【第二話】アリアネル姫
一週間後、私達は公爵邸に引っ越してきました。明日は母と公爵様の結婚式です。私達はまず着くと応接室に通されました。
そこに座っていたのはアリアネル・オブ・フィッツジェラルド姫。公爵様の唯一の娘でお家の「色」、青みのかかったヘーゼル色の髪の毛に深紫の瞳を継ぎました。この国では身分を問わず家に代々伝わる色を受け継いだ者だけが魔法を使う事ができ、色を受け継ぐ確率は5分です。かく言う私も父の色を受け継ぎ、強力な魔法を使う事ができます。
「アリアネル、新しく妹となったカーシアだ」
公爵様、いえ、お父様に紹介していただくと、私は慣れない淑女礼をしました。
「仲良くしてやれ」
「ええ」
アリアネル様は微笑みました。よかった。良いお方そうです。お父様とお母様は部屋を出て行きました。
「ぷっ。何よそあの淑女礼。本当に貴族の血が流れてるのかしら?それとも父親の血で台無し?」
突然アリアネル様はそのお美しい顔を歪めて私を嘲笑いました。最初の出会いは最悪ですね。こんな性悪な義姉ができるなんて!
「っ、すみません」
「ふん、いいこと?この家の令嬢はわたくしひとりよ。くれぐれも同じ立場にいるとなんか思わないで」
「っ、はい」
彼女は口元を扇子で隠しその二つのダークアメジストで私を強く睨みつけました。
「気に食わないのよ、平民の分際でブロンドなんて……!どうせ魔法も大した事ないんでしょう?あははっ!平民の血を引くのだものねえ」
何かが私の中でプチンと切れました。
「父を侮辱しないでください!」
「何よ、身の程を知りなさい!」
「っ」
「その容姿。さぞかまって欲しそうにしてご令息方の注目を集めるのでしょう!?」
彼女は下手な攻撃魔法を放ってきました。私がそれから自分を防御すると突然彼女は泣き出しました。すぐに使用人や公爵様がやってきます。お父様が何事かと問うと、
「お父様あ!わたくしが仲良くしましょうと言ったら『アンタみたいな醜いのと仲良しちゃんする気はねえ』と言ってきたのです!わたくし本当にショックで!」
と性悪義姉は答えました。
すると一番に目を見開いたのが母でした。
「まあカーシア!貴方なんてことをするの?そんな娘に育てた覚えはありませんわ!アリアネル様に謝りなさい!」
「お母様!私何もしていないわ!アリアネル様が」
私は弁解しようとしました。しかし。
「謝罪は要りませんわ。わたくしが悪いのです!ぐすん」
「カーシア!なんてこと!」
どうしましょう。あああ。録音魔法を作動させておけばよかった。
その時。
お父様が私を手招きしました。
「カーシア。私の部屋に来なさい」
私はおとなしくついて行きました。はあ。せっかく気に入っていただけたのに。
部屋を出て行く時に振り返ると、そこにはニヤニヤしているアリアネル様と真っ青な顔をしている母がいたのでした。