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(61)エルフとラッシー

番台でお客さんの声を聞いていると、実にさまざまな意見が飛び交う。常連のおばあちゃんたちからは、「体にいい青汁とかどう?」「カルシウムたっぷりの特別な牛乳なんていいわよね」「お酢も健康に良いって聞くわ」と、健康志向全開の提案が次々と上がる。


その度に俺は頷きながら話を聞きつつも、心の中で苦笑していた。確かに健康に良いものはありがたいけど、銭湯のイメージとはちょっと違う気がする。それに、俺自身がそれを飲みたくなるかといえば…正直、微妙だ。


一方で、他のお客さんたちからは「銭湯ならではのものが飲みたい」といった意見が多く聞かれる。「銭湯といえば牛乳、コーヒー牛乳、フルーツ牛乳だろ」「レモネードなんか出されても、銭湯らしさがないよ」「それなら、やっぱりラムネがいいね」といった声が次々と届く。


話を聞くうちに、銭湯には「ここだからこそ飲みたくなるもの」が求められていることに気づいた。銭湯の雰囲気に合う飲み物、それが一番大事なんだ。


夕方の忙しい時間を終え、ばあちゃんに番台を代わってもらった俺は、フィリアと集めた情報を共有するために座り込む。


「どうだった?」

俺がフィリアに尋ねると、彼女は少し頬を赤らめながら報告を始めた。


「わ、私が運んで来てくれるものなら、何でも飲むと仰ってくださる方が何名もいらっしゃいましたわ…」

照れたように言う彼女に、思わず笑みがこぼれる。フィリアファンクラブの勢いは相変わらずのようだ。


「それと…お腹に優しいものがいい、と仰る方もいらっしゃいました。それから…」

フィリアは少し言葉を詰まらせた後、続けた。

「見知らぬお客様がいらっしゃって…せっかくこの街に来たのだから、特産品を使った飲み物がいい、と仰っていましたわ」


「ああ、それは観光で来た人だな」

俺は頷きながら、「でも観光客の声だけで動くのはリスクが高いな」と判断する。うちの銭湯のお客様はあくまで地元の常連客だからだ。


こうして、『銭湯らしいもの』、それに『お腹に優しい』というキーワードを並べ、頭をひねり始める。だが、どれももう一歩インパクトが足りない気がする。


「うーん、どうするかな…」

悩んでいると、ばあちゃんがひょっこり顔を出してきた。

「うどん買ってきてるから、お昼に残ったカレーに入れて食べなね」


「カレーか…」

その一言に、ふと頭の中でカレーのイメージが広がる。そういえば、フィリアやカナと一緒にカレーやナンを食べた時のことを思い出した。その時、甘酸っぱく爽やかなドリンクを飲んだ記憶が蘇る。


「あ、あれだ…ラッシー!」

思わず声が大きくなり、フィリアが驚いたように目を丸くしてこちらを見ている。


「ラッシー…ですか?」

「そう、ラッシーだよ。あの、カレー屋で夏菜が頼んだ白くて爽やかな飲み物。牛乳ベースで、お腹にも優しいし、夏の銭湯で飲むには最高じゃないかなって思ってさ。」


自分の中で妙にしっくりきたアイデアだったけど、調べてみるとラッシーにもいろいろな種類があることが分かった。プレーンとかマンゴーとか、どれもおいしそうではあるけど、銭湯らしさを考えると少し引っかかる。マンゴーだと南国っぽすぎるし、プレーンだと牛乳との違いを出すのが難しそうだ。


その時、不意にフィリアが言っていた「特産品」という言葉が頭をよぎった。この地域の特産品といえば…みかんだ。そうだ、みかん畑だらけの風景が思い浮かぶ。子どもの頃、家族でみかん狩りに行った記憶まで蘇る。


「みかんラッシー…これだ!」

自分の中でピタッと何かがはまった感覚があった。みかんの柔らかな酸味と甘みなら、夏の銭湯の雰囲気にも合うし、さっぱりして飲みやすいはずだ。


でも、興奮が収まる間もなく、次の課題が頭をもたげてくる。みかんラッシーをどうやって準備する?試作品を作るには材料や道具もいるし、実際にお客さんに提供するにはコストや手間も考えないといけない。


「次のステップを考えないとな…」

頭を抱えながらも、不思議と悪くない気分だった。アイデアの種が芽を出した感じがして、この先の展開にわくわくしている自分がいるのがわかった。

この物語の本編は、異世界ファンタジー『愚痴聞きのカーライル 〜女神に捧ぐ誓い〜』です。ぜひご覧いただき、お楽しみいただければ幸いです。


https://ncode.syosetu.com/n8980jo/


「続きを読みたい!」と思っていただけた際は、ぜひ【★★★★★】の評価やコメントをいただけると嬉しいです。Twitter(X)でのご感想も励みになります!皆さまからの応援が、「もっと続きを書こう!」という力になりますので、どうぞよろしくお願いいたします!


@chocola_carlyle

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