表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

65/132

第65話 アイシスと猫

 サフィアが猫満喫タイムを終えた後。


 サフィアは女子寮に帰るつもりなのか、それとも帰ってくるはずのないおれの帰りを警戒したのか、おれのTシャツを脱いで自分の服に着替え直した。


 そのおかげで、おれは再びサフィアの下着姿を拝むことが出来た。二回も下着姿を見ちゃって、ごめんね。ありがと。そのお詫びにおれの権利を侵害して、おれの家名を勝手に名乗っていいよ。


 つまり、これからはサフィア・ラステリースではなく、サフィア・バーンズアークだね。……もし、そんなことを言ったらサフィアに正当な報復をされそうだなあ、と思っているとおれの部屋の窓からノックの音がした。


「バーンズアーク、いるか?」


「この声はアイ先輩ね。レインはいないし、かといって無視するのも悪いわよね」


 サフィアは窓の元まで歩いていき、それを開けた。


「アイ先輩、レインなら留守にしてるみたいです」


「そうなのか。……では、君はなぜ一人でバーンズアークの部屋にいるんだ?」


「……えーっと、窓が開いていたから中を見て、そしたらレインがいなかったというか……」


「なるほど。そのままでは不用心だから、バーンズアークの代わりに留守番をしていたということか?」


「そ、そうですね。そんな感じです」


 サフィアはやや慌てながらそう答えた。まあ、アイシス先輩がサフィアに都合よく解釈してくれただけで、実際には猫目当てで侵入しただけだからな。その気まずさをごまかすためか、サフィアが口を開いた。


「それより、アイ先輩はレインになんの用なんですか?」


「バーンズアークが生徒会室に忘れ物をしたのでな。明日でいいかもしれないが、一応届けにきたんだよ」


「そうだったんですね。でも、本人がいないですし……」


「そうだな……」


 アイシス先輩は腕を組んで少し考えた後、その結論を口にした。


「では、留守番のほうは私が引き継ぐから、君はもう帰っていいよ。もし、バーンズアークの帰りがあまりに遅いようなら、寮長に事情を説明して私も帰るとしよう」


「分かりました。アイ先輩、ありがとうございます」


「気にしなくていいよ。では、またな」


「はい、また」


 こうして、サフィアは女子寮へと帰り、その入れ替わりで今度はアイシス先輩がおれの部屋に入って来た。


「さて、私が一人でこの部屋に居るのを誰かに見られたら変だと思われるだろうな」


 そう言って、アイシス先輩は窓とカーテンを閉めた。その後、こちらに向き直ると、ちょうど猫であるおれと目が合った。


「ね、猫か!?」


 アイシス先輩の肩が跳ね、なにやらソワソワしだした。猫に対して、なにか思うところでもあるのだろうか?


「い、今は周りに誰もいないし、少しくらいは構わないよな……」


 そう言って、アイシス先輩は中身がおれである猫に近づき、その頭を撫で続ける。だが、それだけでは満足できなかったようで、アイシス先輩は猫を抱きかかえた。そうなると、当然アイシス先輩の豊満な胸が猫の身体全体に当たる。そして、その状態のまま、アイシス先輩は再び猫の撫で撫でタイムに入る。


「ああ……、やはり猫は可愛いなあ……」


 おれとしては、幸せそうな顔をしながらそんなことを言うアイシス先輩のほうが圧倒的に可愛い。普段は大人びていて女の子らしい素振りをほとんど見せないアイシス先輩だが、猫を愛でるその姿はどう見ても一人の可愛らしい少女だった。


 その後、アイシス先輩はまるで大切な物を壊さないように扱うかのごとく、優しく猫を抱きしめる。そのおかげで、猫の全身がアイシス先輩の柔らかい胸にうずまり、おれとしては非常に幸せだった。もちろん、アイシス先輩も幸せそうだった。


 その後、猫とアイシス先輩はお互いに幸せな時間を過ごし、ふとアイシス先輩が口を開く。


「……もうしばらくこうしていたいが、そういうわけにもいかないな。バーンズアークはまだ帰ってこないようだし、そろそろ寮長のところへ向かうべきか……」


 アイシス先輩が猫を抱えたまま悩みだした。アイシス先輩に余計な手間をかけさせるのも申し訳ないが、かといってこの場で<変身(メルフォス)>を解除するわけにもいかない。


 さて、どうしようかと考えていたら、とある魔法を使えばいいことに気付いた。というわけで、おれは<分身(アヴァタル)>を発動して部屋の外に自分の分身体を作り出し、ドアを開けようとガチャガチャさせた。


「あれー、鍵をかけずに出かけたような気がするんだけどなー」


「ちょうど帰って来たか。バーンズアーク、鍵は私が開けるよ」


 おれは演技でそう言ったためやや不自然だったかもしれないが、アイシス先輩は特に気にせずにドアを開けてくれた。


「あれ、アイシス先輩、なんでおれの部屋に?」


「それはだな――」


 おれはなにも知らないフリをしてアイシス先輩から事情の説明を聞いた。


「そうだったんですね。すいません、色々とありがとうございました」


「いや、構わないよ。では、私はこれで失礼する」


「はい、また明日」


 そして、アイシス先輩もおれの部屋を去っていき、おれは<分身(アヴァタル)>と<変身(メルフォス)>を解除して元の姿へと戻った。


 こうして、おれ達の猫猫タイムは終わりを迎えた。猫猫って言っても、毒が大好きな美少女じゃないよ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ