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第71話 脅迫状

 とある日の夕方、男性寮に帰宅するとおれ宛の手紙が届いていた。


「手紙なんて珍しいな。差出人は……、サフィアだと!?」


 え、なにこれ、もしかしてラブレターだったりするの!? なんか、こないだのデートでも良い感じだった気がするし、そういうことなの!?


 そんな期待に胸を膨らませながら手紙を開けると、そこには予想外の内容が書かれていた。


『サフィア・ラステリースの身柄は預かった。無事に返して欲しければ、この手紙に書いてある指示に従え』


 *****


 サフィアからのラブレターではなく、彼女の命を盾にした脅迫状の内容の要点は二つ。一つ目は『光魔法の使い手であるリミアとおれの二人だけで指定の場所に来ること』、二つ目は『この手紙の内容は一切口外しないこと』だった。


 そのため、おれはまずリミアを自分の部屋に呼んで脅迫状の話をした。当然、リミアはその内容に大きな動揺を見せたが、以前リミアが誘拐されたときのサフィアと同様に落ち着かせた後、今後の話し合いをしていた。


「……それで、どうしたらいいんですか?」


「……とりあえず、書いてある内容に従うしかないだろうな」


 以前、アイシス先輩やルミル先生になにか問題が起これば自分たちを頼るように言われたが、今回は口外しないようにという条件が付けられているのでそうはいかない。


 魔法なのか、それともなにかの魔道具でおれ達を監視しているのか、それは分からない。だが、だからといって、監視方法を探るのもよしたほうがいいだろう。下手に犯人を刺激したら、サフィアの身になにが起きるかも分からないしな。


「……でも、これってわたしのせいですよね?」


「……え?」


 思わぬ言葉を言ったリミアの顔を見ると、申し訳なさそうな顔をしながら言葉を続けた。


「だって、光魔法の使い手であるわたしを呼び出すってことは、本来の狙いはわたしってことですよね? わたしのせいで、サフィアさんが……」


「いや、待て。それだとおれまで呼び出されてるのはおかしい。というか、なんにせよ悪いのは犯人のほうだ。リミアはなにも悪くない」


「でも……」


「いいから。リミアは本当に悪くない」


「……分かりました。ありがとうございます」


 一応、納得はしてくれたようで、リミアの表情は先ほどよりは良くなっている。しかし、リミアは相変わらず真面目な子だな。こういうのは、全て犯人が悪いでいいと思うんだけどなあ。


 それと、さっきの会話で気付いたが、犯人の狙いがよく分からないな。なぜ、おれとリミアの二人をまとめて呼び出す必要があるんだ? ………………駄目だ。考えても分からないし、考えている時間もあまりない。


「脅迫状には時間の指定もされていたし、そろそろ向かったほうがいいだろうな」


「そうですね……」


 会話を終え、おれ達は脅迫状に書かれていた場所へと向かう。そうして、たどり着いたのは王都のとある建物の前。一見したところ普通の建物だが、どこか見覚えがある気がする。


「この建物で合ってますよね?」


「ああ、そのはずだ。で、脅迫状には『着いたら指定した回数でドアをノックしろ』って書いてあったな」


 脅迫状の内容に従い、おれは建物のドアをノックした。すると、中から鍵を開く音がし、それに続いてドアもわずかに開かれる。そして、そこから強面で短髪の女が顔を覗かせておれとリミアの姿を確認し、声を発した。


「入んな。ただし、妙な真似をしたら分かってるね?」


「ああ、もちろん分かってる」


 短髪女に促されるがままにおれとリミアは建物の中に入った。そして、短髪女がドアと鍵を閉めた後、部屋の隅に移動して床にあったなにかを引っ張り上げると、その床の下から隠し階段が出てきた。


 その光景はまたしても見覚えがある物であり、そのおかげでおれはこの脅迫犯の正体に察しがついた気がする。だが、だからといってこの状況を今すぐどうにか出来るわけではないので、今は相手の言うことを聞くしかない。


「付いてきな」


「分かった。行くぞ、リミア」


「……はい」


 おれ達は短髪女の後に続いて階段を下りていき、その先には小さな部屋があった。そして、部屋の奥にはドアがあり、そのドアの先にあったのは特に物がない殺風景な広めの部屋だ。


 ……この光景、やはりこいつらは以前リミアを誘拐した連中の仲間で間違いないようだ。こいつらのアジトは一か所ではなく複数あり、ここもその一つということだろう。


「光魔法の女はここに残りな。で、男のほうはあの奥にあるドアから先に進め。もちろん……」


「言われなくても分かってる。変な真似はしない」


 本来なら<分身(アヴァタル)>を発動して残されるリミアの様子を見ておきたいところだが、それも出来ない。まあ、相手の目的を考えればリミアに手荒な真似はしないだろうし、もしなにかあってもそのときは盟約の指輪で場所が分かる。


 それならば、ここは下手なことはせず言う通りにしたほうがいいだろう。そう判断したおれは一人で奥にあった部屋に入り、その中にあった階段を下りていく。すると、以前リミアの誘拐犯と戦ったのと似たような広めの部屋に着いた。


 だが、以前とは大きく違うことが一つある。それは、手錠を付けて床に座らされているサフィアの姿だった。


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