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第07話 優しい女の子

「グオオオオオン!」


 おれに噛み付いた狼型の魔物が大きな叫び声を上げる。


 おれがその魔物のほうに向き直ると、鋭い牙が無残に砕け散った魔物がおれから逃げるように走り去るところだった。


 そりゃ、おれに噛み付けばああなるよなあ。今は身体強化だって発動してるんだし。


 もう少しおれの対応が早ければ、今までのように手刀とかであいつの動きを止められたんだが、悪いことをしたな。サメの歯が生え変わるように、あいつの牙も生え変わればいいんだが。


「レインさん、大丈夫ですか!?」


 魔物に噛み付かれたおれを心配したのか、リミアがこちらに走ってくる気配を感じる。


 そのため、おれは「大丈夫」と答えながら振り返ろうとしたが、幸い振り向く前にそれをしてはいけないことに気が付いた。


「いや待て、リミア! おれは大丈夫だからまずは服を着てくれ!」


「えっ!? あっ、そうでした! ……あ、でも……」


 なぜか、リミアに動く気配がない。どうしてなのかと考えていると、おれの視界の端にリミアの荷物や服が置いてあるのが映った。確かにこれではリミアが動くのは無理だな。


「よし、分かった。 今すぐ壁を作るからちょっと待ってくれ」


 おれは<土壁(ガヴァン)>の魔法を発動し、リミアとおれの間に土の壁を生成した。これで、リミアは安心して服を着ることができるだろう。


 そして、その土の壁を見たリミアがおれに声をかける。


「……あの、これって風魔法なんですか?」


 ……あ、今の状況に動揺して風魔法しか使えないっていう設定をすっかり忘れてた。


 やっちゃったZE☆


 *****


「この度は大変申し訳ありませんでした!」


 服を着たリミアに対して、おれは土下座をしていた。理由はもちろん、先ほどリミアのあられもない姿を見てしまったからである。


 土下座は前世でも今世でも初だが、さすがにあんなことがあったらこうせざるをえないと思い、行動に移していた。


 人間、悪いことをしたら素直に謝ることが大切である。


「い、いえ、レインさんは魔物に襲われそうになっていたわたしを助けようとしてくれただけで、悪くないですよ……」


「いや、でも……」


「それに、恥ずかしくて泉で水浴びをしてくると正直に言えなかったわたしに非がありますし……。だから、レインさんは気にしないでください」


 嫌な目にあったのは自分のほうなのに、リミアはおれのほうを気にかけて優しい声をかけてくれる。この女の子は本当に良い子なんだと思う。


 しかし、さっきは本当にやらかしたよなあ。


 リミアと出会ってからここ数日、道中には存在しないお風呂には当然入れてなかったし、その状況であんなにきれいな泉があれば、女の子が水浴びをしたいと思うのは自然なことなんだろう。


 それに対しておれのほうは、前世では毎日ちゃんとお風呂に入っていたが、今世ではそうではなかった。


 最強を目指していたとき、お風呂どころか寝食を惜しんで修行に明け暮れたときがあったからなあ。


 そのせいで、リミアが水浴びをしたいと察することができず、あんなことになってしまった。本当に申し訳ないことをした。


「それより、さっき土の壁を作れた理由を訊いてもいいですか?」


 未だに土下座の体勢を維持したままのおれに対し、リミアが別の話題を切り出してきた。


 確かに、あのまま先ほどの話を続けていると、リミアには恥ずかしい状態が続くだろうし、話題を変えたほうがリミアのためだろう。


 そう思ったおれは土下座をやめて立ち上がり、少し逡巡してから口を開く。


「えーっと、それはだな……。かくかくしかのここしたんたんと言うか……」


「かくかくしかのこ……ですか?」


 おれが両手を頭に付けてシカの角を表現しながらそう言うと、おれのその動きにつられたのかリミアも両手を頭に付けた。


 そのリミアの姿はシカの角と言うよりはウサ耳に見え、とても可愛らしい。


 この子、バニーガールの格好とかすごい似合いそう。というか、美少女ってだいたいなに着ても可愛いよな。


 さて、思いつきでついふざけてしまったが、真面目な話どうしよう? 


 風魔法で土の壁を作れるという話に持っていくのはさすがに難しい。それに、こんな優しい女の子にはなるべく嘘をつきたくない。


 ……それなら、言っても大丈夫なところだけ話すことにしよう。吸収魔法のことさえ話さなければ、特に問題はないだろう。


「いや、実はおれ、風魔法以外にもいくつか使える魔法があるんだ。ただ、ちょっと事情があって、風魔法以外は使えないってことにしてて。まあ、だから、嘘をついててごめん」


「そうだったんですね……。……その、人にはそれぞれ事情がありますし、嘘をついてたとか気にしないでください。あ、もちろん、このことは誰にも言いませんから」


「そうか……。ありがとう。助かる」


「いえ。……では、行きましょうか」


 そう言って、リミアは王都へ進むための歩みを再開しようとする。


 しかし、おれとしては、さきほどリミアの見てはいけない姿を見てしまった罪悪感があるので、リミアのためになにかしてあげたい。


 なにか、今のおれにできることはないだろうか? そう考えていると、とあるアイデアが浮かんだ。


 ただ、これを実行するとリミアは先ほどのことを思い出してしまうかもしれないが、絶対にリミアのためになるからここは思い切って提案しておこう。


「なあ、リミア。どうせなら、お風呂に入りたくないか?」


「え、お風呂ですか? それは、入れるなら入りたいですけど、もしかして、この近くに宿があったりするんですか?」


「いや、この近くに宿はないから当然お風呂もない。だけど、ないなら作ればいい」


 堂々とそう宣言したおれの言葉にリミアは目を丸くしていた。


 では、『Do It Yourself!!』、略して『どぅー・いっと・ゆあせるふ』のお時間だ。


 いや、これだと略してねえな。


7話を読んで頂きありがとうございました。

これからも本作をよろしくお願いします。


それと、本作を気にいったり面白いと思ってくれた場合は、ブックマークや評価などを頂けると非常に嬉しいです。


特に、評価は下にある『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』にして最高値を貰えると、すっっごくモチベが上がって続きを書くのを頑張れますのでよろしくお願いします!

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