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第56話 もっと頑張ろう

「……おれが生徒会に……ですか??」


 シェーナ先輩の予想外の言葉におれは面食らってしまった。いったいなにがどうしてそんな話になったんだ?


「えーっと、なぜですか?」


「その話をする前に会長をお呼びしましょう。そもそも、生徒会に入る者を決める権利を持っているのは会長ですし」


 そう言って、シェーナ先輩は応接室を出ていき、アイシス先輩を連れて戻ってくる。そして、アイシス先輩は先ほどシェーナ先輩が座っていた隣に座った。


「先ほどの話を続ける前に会長分の紅茶を淹れるので、少し待っていてくださいね」


 シェーナ先輩が紅茶を淹れにいったので、その間にアイシス先輩に気になったことを訊いておこう。


「話の途中でシェーナ先輩がよく分からないことを言っていたんですが、どういうことか分かりますか?」


「シェーナ君はなんて言っていたんだ?」


「アイシス先輩に恋人がどうとか、そういうことを言ってました」


 おれがそう言うと、アイシス先輩は腕を組み悩む姿勢をしながら話し始めた。


「そういう内容か……。まず、シェーナ君の趣味は恋愛小説なんだ。それと、彼女は私のことになると、冷静さを大きく欠いてしまうことがあるからな。それらが原因で、無意識にそういうことを考えてしまっていると思っているのだが……」


「自分の好きな物同士をつい一緒にして、あれこれ考えちゃうってことですかね。あれでも、『思っている』ってことは本人には確認していないんですか?」


「生徒会室に来る前にも話したが、あまり詮索するのも良くないからな。なにか、実害や問題があれば確認するが、その件に関してはそういうことはないからな」


「分かりました、ありがとうございます。確かに、最初は落ち着いてる人だと思ったので、その態度の違いには驚きましたね」


「まあ、初めて見たときは驚くのも無理はないな。けれど、普段のシェーナ君は冷静でとても聡明な女性だよ」


 そういえば、アイシス先輩はシェーナ先輩のことを『君』付けで呼んでいるのか。たぶん、近しい人にはそういう呼び方をしてるんだろう。であるならば、おれもいずれは『レイン君』と呼ばれるようにならなければいけないな。


 その後、シェーナ先輩が戻ってきて、淹れた紅茶をアイシス先輩の前のテーブルに置く。そして、ソファーに座り直して口を開いた。


「では、改めて。会長、わたくしはバーンズアークさんに生徒会に入ってもらうのが良いと考えたのですが、いかがでしょうか?」


「確かに、今の生徒会には庶務の席が空いているが……。バーンズアークを推薦する理由はなんだ?」


「それはもちろん、会長には彼が必要だと思ったからです」


「私に必要か……。すまないが、もう少し具体的に説明してもらっていいか?」


「……申し訳ありません。会長の想いを考えると、わたくしから明言はしづらいのですが……」


「そうか……。では、私のほうでその理由を考えるとしよう」


 そう言って、アイシス先輩は腕を組みながら考え始めた。そして数分後、気付きを得たように声を上げる。


「そうか! 私は日頃、出自や能力で他者を非難していい道理はないと言っているにも関わらず、現在の生徒会にいるのは貴族の者だけだ。確かにこれでは、周囲の者に示しがつかない。そこで、平民で一星魔術師のバーンズアークを入れようということか」


「まあっ!! そこまで考えていらっしゃるとは、さすがです、会長!!」


 なにやら二人の会話が噛み合ってないように思えるが、たぶんおれが付いていけてないだけだろう。きっと、この二人はおれなんかよりはるかに頭がいいだろうしな。


「だが、私としては気が引ける理由ではあるな。それでは、バーンズアークの立場を利用していることになるし、君だってそれは嫌だろう?」


 アイシス先輩は気遣わしげにおれのほうを見た。だが、おれとしてはそういう理由でも特に嫌とかではない。それに、生徒会に入ればアイシス先輩と一緒に入れる時間も増えるので、これはおれにとってメリットの大きい話だと思う。


「そういうことなら、おれは別にいいですよ。むしろ、アイシス先輩の役にたてるなら光栄です」


「……そうか。そう言ってくれると私としては助かるよ」


「ただ、おれは生徒会の仕事とか全然分からないですよ。それでも、大丈夫ですか?」


「それに関しては、私が責任を持って教えるよ」


「もちろん、わたくしもサポートします。ですから、安心してくださいね」


 この二人がそう言ってくれるなら、懸念はないだろう。であれば、話は決まりだな。


「じゃあ、これからよろしくお願いします。アイシス先輩、シェーナ先輩」


「ああ、こちらこそよろしく頼む」


「はい、よろしくお願いしますね」


 こうして話はまとまり、シェーナ先輩が淹れてくれた紅茶を皆で飲んで一息ついた。


「では、後片付けはわたくしがやっておきますので、お二人は先に生徒会室に戻っていてください」


 そう言われ、おれとアイシス先輩は応接室を出る。すると、一人でその部屋に残ったシェーナ先輩の叫び声が聞こえてきた。


「これで、会長は恋人さんとお仕事が出来ますね! それなら、なるべく二人には一緒に仕事をしていただくようにしましょう! つまり、お二人で色々な共同作業! きゃあ~~~~~!!」


 また、シェーナ先輩がよく分からないことを言っていた。まあ、おれもたまにあれこれ妄想したりするし、それと似たような物なのだろう。


 しかし、おれが生徒会か。考えてみると、同じクラスであるリミアやサフィアと違い、二年生のアイシス先輩とは関わる機会が少なかったからな。これを機に、おれの人生の三人目のメインヒロインであるアイシス先輩ともっと仲良くなれるように頑張ろう。


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