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第60話 とあるファンクラブ②

 ときは放課後、場所はとあるファンクラブ。


「ああ……、今日もリミア様は可愛かったなあ……」


「まったくだ。さすがは、光の女神だよ」


「俺達はリミア様と一緒の魔法学院に入れて幸せだよなあ」


 というわけで、ここはリミア様ファンクラブである。どうやら、リミアはいつの間にか一部の男子生徒から『光の女神リミア様』と呼ばれるようになっていたようだ。まあ、リミアのことをそう呼びたい気持ちはよく分かる。


「なあなあ、聞いてくれ! 今日の朝、俺がリミア様に挨拶したら、ニコッて笑いながら挨拶を返してくれたんだぜ! もしかして、リミア様って俺のこと好きなんじゃね?」


「はあ、そんなこと言ったら、俺が昨日の帰りに手を振りながら挨拶したら、リミア様も手を振ってくれたんだぞ! だから、リミア様が好きなのは俺だ!」


「俺なんか、こないだハンカチを落としたらすぐにリミア様が拾ってくれたんだぞ! きっと、俺のことを好きに違いない!」


 ……なにやら、残念な言い争いが行われていた。だがまあ、男子っていうのは単純だから、ちょっとしたことでそういう考えに至ってしまうのも仕方ない。というか、今世では気を付けてるが、前世のおれにも身に覚えがある。つまり、半分は当たってる。耳が痛い。


「リミア様って言えば、あいつはムカつくよなあ」


「ああ、あの異常者だろ」


「なんで、リミア様はあんな奴と仲良くしてんだよ」


 ふむ、やはりこのリミア様ファンクラブではおれは嫌われているらしい。まあ、リミアみたいな美少女と仲良くしている男子がいたら妬まれるのは当然だな。そう思っていたおれに対し、一人の男子が話しかけてきた。


「あれ? 君の顔には見覚えがないな」


「ああ、おれはここには初めて来たから」


 おれの顔を見たこの男子だが、先ほどの男子たちのように怒り出したりもしない。それも当然、今のおれは<変身(メルフォス)>でモブっぽい男子の姿になっているからな。嫌われていることを想定して、最初から変身しておいたが正解だったようだ。


 さて、話しかけてくれたこの男子は他の人と比べて優しそうな人だな。このリミア様ファンクラブはアイシス様ファンクラブと明確に違う点があるから、それについて訊いてみよう。


「このファンクラブってリミアの――」


「リミア様、だよ」


 リミアの呼び方を訂正されてしまったが、相手が優しそうな人で良かった。相手次第では、「リミアさま、だ。豚が……」と言い放ち、おれの首をへし折ってきたかもしれない。それを踏まえると、『様』を付けるだけではなく、『様』と『さま』を間違えないように気を付けないといけないな。


「ごめん、間違えた。それで、質問なんだけどリミア様の写真とかはないのか?」


「それは出来れば欲しいんだけど、写真を撮れる魔道具はとても高価だからね。あれは貴族とかお金持ちじゃないと、手に入れるのは無理だよ」


 なるほど、そういうことか。まあ、仮にそんな魔道具を手に入れたとしても、リミアには写真どころかファンクラブの存在自体言いづらいだろう。


 となると、その場合は隠し撮りということになり、リミアのそんな写真があればもちろんおれが独占……、ではなくリミアのために回収しおれが厳重に保管するところだが、そんなことにはならなそうだ。


 そう考えていたおれに対し、先ほどの男子が再び話しかけてきた。おれの質問に答えてくれたことだし、おれも少し話に付き合うか。


「リミア様って言えばさ。この間、僕はリミア様に告白したんだけど――」


「告白!? マジで!?」


「そうだけど、驚きすぎじゃないか。僕以外にもリミア様に告白してる男子はけっこういるよ」


 ……言われてみれば、美少女であるリミアに告白する男子がいるのは当然のことか。


「で、結果は?」


「もちろん、振られたよ。リミア様の告白に成功した男子は今のところ一人もいない」


 やはり、美少女と付き合うハードルは高いようだ。加えて、リミアがおれの人生の一人目のメインヒロインであることを踏まえれば、当然の結果だろう。


「それで、話を戻すけど、告白したときにリミア様に訊いてみたんだよ。もしかして、誰か好きな人がいるのって? そしたら、リミア様は顔を真っ赤にして、『い、い、いないです』って言いながら思い切り手を振っていたんだよ」


「そ、その反応はまさか!?」


「うん、すごい可愛いよね」


「ああ、めっちゃ可愛い!」


 是非とも、目の前でその可愛さを拝んでみたいところだ。いっそ、このモブ男子の姿でこの男子生徒と同じことをして、リミアに再度その可愛い姿を披露してもらおうか、と思える可愛らしさである。


「あ、そうだ、他には――」


 こうして、おれはリミア様ファンクラブの人達からリミアの可愛い話を聞くという時間を過ごした。


 そして、その時間を終えた後、おれがリミア様ファンクラブの会員、通称『女神の信徒』の一人になったのは言うまでもない。


60話を読んで頂きありがとうございました。

また、評価・ブックマーク・いいねをしてくれた方もありがとうございました。

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