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クラリスとクラーラ ~魔王を倒した勇者に導かれて旅をしていたら大魔王になっていました~  作者: 哀飢え男
第九章 あ、やっと治った/これ、どういう状況ですか?
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9-25

 目が覚めたわたしの目に真っ先に映ったのは、見慣れない服を着てマスケットに似た武器をクラリスに向けて取り囲んでいる兵士のような集団。

 次いで下着姿の魔族の女性たち。ハチロウちゃんと、布にくるまれたマタタビを抱くヤナギと知らない着物姿の少女。さらに、髪と瞳に色が違うだけで顔はヤナギにそっくりですが、背中から蜘蛛の足を生やした女性。最後に、全裸の男を右手だけで掴み上げているクラリスでした。

 情報量が多すぎて理解するのに十数秒ほど要しましたが、それなりに状況を察したわたしはとりあえず……。

 

「……男性器縮小魔術ロスト・オブ・プライド

「な、なんだコレ! オレの、オレの息子が!」


 クラリスが掴んでいた男性の姿が不快だったので、小指以下の大きさまで小さくしました。

 ですが、クラリスの反応が意外です。

 状況から見て、クラリスとあの男は敵対していたはず。

 それなのにクラリスは、「さ、さすがに可哀想すぎる……」と、同情して解放してしまったのです。


「あ~……。え~っと、もう、良いよね?」

「え、ええ、きっと、生きている方が地獄だろうから」


 顔立ちから察するにヤナギの姉と思われる女性の同意を得て、クラリスは傷心の男性を自衛軍へと引き渡しました。

 それで済めば、男性以外は大団円だったのですが……。


「……じゃあ、あたしらはこれで……」

「逃がすと思うか? 器物破損、建造物損壊。さらに、要人誘拐に殺人未遂他、諸々の罪で拘束する!」

「ですよね~」


 わたしたちを囲んでいる人たちは見逃す気がないようです。

 さしものクラリスも逃がしてもらえるとは考えていなかったようで、ファイティングポーズを取って迎え撃つつもりのようです。

 が、それでは久しぶりに魔術が使えるようになったわたしの出番が無くなってしまいます。


男性器縮小魔術ロスト・オブ・プライド

「あ? ああああぁぁぁぁぁあ!? 小官の息子がぁぁぁああぁぁぁ!」


 だからわたしは、クラリスが踏み込むよりも早く指揮官と思われる人の男性器を小さくしました。

 それを目の当たりにした他の隊員たちは皆一様に恐怖し、示し会わせたように全員、両手で股間を隠して数歩後退しました。

 ちなみに、仲間ができて嬉しくなったのか、全裸の男性は号泣している指揮官の肩をポンポンと叩いて慰めています。


「さて、次はどなたにいたしましょうか」


 この魔術は母の遺産。

 わたしからすれば呆れるほどくだらない効果ですが、直前に見た夢で実験台にされた兵士たちと同じように、目の前の兵士たち身をすくめて恐怖しています。


「ふむふむ。ここまで男性を恐怖させられるなら、この魔術がどうして禁書庫にあったのかはともかく、禁術扱いだったのも頷けますね。見つけた時にくだらないと断じた昔の自分を叱ってやりたい気分です」


 反省しながらも、火が着いてしまった嗜虐心に従って次のターゲットを選び始めました。

 そしてわたしが選んだのは、隊員たちの中では若い方で顔も比較的整っている人です。

 

「あなた。そう、そこのあなたです」

「じ、自分でありますか?」

「ええ、そうです。あなた、恋人か奥さんはいますか?」

「は、はい、自分は明日、結婚式を挙げる予定………」

男性器縮小魔術ロスト・オブ・プライド

「ああああぁぁぁぁぁぁあ! そんなぁぁぁぁぁ!」

「ほうほう。やはり、恋人なりいる人の方が、精神的なダメージは大きいようですね。はい、では次。隣のあなた。あなたに、恋人は?」

「い、いませ……」

男性器縮小魔術ロスト・オブ・プライド

「ああああぁぁぁぁぁぁあ! どうしてぇぇぇぇぇぇ!」

「わたし、嘘は大嫌いですので」


 ふむ、これは愉快ですね。

 怪我をさせたわけでもないのに、男性器を小さくされた人たちは一様にひとしきり叫んだあと、股間を両手で押さえて泣き崩れています。

 ですがまだ、この程度では満足できません。

 それをわたしの表情から察したのか、兵士たちは武器を投げ捨てて命乞いを始めました。


「お、お願いします! 自分には、やっとできた恋人が……!」

男性器縮小魔術ロスト・オブ・プライド

「ああああぁぁぁぁぁぁあ!」

「助けて! 自分のはまだ未使用なんです! 童貞なんです! だから……」

男性器縮小魔術ロスト・オブ・プライド

「ああああぁぁぁぁぁぁあ!」

「妻に、そろそろ子供が欲しいとせがまれて……!」

男性器縮小魔術ロスト・オブ・プライド

「ああああぁぁぁぁぁぁあ!」


 恋人がいようが未使用だろうが、男性器を小さくされた男性がどれほどの精神的ダメージを受けるのかしか興味のないわたしには関係ありません。

 ですがそれが10人を超えた辺りで、呆気にとられていたクラリスが待ったをかけました。


「クラーラ! そのへんでやめたげて! さすがに可哀想だよ!」

「え? どうしてですか? わたくはむしろ、全ての男性器を縮小して平和的に人類を絶滅させるのも有りかな? と、思っているのですが?」

「さらっと何言ってんの!? 人類を絶滅させるとか、どんな大悪党もやったことがない悪行だよ!?」

「問題ありません。人類が絶滅しても、魔族たちが残りますから」

「大有りだよ! お願いだからやめてあげて! これ以上は本当に見てられないよ!」

「嫌です。寝起きに最悪なモノを見せつけられましたし、男性器縮小魔術ロスト・オブ・プライドが男性に与える精神的ダメージについて論文が書けそうなので、サンプルとしてこの辺りの男性を根こそぎ粗チンにします」


 宣言通り、クラリスから兵士たちへ視線を戻すと、兵士たちは武器を投げ捨てて「に、逃げろ! 今すぐ逃げろぉぉぉぉ!」と、誰かの叫びで正気を完全に失い、我先にと逃げ始めました。

 ですが、逃がしません。

 今は効果をしっかりと確かめるために一人につき一回使っていますが、この魔術は効果もさることながら射程も無駄に長く、範囲と対象も広い。

 具体的に言うと、視認できる範囲すべてです。


男性器縮小魔術ロスト・オブ・プライド

「ああああぁぁぁぁぁぁあ!」

男性器縮小魔術ロスト・オブ・プライド

「ああああぁぁぁぁぁぁあ!」

男性器縮小魔術ロスト・オブ・プライド

「ああああぁぁぁぁぁぁあ!」


 わたしは背中向けて逃げ惑う兵士たちの背中に、男性器縮小魔術ロスト・オブ・プライドを放ち続けました。

 それを続けていたら塔の一階まで降りました。

 塔から逃げ出した兵士たちに、塔を包囲していた別の兵士たち (ざっと30人ほどでしょうか)は少し戸惑っていましたが、わたしの姿を認めるなり武器を構えました。

 さすがにこの人数が相手だと恐怖させる前に撃たれてしまいそうなので、わたしは魔術の効果範囲と対象を包囲している兵士たち全員に設定して……。


男性器縮小魔術ロスト・オブ・プライド


 と、悦びを噛みしめながら唱えて、全員を租チンにして差し上げました。。

 

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