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第91話 バニーガールさん

 無事におれも中に入れたので店内を確認する。……なんか内装を見た感じではキャバクラっぽいな。だが、今は営業時間外みたいで客がいないからよく分からないが。


「じゃあ、二人ともここに座って。あ、それと挨拶が遅れちゃったけど私がこの店の店長よ。よろしく」


「リミア・アトレーヌです。よろしくお願いします」


「えーっと、……レイでーす。よろしくお願いしますー」


 互いに挨拶を交わしながらおれ達は席に着く。そして、店長さんは少しの間リミアを品定めでもするかのように見つめた後で口を開いた。


「うん、合格」


「……え? どういうことですか?」


「つまり、採用ってことよ」


「で、でも、まだなにも話してないですよ。これって面接なんですよね?」


「形式上はそうだけど、ぶっちゃけるとカワイイ子やキレイな子は基本的に採用よ」


 店長さんはあけすけにそう言い放った。正直なのは良いことだが、その採用条件はかなり怪しいな。やはり、おれがきちんと確認しないといけない。


「あのー、ここってどういうお店なんですかー? リミアが働く前に仕事内容について確認したいんですがー」


「そうねえ……。せっかくだから一度体験してもらおうかな。それで、もし自分に合わないと思ったら正直に言ってちょうだい。合わない仕事をしてもらっても互いにとって良いことはないし」


 つまり、ここで働くかどうかをこちらの意思で決定していいということか。なにやら良心的な条件なので、実は良いお店なのかもしれない。そう考えていると、店長さんがおれを見て条件を加えてきた。


「あ、でも、今はお客さんがいない時間だからキミがお客さん役ね。お友達が心配で来たんなら、キミにとってもそのほうがいいでしょ」


「確かにそうですねー。リミアもそれでいいー?」


「はい、レイ……さんがいいなら」


「決まりね。じゃあ、制服に着替えてもらうからこっちに来てちょうだい」


 おれ達は店長さんに連れられて更衣室へと歩いていった。


「それで、レイちゃんはどうする? お客さん役であるキミは着替えなくてもいいんだけど、私としては着替えてくれてもいいわよ。キミもかなりカワイイし」


「……あー、そうですねー。遠慮しておきますー」


「あら、残念。じゃあ、リミアちゃんだけ入ってちょうだい」


 おれを残し、リミアと店長さんは更衣室へと入っていった。まあ、おれも店長さんを見習ってぶっちゃければ着替えたい、というかリミアの着替えを見たいのだがそういうわけにはいかないからな。ここはおとなしく、部屋の外で待つとしよう。


 そして、待つこと十分弱、先に店長さんがドアから出てきた。


「お待たせ。仕事について教えていた上にリミアちゃんが恥ずかしがってたからけっこう時間がかかっちゃったわ」


「そうなんですねー。それで、リミアはー?」


「あら、まだ恥ずかしがってるの? ここには女しかいないんだしいいでしょ。ほら」


「きゃ!」


 ドアの後ろに隠れていたリミアの腕を店長さんが引っ張ったことで、その恥ずかしがっていた姿が露わになる。その姿とは、バニーガールと化したリミアだった。


 頭にはバニーガールの象徴とも言えるウサミミ。身体のほうはバニースーツだけあって胸元は大胆に露出し谷間もはっきりと見えている。脚のほうに目を向ければ網タイツを履いており、こちらも非常に扇情的だった。


「……あ、あの、どうですか?」


「……え? あ、ああ、良く似合っててとても可愛いよー」


「……あ、ありがとうございます……」


 恥ずかしさからか赤くなっていた顔をさらに赤くしてリミアがそう答えた。うん、本当に可愛いんだがこれは駄目だな。こんな姿のリミアを他の男に見せるわけにはいかない。やはり、このお店はこういうタイプだったようだ。


 ……だが、待て。そうは言っても今は他に客はおらず男はおれだけだ。であるならば、ここはまだ様子見だな。べ、別に、リミアのバニーガール姿をもっと堪能していたいというわけではないよ、ホントだよ。


「じゃ、リミアちゃんはさっき教えた通りにやってみてちょうだい」


「は、はい。で、では、こちらへどうぞ、お客様」


 そう言ってリミアが歩き出したことで、バニーガールの後ろ姿も露わになる。


 バニーガールらしいウサ尻尾が歩く度に揺れていて可愛らしい上に、バニースーツが身体に密着しているせいで、スカート姿のときは見ることができないお尻のラインがはっきりと見えている。本来は目を逸らすべきなのかもしれないが、歩いている最中はつい目を向けてしまった。


「では、こちらにお座りください」


 リミアの案内に従っておれが席に座ると、リミアもおれのすぐ近くに腰を下ろす。その後、リミアが「お飲み物はどうしますか?」と言いながらメニュー表を差し出してきた。見た感じお酒が多いようだが、ガチゼロはないな。いや、あったとしてもこの世界の法律的にも、まだお酒は駄目な年齢だけどね。


「酒はダメなんでオレンジジュースください」


「かしこまりました」


 おれの注文をリミアが店長さんに伝えると、すぐにオレンジジュースが運ばれてきた。


「それで、このお店ってこうやって飲み物を飲みながら店員さんとお喋りする感じなのか?」


「はい、そう聞きました」


 やはりそうか。どうやら、当初の予想通りここはキャバクラ的なお店で合っているようだな。ならば、もうしばらくバニーガールさんになったリミアを堪能、……ではなく様子見をした上で、最終的にここでのバイトに反対する方向でいくとしよう。


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