(80)エルフと気持ち
「ユウトさん…あの…私のことを、どう思ってくださっていますの?」
フィリアから突然飛び出した質問に、俺は完全に固まった。胸がざわつき、声が上ずりそうになるのをなんとか抑えながら、「ど、どうって…それは…その…」と口ごもる。
「ここまでしてくださるなんて、本当に感謝しておりますの。でも、それ以上に…ユウトさんがどんなお気持ちで私を助けてくださっているのか、気になってしまって…」
フィリアは小さなこぶしをぎゅっと握りしめ、うつむきながら言葉を続けた。その姿は、普段の彼女とはどこか違い、真剣さが伝わってきた。
どう答えればいいのか分からないまま、俺は視線をそらしてしまう。
「いや、その…困ってる人を放っておけないっていうか、俺にできることなら何でもしたいっていうか…」
言葉に詰まりながら何とか返事をすると、フィリアは微かに微笑んだ。
「ユウトさんのお優しさには、本当に感謝しておりますわ。それに、こうして石を集める時間も、とても楽しいですの。」
その言葉を聞いて、ようやく少しだけ落ち着きを取り戻した。
「そ、そうか。それなら良かった。」
俺が答えると、フィリアは再び川辺に目を向けて、丁寧に石を選び始めた。その背中を見つめながら、俺は改めて彼女を無事に送り出す決意を強くした。
拾い集めた石をバッグに詰め込むと、予想以上の重さになっていたが、フィリアに心配をかけたくない俺は平気な顔を装った。
「ヘーキヘーキ!こんくらい余裕だよ!」
そう言いながら、自転車の前かごにバッグを押し込み、フィリアを荷台に乗せて走り出す。風を切る音とともに、どこかほっとした気持ちが少しだけ胸を軽くした。
銭湯に戻り、自転車を倉庫にしまうと、集めた石を倉庫の前に丁寧に置いた。夕焼けが消え、辺りはもう夜の帳が降り始めていた。
「今日はもう暗くなりそうだし、明日から石を並べてみようか?」
俺が提案すると、フィリアは微笑みながら「はい、それが良さそうですわ」と頷いた。その笑顔を見ていると、自然と肩の力が抜けていくようだった。
お風呂に入り、湯船で一日の疲れを癒しながら、今日のフィリアとの出来事を振り返る。彼女の笑顔や楽しそうな声が、何度も頭の中を巡る。
けれど、ふとあの言葉が胸を揺らす。
「私のことを、どう思ってくださっていますの?」
その一言が、湯船の中でも消えることなく、心の奥底で響き続けていた。銀さんと話して自分なりに気持ちを整理したつもりだったのに、今になってまた堂々巡りが始まる。俺にとってフィリアは、いったいどんな存在なんだろう。
お風呂から上がり、布団に横になった時、体中に疲労が広がるのを感じた。石を拾い続けたせいもあるが、それ以上に、フィリアのことを考え続けたせいだろう。隣の布団では、彼女が穏やかな寝息を立てていた。
その寝顔に、どこか安心しながらも、自分の心の揺れを完全には整理できないまま、俺も次第に眠りに落ちていった。
この物語の本編は、異世界ファンタジー『愚痴聞きのカーライル 〜女神に捧ぐ誓い〜』です。ぜひご覧いただき、お楽しみいただければ幸いです。
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