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第20話 最初の授業

 始業のベルが鳴り、おれ……ではなくおれ達のルミル先生による最初の授業が始まった。


「え~と、まずは魔法と魔術師の成り立ちから教えていきま~す」


 ああ、やはりルミル先生の声は聞いているだけで癒やされる癒やしボイスだなあ。


「はるか昔~、魔力を扱う才能が特別に優れていた人達がいました~。そして~、その人達が魔力をイメージや感覚で使用して生み出した物~。それが~、魔法の始まりとされていま~す」


 ふむ、やはりこの辺も師匠に教わったことがあるな、いや、師匠の家にあった本で学んだったかな? どちらにせよ、記憶にある話だ。


「そして~、その魔法を才能に優れていない人でも使えるようにした物が魔法術式であり、それを描いた物を魔法陣と言いま~す。このように~、魔法を技術として体系化することで、誰でも魔法を使えるようになりました~。よって~、魔法の技術を扱う者という意味で、魔術師と呼ばれるようになったんですよ~」


 おれには知っている内容だったため余裕があり、ふとリミアのほうを見てみると真面目にノートを取っていた。うんうん、偉いなあ、リミアは。


 では、サフィアのほうはというと、ノートを開いてはいるものの特になにも書き込んではいなかった。そんなサフィアに対しておれは声をかける。もちろん、授業中なので小声でだ。


「お前はリミアと違って不真面目だな」


「……ノートすら開いていないあなたに言われたくないんだけど」


 ……おっと、これは痛いところを突かれたな。


「いや、だって、おれには知っている内容だっだし」


「それなら、あたしだってそうよ。だったら、別にノートを取る必要なんてないでしょ」


 うむ、完全に正論である。いや、なんかあれだよ。おれとしては退屈だったからちょっと話しかけたくなったんだよ。


 あと、サフィアはツンデレっぽいところがあるし、せっかく隣の席なんだから、時々ボソッとロシア語でデレる隣のサフィアさんになってくれないかなあ。


 いや、おれだって多少はロシア語が分かるんだよ。例えば、グーテンモーゲンとかバームクーヘンとかね。あ、違うな。これはドイツ語だった。


 あ、でも外国語は本当に少しは分かるぞ。だって、カッコイイ単語とか調べてたことが昔あったからな。


 さて、そのあともルミル先生の授業は続くが、最初の授業ということもあり内容は知っている物ばかりだった。言わば、「あっ、これ師匠ゼミでやったところだ!」状態である。


 うーん、ルミル先生の癒やしボイスが聞けるのはいいんだが、やはりこれだと退屈だな。もし今、死神のノートを拾ったらつい使ってしまうような退屈さだ。


 そして、それはサフィアも同様のようで、ノートは取らずにあくびを噛み殺したりしていた。んー、なんかいい退屈しのぎはないかなあ。……あ、そうだ。


「なあ、サフィア。マルバツゲームって知ってるか?」


「知ってるけど、それがどうしたのよ?」


「いや、お互いに退屈だし良かったら少し遊ばないか?」


「あなたねえ……。今は一応授業中よ」


 サフィアがジト目でおれのことを見た。うむ、美少女のジト目というのも悪くない。悪くないが、ゲームをするために少し挑発でもしてみよう。


「どうやら、負けるのが怖いようだな?」


「あら、安い挑発ね。でも、いいわ。その挑発に乗ってあげるわよ」


 こいつ、けっこうチョロいな。だが、これで話はまとまったので、おれはノートを開き、マルバツゲームをやるための棒線を書く。おれがこの学院で最初にノートに書くのがこれでいいのかとも思ったが、気にしたら負けだ。


「ではいくぞ。おれの先行だ」


「あ、ちょっと待ちなさいよ! 勝手に先行を決めるとかずるいわよ!」


「なにを言っているんだ、サフィア? 先攻は言ったもん勝ちというのはデュエリストの間では常識だろう?」


「いや、知らないわよ、そんな常識! というか、デュエリスト自体知らないわよ!」


 こうして、おれとサフィアの戦いの火蓋が切って落とされた。そして、この戦いは次第にその熱を増していき……。


 *****


「あなたのせいよ」


「いや、待て。おれは悪くない」


 おれ達はマルバツゲームに熱中しすぎたようでルミル先生の接近に気付かず、授業中に遊んでいたという理由で廊下に立たされていた。まあ、要するにおれ達への罰ですね。マルバツゲームだけに。


 あと、叱られはしたのだが、残念ながらルミル先生に「めっ!」をしてもらうというおれの切なる願いは叶わなかった。なのでそれは、また次の機会に期待しよう。


 そんなことを考えているおれに対し、サフィアが再び非難の声を上げる。


「だって、最初にあなたがマルバツゲームをやろうって言いだしたのが原因でしょ?」


「いやでも、ルミル先生が近づいてきたのはサフィアのほうに原因があるだろ? お前の声が大きかったから気付かれたんだぞ」


「それはだって、あなたが変な手を使ってくるのがいけないのよ」


「戦略と言ってくれ。だいたい大した手でもないのにお前が変に深読みしすぎなんだよ」


 おれ達は廊下で言い争いを始めていた。しかし、教室内での反省を活かし、今度は声を荒げずちゃんと小声で言い争っている。間違っても、「おれは悪くねぇっ! おれは悪くねぇっ!!」と大声を出したりはしない。


 さて、そんなこんなで、おれとサフィアの学院での記念すべき最初の授業は失敗に終わってしまった。まあ、サフィアのほうはなんだかんだで楽しそうだったし、これが嫌な思い出になることはないだろう。……なったら、ごめんね。


 で、おれのほうはというと、そもそもこの学院に来たのは青春を謳歌するためである。そして、授業中のマルバツゲームも、今やっているこの言い争いもおれにとっては心地いいものだった。


 ゆえにこの失敗は、おれにとっては貴重な青春の1ページとして刻まれる、いい思い出になるだろう。


20話を読んで頂きありがとうございました。


それで、投稿時間を変えた成果があり、新規の読者さんが増えました。

最近読み始めてくれた方、最初の頃から読んでくれていた方、また、ブックマークをしてくれた方もありがとうございました。とても嬉しいです。


ただ、読者さんがもっと増えて欲しいので、今後も数回ほど投稿時間を変えようと思います。


それで、次の投稿時間ですが、明日11/16(土)と11/17(日)は午前0時にします。

投稿時間が度々変わることになりすいませんが、よろしくお願いします。


以上です。これからも本作をよろしくお願いします。


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