(91)エルフと期待
フィリアが帰るまで、あと3日。
日曜日の夕方。ついに花火大会の日がやってきた。
「夜の八時から花火が始まるわよね?夜の六時には番台代わってあげるから、早く行ってらっしゃい。」
ばあちゃんが背中を押してくれたおかげで、俺は少し早めに仕事を切り上げることができた。
じいちゃんが使っていたという藍色の浴衣を引っ張り出して袖を通す。渋いデザインの生地に手触りの良い布の質感。着るだけでどこか背筋が伸び、じいちゃんの趣味も悪くないな、と思わず小声で「結構似合ってるじゃん」とつぶやいてしまう。
準備を終えると、フィリアが藍色の浴衣姿で現れた。以前も見たことがあるものの、何度見てもその破壊力は絶大だ。銀髪と淡い色合いが絶妙に調和し、彼女の清楚さが引き立つ。思わず言葉を失い、ただその姿を見つめる。
「どう…でしょうか?変ではありませんか…?」
少し不安そうに尋ねるフィリアの声に、俺は慌てて返事をする。
「いや、すごく似合ってるよ。完璧だ。」
予想以上に真剣な声になってしまい、フィリアの頬がうっすら赤く染まったのがわかった。
俺たちは街の西にある市駅を目指して歩き出した。花火大会の会場までは三つ先の駅だが、混雑を考えて徒歩を選んだ。
市駅に着くと、夏菜が元気よく手を振りながら駆け寄ってきた。
「早いじゃん。どうしたんだよ。」
茶化すように言うと、彼女は「夏休みシーズンは特別なの!」と胸を張る。そんな自信満々な態度に、俺は苦笑を漏らす。
そしてふと目に留まる彼女の浴衣。「その浴衣、前と違うよな?」と尋ねると、夏菜は得意げに笑みを浮かべる。
「レンタルよレンタル!これ、今年の最新モデルなんだから!」
赤い地に大胆な花柄が散りばめられた浴衣。そのデザインは古風だけどどこか今っぽくて、夏菜の元気で明るい雰囲気にめちゃくちゃ合ってた。明るい黄色の帯が全体を引き立てて、なんか彼女自身が夏そのものをまとってるみたいに見えた。
ミニスカートっぽく短めの丈からチラッと見える足は、健康的でナチュラル。歩くたびに浴衣の裾がひらひら揺れて、その動きに合わせて生き生きとしたリズムが生まれる感じ。気づいたら目が勝手に追いかけてて、もうどうしようもなかった。夏菜が動くたび、なんか風をまとってるような不思議な雰囲気すら感じた。
それに、短めの髪に付けた赤いリボン付きの髪飾りがまたズルいくらい可愛い。彼女がちょっと動くだけでリボンがふわっと揺れるんだけど、そのたびに目が釘付けになる。リボンの揺れ方がまるで花火が一瞬輝いて消えるみたいで、儚いのにめちゃくちゃ鮮烈な印象を残してくる。視線を外したいのに、どうしても外せない自分がいた。
「…何よ、その顔。似合ってない?」
夏菜が少し照れたように尋ねるその言葉に、ハッとさせられる。どう答えればいいか迷うが、似合っているなんて言葉じゃ到底足りない気がした。
隣のフィリアが柔らかい声で口を開く。「カナさん、とてもお似合いですわ。」
その一言に夏菜は一気に笑顔を取り戻し、「でしょ?でしょ?」と得意げに笑う。その様子に俺も思わず微笑みが浮かんだ。
一方で、フィリアの淡い藤色を基調とした浴衣姿も目を引く。その控えめな花模様が彼女の静かな美しさをさらに際立たせており、長い銀髪との組み合わせがまるで絵画のようだった。
二人の浴衣姿が並ぶと、それぞれの魅力が際立ち、どちらも夏の夜を象徴するような美しさを放っていた。俺はその光景を目に焼き付けるように見つめながら、言葉を失っていた。
駅構内はすでに人で溢れかえり、浴衣姿の人たちが次々と増えていく。
「ほら、早くしないと花火始まっちゃうわよ!」
夏菜が先陣を切って歩き出す。その後ろをフィリアが静かに追いかけていく。二人の浴衣姿が並ぶ様子を見ながら、胸の奥にわずかな緊張と高揚感が混じる不思議な感覚を覚えた。
「よし、切符買って急ごう!」
そう声をかけながら、俺たちは花火大会へ向かう電車に乗り込む。夏の夜風が浴衣を揺らし、これから始まるひとときに胸が高鳴っていた。
この物語の本編は、異世界ファンタジー『愚痴聞きのカーライル 〜女神に捧ぐ誓い〜』です。ぜひご覧いただき、お楽しみいただければ幸いです。
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