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第49話 ダンジョン探索

「ねえ、明日の休みに三人でダンジョンに行かない?」


 放課後、サフィアが唐突にそんなことを言いだした。


「どうした急に?」


「王都から少し離れたところにダンジョンがあるって話を聞いたのよ。そういうのって面白そうじゃないかしら?」


理解(わか)る」


 確かに、ダンジョンという存在には強く心を惹かれる物があるな。オラ、ワクワクしてきたぞ!


「なら、レインは参加で決定ね。ミアはどうかしら?」


「そうですね……。明日は特に用事もないからいいですよ」


「やった! じゃあ、明日は三人でダンジョンね」


 こうして、おれ達三人はダンジョンに行くことになった。


 *****


 翌日、おれ達はダンジョンの入り口付近までやってきた。すると、そこには看板が立っている。内容は『このダンジョンには危険な魔物が出るため、立ち入り禁止』か。


 まあ、そりゃそうか。王都から大して離れてないダンジョンなんてとっくの昔に発見されてるし、調査して危険があれば立ち入り禁止になるだろう。


「これだと入るわけには行かないですし、どうしますか?」


「えー、別に少しくらい大丈夫でしょ。ほら、今は誰もいないから普通に入れそうだし」


 真面目なリミアとは対照的にサフィアがそんなことを言いながら入口の近くへと歩いていった。確かに、入り口が封鎖されているわけでもないので、入る気があれば簡単に入れるな。普通に考えれば、危険があるって書いてあるところにわざわざ入っていく人もそういないだろうしなあ。


「レインさんはどう思いますか?」


「そうだなあ……。入り口を封鎖していないなら危険な魔物は奥にいるんだろうし、少しくらいならいいんじゃないか。それに……」


「それに?」


「もしものときはおれがリミアを守るから安心しろ」


「! はい、ありがとうございます……」


 リミアは頬を朱に染めながら嬉しそうにそう言った。やはり、こんなに可愛い女の子は俺が守護(まも)らねばならぬ。


「じゃあ、行くか」


「はい、行きましょう」


 おれとリミアはダンジョンにはやく入りたくてうずうずしているサフィアの元へ向かい、そのまま三人でダンジョンの中に入り歩を進める。


「中には明かりがあるし思ってたよりは明るいわね」


「ああ。たぶん騎士団あたりが調査用に付けたんだろうな」


「でも、やっぱりちょっと怖いですね……」


 確かに明かりがあるにはあるが、そんなに明るいわけでもないからな。それに、ここがダンジョンの中だということを踏まえれば、リミアが怖いと思うのも当然だろう。


 だが、そんなリミアとは対照的にサフィアは先頭に立ち、物怖じせずに歩いていた。サフィアは元々ダンジョンを楽しみにしていたし、度胸のある女の子だから当然といえば当然か。


 そんな感じでダンジョン内を歩いていると、上からバサバサバサッと音がして、なにか黒い影が飛びだしてきた。


「きゃあ!」


 おれの左隣を歩いていたリミアが、そんな叫び声を上げながらおれの左腕に抱きついてきた。そのせいで、おれは当然のごとく腕に感じる大きくて柔らかい二つの膨らみに意識を持っていかれそうになる。


 だが、リミアを守るために気を取り直して先ほどの黒い影の正体を確認する。ふむ、どうやらコウモリ型の魔物みたいだな。まあ、大した魔力も感じないし、あえて倒す必要もないだろう。


「大丈夫だ。落ち着け、リミア」


「……は、はい」


 そう言って、リミアはおれのほう、いや、正確にはおれ達の状況を見た。そして、おれの腕に抱きついてしまったのに気付いたリミアはそれが恥ずかしかったのか、顔を真っ赤にしておれから離れた。


「す、すいません!」


「いや、おれは別に平気だけど」


 そう返したが、実際のところおれは平気ではない。だって、せっかくリミアが抱きついてくれたのに離れちゃったんだよ。だから、内心ではがっかりしてるよ。


 そんなことを考えながらリミアのほうを見ると、先ほどコウモリが飛び出してきた場所を不安げに見つめていた。……ふむ、リミアはさっきも怖いって言ってたことを踏まえると、こうしてもいいだろう。


「リミア。もし、怖いんだったらおれの腕に掴まっててもいいぞ」


「……いいんですか?」


「ああ、遠慮しなくていい」


「すいません、ありがとうございます」


 リミアは再びおれの左腕に抱きついてきた。それが恥ずかしいのか頬は赤く染まっているが、表情のほうは心なしか嬉しそうに見える。たぶん、おれに抱きつくことで安心することが出来たのだろう。


 対するおれのほうはというと、リミアに抱きつかれてもちろん嬉しい。だが、そのことがリミアにバレないように気を付けないとな、と思いながら前を見る。すると、やや不機嫌そうな顔をしたサフィアがこちらを見ていた。


「サフィア、どうかしたのか?」


「……なんでもないわよ」


「そうか? もし、怖いんだったらお前も遠慮なく腕に抱き……、掴まっていいんだぞ」


「……別に怖くないからいいわ」


 残念ながらサフィアはそう言って、前に向き直り歩き出した。……よく分からないが、今はそっとしておこう。


 こうして、おれは左腕にだけ素晴らしい感触を得ながら、ダンジョンの先に進むことになった。


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