第77話 同じような流れ
長髪女が倒れて気絶したことを確認後、おれは魔力感知で建物内を観察する。
……よし、この建物内には他に敵はいないし、リミアも無事だ。ただ、リミアと一緒にいた短髪女の魔力の感じから察するに、やはり上でも戦いがあったみたいだな。まあ、リミアが勝ったみたいだから特に問題はないな。
さて、状況と安全の確認は出来たから後はサフィアだな。少しくらいは落ち着けてるといいんだが。
「サフィア。もう大丈夫だぞ」
「…………………………」
「サフィア。聞こえてるか?」
「……えっ、あ、うん、大丈夫よ」
サフィアはそう言うが、なぜかおれと目を合わせようとしない。頬も未だに赤いままだし、なにかあったのだろうか?
「どうかしたのか? どこか、怪我してるとか?」
「べ、別に平気よ! ホントになんでもないから!」
おれが近づいて確認しようとすると、サフィアは後ろを向いておれから距離を取った。うーむ、よく分からないが怪我とかはないみたいだし、とりあえずはいいか。大変な目にあった後で混乱しているのかもしれないし、今はそっとしておこう。
さて、前回と同様に脅迫犯達を騎士団のところまで運ばないといけないな。ただ、今回は二人とも女性か。そうなると、たとえ悪人だとしても地面を引きずって歩くのは気が引けるな。かといって、おんぶやお姫様だっこをするのも違う気がする。……よし、お米様だっこにしよう。
その後、おれとサフィアは階段を上り、まずはリミアのところへと戻った。リミアは地面に座って休んでいたようだが、おれ達の姿を確認すると立ち上がり、こちらへと歩いて来る。
「サフィアさん、無事で良かったです……」
「ミアこそ無事で良かったわ……。それと、助けに来てくれてありがと……」
「いえ、前回はわたしが助けてもらいましたし。それに、あのときサフィアさんが言ってくれたじゃないですか。わたし達は友達なんですから、これくらいは当然ですよ」
「っ! そうね……、うん、ありがと……」
そうして、リミアとサフィアはしばらくの間、抱擁を続けていた。
*****
前回の誘拐事件と同様に、脅迫犯の二人を騎士団の詰め所へと連れて行き、軽く事情聴取を受けた後でおれ達は解放される。今回の件で、あいつらの仲間が他にもいないか徹底的に調査してくれるとのことなので、これで一安心だろう。
そして、今のおれ達がいるのは学生寮の近くにある大通り。つまり、女子寮と男子寮の分かれ道だ。
「じゃあ、帰りましょうか。サフィアさん」
「ごめん。あたしは少しレインと、……その、話したいことがあって……」
「あ、そうなんですか。それなら、わたしは先に帰りますね。おやすみなさい」
「ええ、おやすみ」
おれもサフィアに続き、リミアに「おやすみ」と言って彼女を見送った。さて、サフィアはおれに話があるとのことだがいったいなんだろう?
「それで、話って?」
「……えっと、そのね……。なんていうか……」
だが、サフィアはそこから言葉を続けようとしない。よくは分からないが、そういえばリミアは誘拐された日の夜に怖くて不安みたいなことを言っていたな。もしかすると、サフィアも似たようなことを思っているのかもしれない。
「もしかして、あんなことがあった後だから、一人になるのが不安なのか?」
「えっ? あ、うん、そうね。そんな気がするわ。だから、その、あなたの部屋に行ってもいいかしら……?」
「……ああ、別にいいけど」
ふむ、なんかリミアのときと同じような流れになってしまったな。まあ、今回はあのときとは違い一晩とは言ってないし大丈夫だろう。
そう思い、おれはサフィアと一緒に自室へと帰った。