けつつも背中からピンク色に輝く刀身を持つ剣を抜いて斬りかかって来た一体の頭を粉砕しつつ地面に叩きつけ、返す刀で最後の一体を周りの塔ごと消滅させた。

 

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