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クラリスとクラーラ ~魔王を倒した勇者に導かれて旅をしていたら大魔王になっていました~  作者: 哀飢え男
第九章 あ、やっと治った/これ、どういう状況ですか?
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9-16

 転生者が自覚の有る無しに関わらず、男でも女でもハーレムを形成するのはオオヤシマでは常識らしい。

 しかも転生者は基本的に美男美女ばかりで、ハーレム要員も基本的に美男美女。オマケとばかりに、ハーレム要員には子供と呼べる歳の子から妙齢の未亡人や老紳士まで多種多様。転生者によっては、魔族までハーレムに加えているらしい。

 と、トウキョウへの道中で立ち寄ったサカエマチの女の子たちから聞かされた。


「転生者ってズルいわね。それもチートの一部なのかしら」

「さあ? それはわっちも知らない。でも、昔わっちを買った転生者は、顔はともかく性格は腐ってたよ」

「どんな風に?」

「典型的な成り上がりって感じかな。言うことは安っぽいし、基本的に自慢話ばっかり。口には出さなかったけど、転生前はいじめられっ子だった? って、聞きたかったもん」

「いじめられっ子が転生して、チートを笠に着て調子にのってる感じ?」

「そうなんじゃない? だって頑なにわっちと目を合せようとしなかったし、ふんぞり返ってたけど腰は引けてオドオドしててさ。虚勢を張ってるのが丸わかりだったもん」


 タムマロやヨシツネさんの例があるから転生者すべてがそうだとは限らないけれど、マタタビちゃんとハチロウくん、そしてシノさんも否定はしないから転生者の過半数、もしくは大部分がそうなのかもしれない。

 

「あたしたちが向かってる先にいる転生者も、そっちの部類なんだっけ?」

「サカエマチで仕入れた情報だとそうみたい。え~っと、たしか名前はアリワラ・ナリヒラ。どんなチートを持ってるかはわかんないけど、魔族の女の子を蒐集してるって話は聞いたよ」

「へぇ……。チートで魔族の女の子を催眠にかけるなり洗脳なりして侍らせて、ハーレムを作ってるのかしら」

「もしもそうだとしたら、クラリスちゃん以外は危ないかもね。わっちらはもちろん、シノちゃんも何割かは魔族だし」

「そうだね。仮に魔族を洗脳なりして操る系のチートなら、クラリスちゃん以外はカモだもん。そうだとしたら、姉さん (仮)のタマヅサが従ってるのも納得できるよ」


 タマヅサが転生者と協力関係にあると知ったのは、本当に偶然だった。

 サカエマチを発って次に宿を借りたフナバシの娼館に、アリワラ・ナリヒラに魔族の少女を斡旋してた人がいたのよ。

 その人が言うには、10年くらい前から赤い髪の女性がアリワラ・ナリヒラの館に出入りするようになったらしい。

 ただし、その人はエルフではないと言った。

 顔だけ見れば赤髪赤目のエルフだけど、背中から蜘蛛に似た足が六本生えていたそうよ。

 そしてこの特徴が、シノさんが知るタマヅサの特徴と合致するらしい。


「ちなみにヤナギちゃんは、背中から蜘蛛の足を生やせるの?」

「わっちの体は魔法で作ってるだけだから、生やそうと思えば生やせるよ。実際、羽を生やして飛んだりしてるでしょ?」

「たしかに。じゃあ、お姉さんもできるの?」

「無理。だって、わっちはオサカベヒメ様から習った魔法を応用してて、しかも幽霊で龍脈の魔力を取り込んでも影響を受けないからできてるの」

「お姉さんがヤナギちゃんと同じギフトを持ってて、しかも似た魔法を覚えてたらできるんじゃない?」

「ないない。それは絶対にない」

「どうしてそう言い切れるの?」

「それ、本気で言ってる? 同じ性能のギフトが存在しないのは、常識中の常識だよ?」

「へ? そうなの? 初めて聞いたんだけど!」

「だって、言う必要もないほどの常識だもん。いい? クラリスちゃん。ギフトはその名の通り、天からの贈り物なの。転生者のチートと違って欠陥はあるけれど、チート同様の同じ性能のギフトはないんだよ」

「確認されてないだけじゃなくて?」

「その可能性もなくはないけど、ギフトと呼ばれる特殊な才能が知られるようになってからの数百年で、同性能のギフトが同時期に存在した記録はないの。仮にクラリスちゃんと同じギフトを持った人が複数人いたら、それと同じ数だけ魔王がいることになっちゃうんだよ? そんな話、聞いたことある?」

「ない、けど……」


 納得はしきれない。

 だって、記録が漏れてる可能性が消えたわけじゃないんだから。

 さらにギフトは性能の幅が広くて、強力で特殊になればなるほど欠陥も大きくなる。

 例を挙げるとあたしとクラーラのギフト。

 どちらも強力で高性能ではあるけれど、それを与えられたあたしたちにはそれを十全に扱うための才能がない。

 ヤナギちゃんみたいに、死ぬまで自分がギフトホルダーだったと知らない場合だってあるんだから。


「あの、クラリスお姉さま」

「ん? 何? シノさん」


 お姉さんがヤナギちゃんと同じギフトを持っていないのなら、タマヅサがお姉さんである可能性が薄くなる。

 そんな考えが頭をよぎり始めた頃に、それまでマタタビちゃんと一緒にあたしの膝に頭を預けて昼寝していたシノさんが話しかけて来た。


「もしもタマヅサがフセ姫様のギフトを悪用したなら、それは可能かもしれません」

「へ? そうなの? フセ姫さんって人の背中に蜘蛛の足を生やすギフトホルダーなの?」

「いえ、違います。フセ姫様が代々受け継いでいるギフトの名は『得手勝手』。奪ったギフトを譲渡するギフトです。例えば、他の生き物と同化するギフトなどをフセ姫様のギフトで譲渡されていたら、背中に蜘蛛の足を生やす程度はできると思います」

「なるほど。それなら……ん? 奪ったギフトを譲渡するギフト?」


 どこかで聞いたことがある気がする?

 でも、どこで誰から聞いたのかハッキリと思い出せない。

 だけど、嫌な予感だけはしてる。

 あたしはそれを聞いた時に、嫌な思いをしている。

 だって、何故か怖いんだもの。

 体の芯から凍えているんじゃないかと思えてしまうほど、あたしはその時のことを思い出したくないと思っているんだもの。







 

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