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(103)エルフと唇

明日のサプライズお別れ会を成功させるためには、フィリアが銭湯に近づくことを避ける必要がある。台風による臨時休業を理由に、銭湯には行かなくていいと伝えにリビングへ向かった。


「フィリア―」と声をかけようと足を踏み入れると、ばあちゃんがつけっぱなしにしていたテレビに目を向けるフィリアの姿が目に入った。普段はあまり気にしないテレビに、今日は彼女の注意が向いているようだ。画面には、ドラマのワンシーンが映し出されていた。そして次の瞬間――俺の心臓が跳ね上がる。


ちょうど俳優が女優にキスをするシーンだったのだ。


フィリアは目を丸くしながら、テレビと俺を交互に見て、首を傾げた。

「あ、あれ…なんでしょうか…?」


俺の頭は一気に警戒モードに突入する。まさか、これを聞かれるなんて。どう説明すればいいんだ?冷静になれ、俺!


「え、えっと、あれはだな…その、大切な人に…その気持ちを伝えるために、こう…唇を当てる…行為というか、まぁ、そういう…この世界の、えーと、伝統みたいなもんだ。」


伝統――フィリアに何かを説明するときに、なんと便利な言葉だろう。ただ、自分でも何を言っているのかわからないくらい動揺していた。フィリアはさらに首を傾げ、不思議そうな顔をしている。


「気持ちを伝えるために…唇を?」


「そ、そう!ほら、言葉だけじゃ伝わらないことって、あるだろ?」

何とか話を続けるものの、内心では(俺、何を説明してるんだ…!?)と自分にツッコミを入れずにはいられなかった。


「言葉だけじゃ…伝わらないこと…ですの?」

フィリアは再びテレビ画面に目を戻し、真剣な顔でキスシーンを見つめている。その様子に耐えきれなくなり、俺は慌てて話題を変えようとする。


「あ、あの、でもさ!それって別に普段の挨拶とかじゃなくて、本当に特別な相手だけにやるやつだからな!普通の人同士じゃやらないし、だから、その…!」


「そうですの…」

フィリアは画面から視線を外し、じっと俺を見つめてきた。その目には、好奇心と何かを確かめるような光が宿っている。


「…悠斗さんは、誰かにしたことがありますの?」


「ぶふっ!?」

思わず声にならない音が出る。フィリアの純粋すぎる問いかけに、俺の動揺はピークに達した。


「いや、それは…その、別に、俺には関係ないっていうか!ほら、もうテレビ消そうぜ!」

慌ててリモコンを手に取り、画面を消す。


フィリアは少し不満そうに唇を尖らせた。「気になったので、もう少し見たかったのですけれど…」


ぐったりと椅子に座り込む俺。これ以上この話題が続けば、俺の心臓が持たない。気を取り直し、本題を伝えることにする。


「台風でお客さんも来ないだろうから、銭湯はお休みになったんだ。だから今日は、銭湯側に行かなくて大丈夫だよ。」


「わ、分かりましたわ。何かあれば、いつでもお伝えくださいね。」

フィリアは素直に頷く。その返事に安心し、俺は胸をなでおろす。これでひとまず、フィリアにサプライズ計画がバレる心配はなくなったはずだ。


気を取り直し、明日のための準備に集中することにした。

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@chocola_carlyle

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