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クラリスとクラーラ ~魔王を倒した勇者に導かれて旅をしていたら大魔王になっていました~  作者: 哀飢え男
第九章 あ、やっと治った/これ、どういう状況ですか?
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9-20

「趣味の悪い建物ね。ねえ、ハチロウくん。本当にここで間違いないの?」

「うん、間違いないよ。最上階付近にマタタビちゃんの反応がある」


 ハチロウくんがとっさにマタタビちゃんにかけた居場所特定魔術(トランズミター)を追って辿り着いたのはシンジュク、カブキ町。その中心部にそびえ立って夜の街を照らすのに一役買っていた、ゴテゴテとした装飾を施されたオオヤシマ風の城……見た目は以前見たヒメジ城と似た屋根を持つ塔だけど、城って呼んでいいのよね?

 そんな城とも塔とも呼べない中途半端な建物を、あたしたちは路地から顔だけ出して見上げている。


「で? どうするの? クラリスちゃん。ちょこちょこっと偵察してこようか?」

「居場所はハッキリしてるんだから、正面から一気に突っ込めばいいんじゃない?」

「クラリスちゃんは馬鹿なのかな? マタタビちゃんがどんな状況なのかわかんないのに正面から突っ込むなんて大馬鹿だよ?」

「冗談よ。じゃあお言葉に甘えて、さっそく調べて来てもらおうかしら」

「なんかどうでもよさそうな言い方だけど……かしこまり♪ まっかせといて♪」


 あたしの言い方に不満を漏らしながらも、ヤナギちゃんは幽体化してビルに潜入した。

 この塔の主が件の転生者でヤナギちゃんのお姉さん (仮)を従えてるのなら慎重になるべきだけど、落ち着かない。

 今すぐ殴りこみたい。


「クラリスお姉さま。殺気が駄々洩れです。少し抑えた方がよろしいかと存じます」

「わかってる。でも、ただでさえ人間から酷い目に遭わされてきたあの子がさらに酷い目にあってるんじゃないかと考えただけで、頭の血管がブチ切れそうになるのよ」

「マタタビ殿がどのような目にあって来たかは存じ上げませんが、噂が確かならそれは杞憂かと存じます」

「そうね。この塔の主が噂通りのスケベ野郎なら、少なくとも痛いことはされないと思う。でも……」


 時間が経てば経つほど、マタタビちゃんの貞操が(おびや)かされる。

 マタタビちゃんの初めてがどこの馬の骨とも知れない奴に奪われるくらいならさっさと突撃して、建物ごと拐った奴を粉砕したい。それをグッと我慢して、あたしはヤナギちゃんを待った。

 そして、待つこと30分。

 ヤナギちゃんは何事もなかったように戻って来た。

 

「おっ待たせ~♪ 調べて来たよ♪」

「で、どうだった?」

「マタタビちゃんは最上階。今、裸に剥かれて値踏みされてる」

「敵は?」

「侍らせてる魔族の子たちにナリヒラ様って呼ばれてたから、聞いた通りの転生者で間違いないと思う」

「やっぱりか。能力はわかる?」

「さすがに、そこまではわからなかった。でも、マタタビちゃんが不自然に柔順だったから、予想通りの能力かも」

「なるほどね。じゃあ、アタシが突っ込むから三人はここで待機してて」

「ハチロウくんは大丈夫なんじゃない?」

「どうして?」

「だってハチロウくん、女の子みたいな顔してるけど男の子じゃん。仮にナリヒラの能力が魔族を操る能力だとして、ハチロウくんが操られてもクラリスちゃんの脅威にはならないでしょ? でも、魔族の女の子だけを操る能力だったらハチロウくんはナリヒラに対する戦力になるじゃない」

「なるほど。有りね」


 そこまで話して、あたしとヤナギちゃんはハチロウくんに視線を移した。

 当のハチロウくんはと言うと、ポンコツっぷりがすっかり当たり前になったクラーラの手を握って「ああ、クラーラお姉ちゃん、綺麗だよ」とか「早くオッパイを飲ませてよ。僕、もう限界なんだ」とか言いながら息を荒げて、話をまったく聞いていない。

 あたしはそんなハチロウくんの襟首を掴んで持ち上げた。


「ちょっ、ちょっとクラリスお姉ちゃん! 何するの!?」

「ハチロウくんって、防御魔術は使える?」

「い、一応、|対物理・対魔力防御魔術アンタッチャブルは習ってるけど……」

「そう、なら、大丈夫ね」

「な、何が大丈夫なの? どうして僕を振りかぶるの!?」


 投げるからよ。と、言う代わりにあたしはビルの最上階へ狙いを定めて大きく振りかぶり……。


「ぶっ飛べマセガキ! 救世崩天! 全力投球(フルパワー・ピッチ)!」


 と、叫びながらハチロウくんの体をあたしの魔力でコーティングして通り投げ付けた。

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