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第75話 救出

「いやあああああ!!」


 レインが地面に倒れた姿を見たサフィアの悲痛な叫びが部屋に響き渡った。そのレインはというと、貫かれた心臓から血が流れ続けている。そして、その様子を魔眼で観察しながら、長髪女が口を開いた。


「<氷柱槍(リオト)>が命中する直前になにか魔法を発動したように見えましたがなにも起きませんわね。身体にも不審な点はありませんし、なにか策を考えたが失敗したといったところでしょうか」


 長髪女は落ち着き払った様子でレインの状態に結論を出した。だが、そんな長髪女とは対照的にサフィアは狼狽したままだ。


「ねえ、噓でしょ、レイン……。あなたがこんな簡単に死ぬなんてなにかの間違いよね……」


 しかし、レインの身体はピクリとも動かず、それを見たサフィアの目からは涙が流れ始める。そして、そのサフィアの姿を見た長髪女はため息をついた。


「まったく、見ていられませんわね。せめて、はやめに楽にしてあげましょうか」


「…………え?」


 長髪女はサフィアに右手を向けて、魔法を発動する態勢に入った。それを信じられないという目で見つめるサフィアに対し、長髪女は言葉を続ける。


「なんですか、その呆けた顔は? まさか、貴方を解放するという言葉を信じたわけではないでしょう? 私の顔やアジトの場所を知った人間を生かして帰すなんて馬鹿な真似はしませんわ」


 その発言に対しサフィアは言葉を失う。今のサフィアに、相手に言い返すほどの気力は残されていなかった。


「私の復讐の役に立ってくださり、誠にありがとうございました。それでは、ごきげんよう」


 長髪女はサフィアの頭に向けて<氷柱槍(リオト)>を放つ。だが、長髪女とサフィアの間に魔力障壁が展開され、それにぶつかった氷の槍は砕け散って消滅した。


「馬鹿なっ!? この魔力障壁を誰の物ですの!?」


 予想外の出来事に長髪女は冷静さを失い驚きの声を上げる。そして、その隙にサフィアを抱きかかえ、長髪女から引き離した男がいた。


 サフィアを救出したその男とは、心臓を貫かれ死んだはずのレインだった。


 *****


「…………え、レインなの?」


「ああ、おれだよ。怖い目に合わせて悪かったな、サフィア」


「ホントに? ホントに生きてるの?」


「ああ、生きてるよ。ほら、生きてるどころか、傷一つないだろ?」


 サフィアを地面に立たせて、おれの胸を見るように右手で指し示した。先ほどの言葉の通りに傷はないし、もちろん穴なんて開いていない。その姿を見てサフィアはおれが生きていることを信じられたようだが、再び涙を流しながら声を上げた。


「バカっ! 生きてるならすぐにそう言いなさいよ!」


「ごめんな。完全に死んだふりをしないと、あいつが油断してくれそうになかったからさ」


「バカっ! この大バカっ!」


 ……駄目だ、おれの話を聞いていない。まあ、あんな目にあった後じゃ仕方ないか。……よし、ここは強引にでも話題を逸らして矛先を変えよう。そうなると、なにがいいか? ……そうだ、あの話がちょうどいいかな。


「なあ、サフィア。思ったんだけど、今のおれ達の状況ってこの前見た演劇の内容に似てるよな?」


「っ!!」


 サフィアはおれの言葉に驚き、その顔は次第に真っ赤に染まっていく。その後、耳まで赤くなったサフィアは一言も発さず、顔を俯かせてしまった。


 うーむ、さすがにこの状況ではサフィアの好きな演劇の話をする気も起きないか。あの演劇みたいにおれがサフィアを命がけで助けたから、シチュエーションは似てると思うんだけどなあ。


 やはり、サフィアには落ち着くための時間が必要だな。そのためには、さっさとこんなところから帰らないといけないが、こうしてサフィアを無事に助けられたから、もはやなんの問題もない。


 では、サフィアのために手早く終わらせるか、この戦いを。


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