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第79話 赤い繋がり

 サフィアがおれの純粋な気持ちをもてあそんで帰っていった後。


「あ、いけね、サフィアに渡したい物があるのを忘れてた」


 さて、どうしようか。別に、渡すのは明日でもいい気がするが、なるべく早めに渡すに越したことはない。とりあえず、サフィアを追いかけてみて、もう女子寮に帰ってしまっていたら明日に回せばいいか。


 そう思い、おれは外に出ながら魔力感知を発動してサフィアを探す。……この位置だと、サフィアは女子寮にはまだ帰ってないな。というか、動いてないみたいだけど、なにをやっているんだろう?


 まあ、それは行けば分かることなので、おれは足早にサフィアの元へと向かう。そうして、おれが到着したのは女子寮の近くにある公園だ。そして、サフィアはその中にあるベンチに一人で座っていた。


 そんなサフィアにおれが歩いて近づいていくと、彼女のほうもおれに気付いた。


「……え? なんであなたがここにいるのよ? ……まさか、あたしのことを襲いたくて追いかけてきたんじゃないでしょうね?」


「おい、待て、誤解だ! そんなつもりはない!」


 襲われることを警戒するように、身体を両腕で隠すサフィアにおれは慌ててそう叫んだ。すると、サフィアはくすくすと楽しそうに笑っている。


「ふふっ、さすがに冗談よ」


「まったく、驚かせやがって……」


「……あ、そうだ。そういえば、助けてもらったお礼をまだ言ってなかったわね。ごめんなさい。それと、今回は本当にありがと」


「いや、別にそれはいいよ。それより、女子寮はすぐそこなのに、こんなところでなにをやってるんだ?」


「…………それは、熱いから少し涼んだ後で帰ろうと思って……」


「暑い? もう夜だしそんなに気温も高くないと思うけどな」


 だが、確かにサフィアの頬はやや赤く染まっている。おれとサフィアでは性別が違うので、体感温度もけっこう違うのかもしれないな。


「それより、あなたこそどうしたのよ? わざわざ追いかけて来てなんの用?」


「ああ、そうだ。お前に渡したい物があったんだよ」


「……えっ!? これって、もしかしてミアの?」


「そう、リミアが付けているのと同じ盟約の指輪だよ。夕飯を買うときに、これも買って来ておいたんだ。今回の事件があった以上、サフィアにもこれを渡しておきたくてさ」


 おれが盟約の指輪を見せると、サフィアの頬が先ほどよりも赤みを増していた。やはり、本人の言う通り暑いようなので、話は早めに終わらせてあげたほうが良いか。まあ、たぶん説明は少なくて済むから大丈夫だろう。


「この指輪の性能はリミアから聞いてるか?」


「ええ、一通り聞いてるわ」


 やはり、大丈夫みたいだ。それなら、後はこれを渡すだけで済むな。と、思ったのだが、そうする前にサフィアのほうが口を開いた。


「……じゃあ、せっかくだし、……付けてもらってもいい?」


「それはいいけど。どの指がいいんだ?」


「…………ミアと、同じ指で……」


 つまり、左手の薬指か。結局、その指に付ける意味をおれは分かっていないが、女の子的にはそこに指輪を付けたいみたいだ。まあ、本人の希望なので、それは叶えてあげよう。


 おれはサフィアの左手を取り、その細くてきれいな薬指に盟約の指輪を付けた。その後、サフィアはおれの分の盟約の指輪を手に取り、不満げに声を発する。


「でも、あなたの薬指にはもう指輪が付いているのよね……」


 どうやら、サフィアも同じところに指輪を付けたいようだ。まあ、おれが付けるのは受魔の指輪のほうだから、性能的に同じ場所でも問題ないんだがな。なんなら、二つどころか三つの指輪を重ねたとしても大丈夫だ。


 だから、そのことをサフィアに伝えようと思ったのだが、その前に彼女はなにかを閃いたようだ。


「そういえば、この指輪って色が変わるのよね? あたしの場合は何色になるの?」


「そうだな……。入学試験のときとかに見たサフィアの魔力は赤だったから、指輪も赤くなるだろうな」


「やっぱり赤なのね。……それなら、あなたのほうは、……小指でもいい?」


「……まあ、おれはどこでもいいけど。じゃあ、小指でいいんだな?」


「ええ、いいわ。……今は」


「今は」ってことは後で別の指にでもするんだろうか? そう思いサフィアを見ると、顔が先ほど以上に赤くなっていた。


 しかし、赤で小指か。そう聞くと、ふと運命の赤い糸という言葉を思い出した。まあ、これは指輪であって糸じゃないし、そういう意図でサフィアも言ってないだろうけど。


 その後、サフィアはおれの左手を取り、小指に盟約の指輪を付ける。そして、おれとサフィアの盟約の指輪は、サフィアの髪のようにきれいな赤色の指輪へと変化した。


 おれは盟約の指輪をサフィアに見せながら、彼女に誓うように語りかける。


「これからは、なにがあってもおれがサフィアを守るよ」


「……ええ、あたしのことをよろしくね。レイン」


 そう言って、サフィアは左手の小指を立ててきた。そういえば、前世でもそういう約束の方法があったが、それはこの世界でも同様らしい。


 おれはその意図を汲んでサフィアの小指に、赤く輝く指輪を付けた自分の小指を結んだ。


この話で、第2章は完結になります。ここまで読んでくれた方、評価やブックマークなどをしてくれた方、ありがとうございました。

なお、話のストックがもうないため、すいませんが明日からしばらくは不定期更新になります。


それと、ここまで読んで本作を気に入ったり面白いと思ってくれた場合は、評価・ブックマークなどで応援して頂けると凄く嬉しいです。第3章を書くための励みになるので、何卒よろしくお願い致します。


では改めて、ここまで読んで頂きありがとうございました。これからも、本作をよろしくお願い致します。


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