(38)エルフとヒアリング
銀さんは、「ヒアリングのお手本を見せたる」と宣言した勢いそのままに、フィリアに近づき、柔らかな声で話しかけた。
「フィリアちゃん、ここでの暮らしにはもう少し慣れてきたんか?日本の生活はどうや?」
その穏やかな問いかけに、フィリアは一瞬驚いたような表情を見せたものの、すぐに控えめな微笑みを浮かべて答えた。「は、はい…ユウトさんとおばあさまのおかげで、少しずつですが慣れてきました。」
その言葉を聞いて、銀さんはうんうんとうなずきながら、「ちなみに、いつまで日本におる予定なんや?」と続ける。
「次の満月までなので、あと半月ほどかと思います…」
彼女の答えに、銀さんは「そうか…」と少し驚いたように眉を上げた後、再びうなずきながら、「半月か…あっという間やな」としみじみ呟いた。そして続けて、「ここで過ごす間、不安なこととか、頼りたいこととか、何かあるんか?」と真剣に問いかける。
フィリアは少し考え込むように目を伏せ、それから静かに話し始めた。「そうですね…ユウトさんにはいつも助けてもらってばかりで、私が何かお返しできないかと、それが心配なんです…迷惑だけをかけたまま、戻っちゃわないかなって…」
その声は小さいながらも、心の中の不安が滲み出ているのが分かった。俺は彼女の言葉を聞きながら、胸が少しだけ苦しくなるのを感じた。
銀さんは優しい笑みを浮かべ、「どうしてそう思うんや?」と、さらに彼女に問いかける。
フィリアは一瞬戸惑ったように眉を寄せ、それからぽつりと呟いた。「このせか…いえ、日本のことがよく分からなくて、何かとユウトさんに頼ってばかりで…」
その言葉には、異世界から来た彼女の不安や気遣いがありありと表れていた。頼られるのが嫌なわけじゃない。むしろ嬉しいくらいだけど、彼女がそんな風に自分を責めているのだと知ると、胸が少し締め付けられる。
銀さんはそんな彼女の言葉を一つも否定せず、「なるほどな」とうなずき、「フィリアちゃん、心配せんでもええよ。恩返しっちゅうのは、何も大きなことやなくても、気持ちで伝わるもんや。あんたが考える以上に、もう十分みんなに喜ばれとると思うで」と穏やかに話した。
その言葉を聞いて、フィリアの表情が少し緩む。その安心したような笑顔を見た瞬間、俺も心の中でほっと息をついていた。
やっぱり銀さんってすごいな。俺にはこんな風に、誰かの不安をそっと解きほぐすなんて到底できない。
銀さんはそんな俺の気持ちなんてお見通しのように、ふとこちらを向き、「さて、次は男同士の話やな」とニヤリと笑みを浮かべた。
「明日の昼間な、この辺でグルメフェスがあるんや。あんちゃん、腹いっぱい食わせたるから、ついてこい!」
「え、グルメフェス?本当にいいんですか?」と驚きつつ尋ねる俺に、銀さんは豪快に笑いながら、「男同士の真剣な話には、たっぷり食いもんが必要なんや」と断言する。その言葉に押され、俺は苦笑いしながらも「じゃあ…お言葉に甘えます」と答えた。
銀さんはフィリアに向き直り、「明日の昼間、あんちゃん借りるな。昼間の銭湯準備には少し迷惑かけるけど、どうか許してや」と、これまた丁寧に話しかけた。
フィリアは一瞬戸惑ったようだったが、すぐに「ユウトさんのこと、どうぞよろしくお願いします」と深々と頭を下げた。その姿を見ていると、なんだかんだ俺が周りに頼られたり支えられたりしているのだと改めて気付かされる。
いつの間にか予定を銀さんに乗っ取られた形ではあるけど、こうして誰かに引っ張られるのも悪くないかもな…。
「グルメフェス」という響きが頭の中で妙に魅力的に響く自分に苦笑いしながらも、銀さんと過ごす明日に少しだけワクワクしている自分がいた。
この物語の本編は、異世界ファンタジー『愚痴聞きのカーライル 〜女神に捧ぐ誓い〜』です。ぜひご覧いただき、お楽しみいただければ幸いです。
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