(13)エルフと恋敵
脱衣所に入った夏菜は、思わずフィリアの肌に見惚れてしまった。透き通るように白く滑らかなその肌は、まるで高価な陶器のようで、どこか神秘的な輝きを放っている。気が付けば、その美しさに引き込まれるように見つめ続けていたことにハッとし、慌てて目をそらして顔を赤らめた。
(もう、ずっと見てたらダメだってば!)
心の中で自分にツッコミを入れながら、小さく息をついて先に浴室へ向かう。
シャワーの下で体を洗い始めた夏菜。その隣に、フィリアがそっと座り、控えめにシャワーを浴び始める。彼女の濡れた銀髪が肩に張り付き、さらさらと流れるその光景は、夏菜の視線を再び引き寄せる。けれども、目を引いたのは耳を隠すように頭に巻かれたタオルだった。夏菜は軽く首をかしげながら尋ねる。
「ねえ、フィリアちゃん。それって…なんでタオル巻いたままなの?」
一瞬、フィリアはきょとんとした表情を浮かべたが、すぐに頬を赤らめて視線を泳がせながら答えた。
「え、えっと…これは、その…私の国の文化なんです。」
どこかぎこちないその答えに、夏菜は驚きつつも微笑みを浮かべた。
「ふーん、そうなんだ。なんか…いいね、そういうの。」
内心では「なんで?」という疑問が残っていたものの、フィリアの言葉を尊重し、それ以上深くは聞かないことにした。気を取り直した夏菜は明るい声で次の提案をする。
「じゃあさ、フィリアちゃん。肩から下の部分、洗ってあげるね。日本に来たばかりの歓迎サービスってことで!」
フィリアは少し驚いたように目を丸くしたが、すぐに恥ずかしそうに頷き、「あ、ありがとうございます」と控えめに答えた。その素直な反応に、夏菜は優しい気持ちになりながら、彼女の背後に回り込み、長い銀髪にそっと手を触れる。
濡れてもしっとりと柔らかいその髪は、まるで光を含んでいるかのようで、夏菜は思わず小声で呟く。
「わあ…なんだか、もう十分綺麗で、洗うのもったいないくらいだね。」
その言葉に、フィリアは控えめに笑いながら言い返す。
「そ、そんなことないですわ。たぶん、今日はちょっと埃もついていると思いますし…」
夏菜は慎重に髪を洗いながら、肩や背中にも気を配る。けれども、ふと心の中に湧き上がる疑問が口をついて出た。
「ねえ、フィリアちゃんって…悠斗のこと、どう思う?」
唐突な問いに、フィリアは驚いたように振り返る。
「え?ど、どう…?」
夏菜は少し焦りながらも言葉を続けた。
「た、例えばだけどさ…悠斗のこと、カッコイイって思ったりとか…なんか、こう、毎日考えちゃったり…とか」
フィリアは少し考え込むように視線を泳がせた後、控えめな笑みを浮かべながら答えた。
「えっと…ユウトさんはとても優しくて、頼りになる方ですし…そうですね、あ、安心するっていうか、落ち着くっていう感じ…かもしれません。」
その答えに、夏菜は「ふ、ふーん、安心…ね」と小さく頷きながらも、胸の中にモヤモヤとした感情が湧き上がるのを感じた。確かに恋敵というわけではないが、悠斗への信頼と安らぎが感じられるその言葉に、どこかライバル意識が刺激されていた。
「そっか。ま、安心してるなら、いっか。」
努めて明るく振る舞いながら、夏菜は再びフィリアの髪を洗い始める。その髪がさらさらと流れる様子は、まるで銀色の流れ星のようだった。
「でもさ、悠斗って実はちょっと頼りないとこもあるから、あんまり頼りすぎない方がいいよ。ほら、いざってときは、アタシもいるしね!」
さりげなく自分の存在をアピールするように言うと、フィリアは少し困ったように微笑み、「カナさん、本当に頼りになる方なんですね」と答えた。その素直な反応に夏菜は少し肩の力を抜き、浴室に立ち込める湯気の中で二人の距離がほんの少し縮まったように感じながら、互いに笑顔を交わしていった。
この物語の本編は、異世界ファンタジー『愚痴聞きのカーライル 〜女神に捧ぐ誓い〜』です。ぜひご覧いただき、お楽しみいただければ幸いです。
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