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第41話 早起きは三億の徳

 リミアに盟約の指輪を渡し、彼女に「これからは、なにがあってもおれがリミアを守るよ」と誓いを立てた翌日の朝。


 今、つい『彼女』って言っちゃったけど、これは三人称の意味での『彼女』なんだよなあ。これを早く、交際中の女性という意味の『彼女』にしたい物だ。まあ早くは無理でも、そのうちなんとかなるだろう。


 だって、リミアはおれの人生の一人目のメインヒロインだからね。主人公とメインヒロインが結ばれないとか、そのようなことがあろうはずがございません。


 ……ないよね? 「おれの人生の一人目のメインヒロインなどと、その気になっていたお前の姿はお笑いだったぜ」みたいなことにならないよね?


 なんか、主人公とメインヒロインが結ばれずに終わるとか、そういう展開になる作品もある気がするけど大丈夫だよね? おれのこの異世界転生人生はそういうふうにならないよね? 大丈夫だよね?


 ……なんか考え出したら不安になってきたなあ。……分かった。この話はやめよう。ハイ!! やめやめ。


 よし、頭を切り替えよう。まず、今日はいつもより早く目が覚めた。そして、『早起きは三文の徳』ということわざがある。このことから、今日のおれには良いことが起きることは確定的に明らかと言っていい。ここで、『三文』は現在の貨幣価値に換算すると数十円であるというツッコミは禁止だ。


 ということで、さっさと朝ご飯を食べたり、制服に着替えたりして登校の準備を済ませた。さて、このあとどうしようかな? このままの流れで早めに登校すれば良いことがあるのだろうか? あるという可能性にかけて登校してみるか。


 そんなことを考えていたら、窓からノックの音がした。おや、誰か来たようだ。おれはその来訪者を確認するために、窓に付けたカーテンを開ける。すると、そこにいたのは一人の美少女、おれの人生の三人目のメインヒロインことアイシス先輩だった。


 ……え、なんでここにアイシス先輩が!? もしかして、おれに会いたくて「来ちゃった♡」とかそういうこと!? ……ハッ、いかん。まずは、窓を開けなければ。女性を待たせるとか紳士にあるまじき振る舞いじゃないか。そのことに気付いたおれは急いで窓を開け、アイシス先輩に声をかける。


「おはようございます、アイシス先輩。おれになにか用ですか?」


「おはよう、バーンズアーク。実はこれを渡そうと思ってな」


「こ、これはまさか!?」


「ああ、君が待ち望んでいたマントだよ」


「うおおーー!! ありがとうございます!! アイシス先輩!!」


 おれはアイシス先輩からカッコイイマントを受取りバサッと広げる。ああ、やはりカッコイイ。とうとうこの日が来てくれたか。


「あの、これ今すぐ付けてみてもいいですか!?」


「もちろん構わないよ。もう、そのマントは君の物だから好きにしていい」


 アイシス先輩は優しい目をしながらそう言ってくれた。許可も貰えたので、おれは早速マントを身に付け、鏡でその姿を確認する。ああ、こうやって羽織ってみると、さらにそのカッコよさが際立つなあ。


「アイシス先輩。どうですか、この姿?」


「ああ、よく似合っているよ」


 微笑まししい物を見るような目でおれを見ながらアイシス先輩はそう答えた。……あれ、もしかして今のおれって、子どもっぽいなあとか思われてたりする? まあ、確かにさっきのおれは、欲しがってたおもちゃを与えられた子どものようなはしゃぎ方だったかもしれない。


 だが、そうだとするといかんな。おれとしたことが、アイシス先輩相手にみっともない姿を見せてしまった。よし、少し冷静になろう。


 Be CooL……、Be CooL……! ……おれは……、常に冷静(クール)だ……!


 こうして冷静になった影響か、おれの頭にとある疑問が浮かんだ。なので、おれはその疑問をアイシス先輩に投げかける。


「そういえば、なんでおれの部屋まで来てくれたんですか? 学院で渡してくれれば良かったんじゃ?」


「随分と君を待たせてしまったし、少しでも早く渡したほうが喜ぶだろうとふと思い立ってな。それで、実際にこうして近くまで来てみたら、君がすでに起きている気配がしたから部屋に寄ってみたんだ」


「そうだったんですね。お気遣いありがとうございます」


 貴族なのに平民のおれにそこまでしてくれるとか、アイシス先輩ってやっぱり良い人だよなあ。たくさんの人から慕われるのもうなずける話だ。そして、そんな素敵なアイシス先輩がおれの姿を見て口を開く。


「見たところ制服を着ているし、君はすでに登校の準備を終えているのか?」


「はい、終わってます。それで、早めに登校しようかと思っていたところでした」


「そうか。では、君さえ良ければ一緒に登校しようか」


「えっ、いいんですか!?」


「私は構わないが……。なにか問題があるのか?」


「いえ、全然まったくこれっぽっちも無いです! ぜひ、一緒に登校しましょう!」


「ああ。では、行こうか」


 アイシス先輩は返事こそ普通だが、表情のほうは若干引いているように見える気がした。……まあ、「一緒に登校しようか」と言われた後のおれのテンションは明らかにおかしかったからなあ。


 いやでも、しょうがなくない? だって、アイシス先輩みたいな美少女と一緒に登校出来るんだよ。つまり、これは美少女との登校デートだよ。これで、テンションが上がらないほうがおかしい。


 ああ、今日は早起きをして本当に良かった。どうやら、アイシス先輩が来る前に考えていた『早起きは三文の徳』ということわざは本当のようだ。


 だって、『美少女が自分の部屋に訪れる』・『美少女からカッコイイマントを貰える』・『美少女と登校デートが出来る』という三つの徳を得られたからな。でも、三つあるってだけで、価値としてはどれも明らかに数十円ではない。


 この三つを現在の貨幣価値に換算すると、一つにつき一億円くらいの価値があるのではないだろうか?


 つまり、今日のおれにとって『早起きは三億の徳』ということになる。


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