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第62話 とあるファンクラブ④

 ときは放課後、場所はとあるファンクラブ。


「ああ……、今日もルミル先生は美しかったなあ……」


「まったくだ。さすがは、選ばれし神だよ」


「俺達はルミル先生と一緒の魔法学院に入れて幸せだよなあ」


 というわけで、ここはルミル先生ファンクラブである。どうやら、ルミル先生は一部の男子生徒から『選ばれし神』と呼ばれているようだ。まあ、ルミル先生のことをそう呼びたい気持ちはすごく分かる。おれだって、ルミル神って呼んだことがあるしな。


 さて、ここはアイシス様ファンクラブと同様に壁とかにルミル先生の写真が貼られているな。まあ、ルミル先生は数年はこの魔法学院にいるわけだし、それならファンの中にお金持ちもいるのだろう。


 ただ、気になるのはこの写真をどうやって撮ったかだな。そう思っていたおれに対し、一人の男子が話しかけてきたので、この男子に訊いてみよう。


「あれ? 君の顔には見覚えがないな」


「ああ、おれはここには初めて来たから」


 今日のおれは<変身(メルフォス)>を使っていないのだが、この男子はおれの素顔を見ても特に気にする様子はない。まあ、リミアやサフィアのときとは違い、妬まれるような要素もないからな。


 ……いや、なくはないな。ルミル先生が担任のクラスにおれは所属しているので、それは妬まれる要素にはなる。だが、そういうことを理由に他人を非難したりするのをルミル先生が是としない以上、このルミル先生ファンクラブの人間もその手の振る舞いはしないだろう。


 では改めて、先ほど気になったことをこの男子に訊いてみるか。


「この写真とかってルミル先生に知られたら問題にならないのか?」


「それは大丈夫だよ。このファンクラブも写真のこともルミル先生に許可は取ってあるからね」


「えっ、そうなの?」


「うん、ルミル先生に話してみたら『よく分からないけど~、みんながそうしたいなら写真くらいはいいですよ~』って快く了承してくれたからね」


 マジかよ。さすがはルミル先生だ。実際、ざっと見た感じ写真は隠し撮りとかではなく、本人に許可を得て撮ったと思える写真しかないな。


 もし、ルミル先生の隠し撮り写真なんて物があれば、もちろんおれが独占……、なんてことは出来ない。だって、ルミル先生はおれ達のルミル先生だからな。


 さて、せっかくなのでルミル先生の写真を拝ませてもらおうと思い、おれは写真を見て回る。こうして見ていると、どの写真も自然体、いやむしろノリノリで撮っているようにも見えるな。


 具体的に言うと、ルミル先生の笑顔の写真だったり、ウインクしながら横ピースをしている写真などがあった。まあ、正確に言うとノリノリなのではなく、ルミル先生が生徒の要望を聞いてくれた結果がこの写真なのだろう。


 そうやっておれが写真を眺めていると、室内の一部がざわつきだす。なにかと思いそちらを見ると、数人の生徒が一冊のノートを見ながら会話を始めていた。


「やはり俺達がルミル先生から教わった『はあ~~~~~』などの言葉は、すべて魔法の扱いを完璧に説明していたんだ!!」


「そうだ!! 一般人には理解しがたいが!! 俺達ルミル先生ファンクラブの会員なら理解できる!!」


「しかしクリシャ、よくこのルミル語が読めたな」


「いいや、まだ殆ど解読出来てないんだ」


「……? ではなぜ内容が分かった?」


「? そんなことすぐ分かるだろ?」


「なぜなら、俺はルミル先生を信じている!! 俺達は選ばれし神の教え子!! ルミルの民だ!!」


「「「「「うおおおおおおおおおお!!」」」」」


 そんな様子を見ながら自分の姿を確認すると、おれも右手を高々と上に突き上げていた。またしても、無意識にそんな行動を起こしていたが、おれもルミルの民の一人だから仕方ないな。


 さて、そんなルミルの民の一人として、このルミル先生ファンクラブにも入会しておかなければいけない。そう思い、辺りを見回すとちょうど会員証を受け取っている生徒がいた。どうやら、あの人に話せばいいようだ。


「あの、おれもルミル先生ファンクラブに入会したいんだけど」


「……え? 君はこの場所に来てすぐに入会してたよね? 会員証が制服のポケットに入っているはずだよ」


 ……なにやらよく分からないことを言われたが、実際にポケットを探るとそこにはルミル先生ファンクラブの会員証が入って来た。


 ……………………………………………………。


 あ……ありのまま今起こったことを話すぜ! おれはルミル先生ファンクラブに入会しようと思ったらいつの間にか入会していた。な……なにを言っているのか分からねーと思うが、おれもなにをされたのか分からなかった……。


 頭がどうにかなりそうだった……。催眠術だとか超スピードとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねえ。もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ。


 ………まあ、ルミル先生の圧倒的な魅力の前ではおれがこうなってしまうのも当然のことなのかもしれない。


 なにはともあれ、こうしておれは正式に『ルミルの民』の一人になった。


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