(19)エルフと水飛沫
回転寿司で盛り上がった後、テーマパークに戻った俺たちは、夏菜の「写真撮影モード」に再突入。砂浜や波止場、停泊している船をバックに、彼女はテンション高くポーズを決めては「次ここ撮って!」と俺を呼びつけ、フィリアもそれに付き合ってぎこちなくポーズを取る。その二人の姿がなんとも絵になりすぎて、俺は夢中でスマホのシャッターを切っていた。
気がつけば視線が痛い。周りからの注目を集めているのは明らかだ。二人の可愛い少女を連れて撮影を続ける俺が、まるでモデルの専属カメラマンにでも見えるのか、家族連れやカップルがちらちらこちらを見ている。正直、恥ずかしさで顔が熱くなりつつも、「はい、次ね」と指示されるたびに、スマホを構えるしかなかった。
撮影が一段落した頃、視界の先にウォータースライダーの大きな塔が見えた。古城風の装飾が施されたその塔から、水しぶきを上げながら急降下していくライド。思わず「これ、乗りたいな」とつぶやいてしまうと、フィリアが「わ、私も…!」と小さく手を挙げ、その勢いに触発された夏菜も「ならアタシも!」と張り切ってきた。なんでも競ってくる夏菜のその態度に、思わず微笑んでしまう。
列に並ぶと、係員が「濡れるのが苦手な方は最前列を避けてください」と注意していたが、俺たちは顔を見合わせ、同時に笑って「大丈夫です」と答えた。(銭湯で毎日水に触れてる俺たちにとって、濡れるくらいなんてことないだろ)そんな妙な自信があった。
最前列に座り、俺は真ん中、両隣に夏菜とフィリアが座る。ライドがゆっくりと上昇し、風景がどんどん広がる中、古城の壁が間近に見えると、緊張と期待が混じった感覚が胸に押し寄せた。二人とも少し硬い表情をしながら、前方をじっと見つめている。
頂上に達した瞬間、ライドは一気に急降下。冷たい水しぶきが顔にかかり、全身を駆け抜けるスリルに、俺は思わず声を上げた。隣の二人もそれぞれ叫び声を上げながら楽しそうな表情を見せている。その瞬間が、なんとも言えない爽快感で胸を満たしてくれた。
ライドが終わって振り返ると、夏菜の白いワンピースがしっかり濡れて肌に貼りつき、ほんのり透けているのに気づいた。「こっち見んな!バカ!」と怒鳴りながら、夏菜は必死に体を隠していたが、赤く染まった顔がやけに印象的だった。一方、フィリアは麦わら帽子まで濡れていたものの、「すぐ乾きますので…」と無邪気に笑っていて、そんな彼女の姿に少しホッとした。
さすがにこのままではまずいと思い、近くのベンチで休憩を取ることに。陽射しが服を乾かしてくれるのを待ちながら、俺たちは穏やかな時間を過ごした。ふと気づくと空が夕焼け色に染まり、テーマパークの古城や海がオレンジの光に包まれていた。その光景を、フィリアは感動したようにじっと見つめている。彼女の横顔がどこか神秘的で、しばらく言葉を忘れるほど見入ってしまった。
帰りのバスに乗り込む頃、みんな少し疲れていたのか、車内では自然と静かになった。揺れるバスの中で、ふと肩に重みを感じて横を見ると、フィリアが俺の肩にそっと寄りかかって眠っていた。その向こうでは、夏菜も少し体を傾けてうとうとしている。二人の寝顔を見ていると、胸の中に静かで温かい気持ちが広がってきた。
美駅に着き、改札を抜けたところで夏菜が振り返り、「じゃあ、次は水曜ね!フィリアちゃんの服、絶対可愛いの見つけるから!」と笑顔で意気込んでいた。フィリアも「た、楽しみです…」と微笑んで応える。そのやり取りを見て、俺はなんだか満たされた気持ちになった。
帰り道、静かに歩きながら今日の出来事を振り返ると、自然と笑みがこぼれてきた。一緒に過ごした時間が、心の中で特別なものとして輝き始めていた。
この物語の本編は、異世界ファンタジー『愚痴聞きのカーライル 〜女神に捧ぐ誓い〜』です。ぜひご覧いただき、お楽しみいただければ幸いです。
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