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(42)エルフと場所選び

フィリアが帰るまで、あと16日。


月曜日の朝、銭湯の静けさの中、昨日の銀さんとの会話を思い出しながら、どこか清々しい気分を感じていた。胸の奥にあったわだかまりが少しだけ溶け、自然と前向きな気持ちになっている自分に気づく。何でもない日常の中に、こうして心が軽くなる瞬間があるのは悪くない。いつものように準備を進めていると、机の上に置いたスマホが光った。


「…誰だ?」軽く画面を確認すると、そこに表示されたのはカナからのメッセージだった。「げっ、カナか…」と思わず小さくつぶやく。盆踊りの一件が頭をよぎり、少しだけ気まずさが胸をよぎる。でも、昨日の銀さんの言葉を思い出し、深く息を吸い込む。「気負わないことが大事だ」そう自分に言い聞かせながら、画面をタップした。


メッセージの内容は、「ビーチ、どこにする?」という簡潔な問い。それに添えられた犬のスタンプが妙に可愛くて、不意に吹き出しそうになる。「カナが犬…?むしろ猫のイメージだよな」と思いつつも、少しだけ口元が緩む。カナの気まぐれさや振り回される感じを思い出すと、苦笑いが漏れる。


「ビーチか…どこがいいんだろう?」俺は頭を巡らせる。真っ先に思い浮かぶのは「三日月ビーチ」。若者に人気のスポットで、電車で簡単に行ける。カナなら楽しめそうだ。でも、フィリアにとってはどうだろう?混雑した場所で迷子になったり、知らない人に話しかけられる可能性を考えると、ちょっと不安になる。フィリアには、もっと静かでゆったりした場所が合うんじゃないかと思えてきた。


「うーん、どこがいいかな」とつぶやきながら、記憶を辿る。そして、不意に「あっ!」と声が漏れた。思い出したのは、子どもの頃に家族で出かけたビーチだった。砂浜がどこまでも真っ直ぐ続く広い場所。あの景色は今でも鮮明に覚えている。けれど、肝心の名前が思い出せない。


「こういう時は…ばあちゃんだな」と直感的に思い立ち、準備を中断して台所へ向かう。ばあちゃんはちょうど朝の支度をしていた。俺の話を聞いて、すぐに「あぁ、あそこだね」と頷いてくれる。


「ばあちゃん、あの砂浜、名前何だっけ?」と尋ねると、ばあちゃんは「えーっと、なんだっけねぇ」と首を傾げる。名前は出てこないみたいだが、「でも、場所なら教えられるよ」と言って、俺のスマホを手に取る。慣れない手つきで地図アプリを操作しながら、老眼鏡越しに画面を覗き込むばあちゃんの姿が、なんだかほほえましい。


数分後、ばあちゃんが「ここだよ」と指差した場所は、俺の記憶とぴったり一致していた。スマホの画面には、懐かしいビーチが映し出されている。ここから自転車で一時間ほどの距離。砂浜がどこまでも真っ直ぐに続くその景色を思い浮かべるだけで、胸が少し高鳴った。


「ありがとう、ばあちゃん!」そう言ってスクリーンショットを撮り、急いでカナにメッセージを送る。


数分後、返信が返ってきた。「既読スルー禁止、返事遅い!」と文句が並んでいるものの、「ストレートビーチね!いいじゃん。朝十時に銭湯前集合で!」と簡潔な内容とOKスタンプが添えられていた。これで水曜日の予定が決まった。気づけば、少し心が弾んでいる自分がいる。


でも、ふと疑問が頭をよぎる。「…あれ?そもそもフィリアって自転車乗れるのか?」その問いが胸に浮かび、思わず苦笑いが漏れた。この夏、まだまだ波乱がありそうな予感だ。

この物語の本編は、異世界ファンタジー『愚痴聞きのカーライル 〜女神に捧ぐ誓い〜』です。ぜひご覧いただき、お楽しみいただければ幸いです。


https://ncode.syosetu.com/n8980jo/


「続きを読みたい!」と思っていただけた際は、ぜひ【★★★★★】の評価やコメントをいただけると嬉しいです。Twitter(X)でのご感想も励みになります!皆さまからの応援が、「もっと続きを書こう!」という力になりますので、どうぞよろしくお願いいたします!


@chocola_carlyle

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