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第78話 証明

 時間としては夜ということもあり、おれは夕飯などを買うために一度外出して部屋へと戻った。


 そして、サフィアと一緒に夕飯を食べ終え、現在も二人きりでおれの部屋のベッドに座っている。そのサフィアはと言うと一応は落ち着いたのか今はおれの顔を見れるようになっていた。ただ、頬はやや赤いし、いつもと比べておとなしい様子だ。


 まあ、それは精神的な物が原因だと思うし、もう危険がなくなった以上そのうち回復するから大した問題ではないだろう。そう、今はそれよりも大きな問題がある。それがなにかというと、もちろんおれの部屋で夜にサフィアと二人きりということである。


 最初は、しばらくしたらサフィアは自分の部屋に帰るのだろうと思い、あまり深くは考えていなかった。だが、数時間ほど経過した今でも、サフィアには帰る素振りが見えない。


 リミアの場合は彼女が田舎育ちの影響か、男子であるおれへの警戒心が薄く一晩をともにする結果となった。だが、都会育ちでモテているサフィアなら、ちゃんと男子への警戒心はあるはずだ。にもかかわらず、サフィアはその手のことを考えているようには思えない。


 この状況は本当に大丈夫か? だって、まずおれは異世界からの転生者だろ。次にサフィアの髪の色は赤、つまりレッドだ。ということは、おれ達二人を合わせると異世界レッドと言えるだろう。そうなると、おれ達は今夜うっかり成り行きで絆創合体しちゃったりしない、これ?


 まあ、紳士であるこのおれがそんなことをするわけがない。それに、いざとなったらルミル神からの天啓で得た対策もあるんだが、そういう状況になったら後で気まずいしな。それを踏まえると、やはりサフィアには自分の部屋に帰ってもらったほうがいいだろう。


「なあ、サフィア。そろそろ帰ったほうがいいんじゃないか?」


「……なによ。あたしと一緒にいるのが嫌なの……?」


 サフィアはやや不満げにそう返してきた。どうやら、本人的にはまだ帰るつもりはないようだ。仕方ない、ここは忠告の意味も込めて少し強引な手を使うか。まあ、サフィアのことだから、ちょっと怒らせれば帰るだろう。


「いや、別にいてもいいんだけどな。でも、おれも一応男子だから、もしかするとお前のことを襲っちゃうかもしれないぞ」


「………………襲いたいの?」


 ……えっ!? なにこの反応!? こんなことを言えば、てっきり怒って帰るかと思ったんだけど!? なんか、サフィアの目が潤んでるけど、特に嫌悪感を抱いているようには見えないし、どういうことなの?


「いやいや、さっきも言ったけどおれは男子だし、サフィアは女の子だからな!」


「……でも、あたしはミアやアイ先輩と違ってスタイルが良くないじゃない」


 そう言って、サフィアは自分の胸に手を当てた。なるほど。つまり、その胸の小ささゆえ、そういう方向への魅力は薄いと感じてしまっているということか。だが、それは大きな誤解と言える。これは、美少女をこよなく愛する男として訂正が必要だな。


「いいか、サフィア、よく聞け。別に胸が大きい=スタイルが良いというわけではないし、女の子の価値はそこでは決まらない。そこが大きかろうが小さかろうが、そんなことは関係なく、サフィアはとても魅力的な女の子だぞ」


「…………ふーん、そう。そうなのね……」


 つい、恥ずかしいことを口走ってしまったので、下手をするとキモイと言われると思ったが、そんなことはないようだ。その後、しばしの間黙っていたサフィアが頬を赤く染めながら話し始めた。


「でも、口ではなんとでも言えるわよね……」


「まあ、それはそうだが今のは本心だぞ」


「……じゃあ、証明してみせて」


 そう言って、サフィアはベッドに倒れこんだ。そして、その言葉と動きのせいで、おれは当然サフィアのほうに目を向けてしまう。


 なにかを期待するように潤んだ目、抵抗の意思がないかのように無防備に投げ出された細い両腕、小さいが確実に存在はする女の子特有の胸の膨らみ、服を着ていてもはっきり分かる腰のくびれ、倒れたせいで下着が見えそうになっている乱れたスカート、そしてそこから伸びる白くてすらっとしたきれいな脚。


 その全てが魅力的であり、おれはサフィアから視線を外すことが出来ない。え、マジでこの状況はどういうこと!? サフィアのこの姿と、さっきの「証明してみせて」って台詞を合わせると、マジでそういうことをしていいってことなの!?


 いやでも、このシチュエーションでそれ以外の意味は考えられないよな? そうなると、おれの視線は自然とサフィアの身体のほうへと向いてしまう。そして、視線だけでなくおれの身体もサフィアへと近づいていく。


「あの、サフィア――」


「なーんてね」


「…………え?」


 おれがサフィアの顔を見る前に、彼女は素早くベッドから立ち上がった。そして、おれに背を向けたまま声を発する。


「まったく、ちょっとからかっただけなのに、レインったら本気にしちゃったの? さっきのあなた、すごくだらしない顔をしてたわよ」


「なっ!」


 さっきの行動はそういうことだったのかよ! 後ろを向いてるせいでサフィアの顔は見えないが、明らかに声は弾んでいる。加えて、嬉しそうに身体が揺れているから、おれをからかうのに成功したのがそんなに楽しかったということか。


 くそっ、おれの純粋な気持ちをもてあそぶとか絶対に許さねえ。と、言いたいところだが、そんな姿も可愛いから許そう。そもそも、おれは美少女には優しいからな。そして、そんな美少女サフィアが再び口を開いた。


「さーて、このままここにいたらホントに襲われちゃいそうだし、あたしは帰るわね。バイバイ」


 サフィアはその言葉の通り、素早く窓から出ていってしまった。


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