最終話 魔法学院の異常者
結婚式前の挨拶もほぼ終わり、おれとおれの人生のメインヒロインにして花嫁である三人だけが控え室に残っていた。
「さて、挨拶しときたい人は後一人か」
「でも、まだ姿が見えないね」
「もしかして、来る途中でなにかあったとか?」
「あの御方に限ってそのような心配はないと思うが……」
噂をすれば影というべきか、とうとう挨拶すべき最後の一人がこの控え室へとやってきた。
「ようやく来たんですね。遅いですよ、師匠」
「別にいいじゃないか。ほら、主役は遅れてやってくるって言うだろ?」
その言い方だとおれが師匠と結婚するように思えちゃうからやめてほしいなあ。……いや、あれだよ。別に師匠の実年齢が問題とかじゃないよ。あくまでも、師匠はこの世界でのおれの母親だから結婚するのはどうかなあって意味だよ。
「まあ、主役云々は置いといて、今日は来てくれてありがとうございます」
「ああ、アンタこそ結婚おめでとう。……それにしても、馬子にも衣装ってのはこのことを言うんだねえ」
結婚式のために着慣れないタキシードに身を包んだおれを見て、師匠がそう言った。
「確かにそうですね。普段はアレだから忘れがちですけど、こうしてドレスに身を包むと師匠は立派な女性に見えます」
「まったく、言うじゃないかい。今日がアンタの晴れ舞台じゃなかったら、すぐに魔法をぶっ放してるところだよ」
うーん、やっぱり見た目を整えても師匠は師匠だなあ。まあ、そんな師匠のことがおれは大好きだけどさ。そして、おれと同じく師匠が大好き、と言うよりは大尊敬しているらしいアイシスが前に出る。
「ディーバ殿。本日はお越しいただき――」
「そういう堅苦しいのはいいよ。それよりアイシス、結婚本当におめでとう」
「……はい、ありがとうございます」
アイシスはわずかだが目に涙を浮かべ、それを見る師匠も心から喜んで見える。……なんか、おれに「結婚おめでとう」って言ったときより喜んでない? まあ、師匠にとってアイシスは親友の孫で思うところがあるだろうからいいんだけどね。
「それと、アンタ達もおめでとう」
「「ありがとうございます」」
師匠の言葉に、リミアとサフィアは頭を下げてお礼を返す。顔を上げた二人とアイシスを見た後、師匠はおれのほうを見る。
「しかしまさか、こんなに可愛い子達と結婚するなんて、アンタには本当に驚かされるねえ。…………ああ、驚くと言えば、アンタと初めて会ったときもそうだったね」
「……そういえば、そんなこともありましたね。確か、赤ん坊なのに喋り出したおれを見たときに、師匠はすごく驚いてましたっけ」
「その後、最強を目指して十年以上も修業に明け暮れる姿を見て変な子だと思ってたけど、こうして見ると立派に育ったもんだ。これも、全てアタシのおかげだね」
「……そうですね。ありがとうございます」
自慢げに大きな胸を張る師匠に対し、おれは素直にお礼を言った。変な子と言われたのは釈然としないが、師匠には育ててもらった恩があるしな。
「けど、アタシが結婚式は一人ずつが常識だよって教えたのに、こうして三人同時に行おうとするとはねえ。しかも、それをこの伝統ある魔法学院の学び舎で行うとか前例もないし、アンタは昔から本当に常識外れだよ」
師匠は呆れた顔でそう言った。……常識外れというのも懐かしい言葉だ。確か、師匠の家から旅立つときにおれのことを、「この世界の常識を外れた唯一の人間。言わば、この世界の異常者だからね」と言ってたよな。
そして、それを踏まえると、この場ではこう返すのが最もふさわしいだろう。
「この魔法学院で常識外れなことをするとか、おれらしくていいじゃないですか。なんたって、おれは――」
そこで、おれは一度言葉を切ると、大きな声で堂々とカッコよく宣言する。
「この魔法学院の異常者だからな!」
以上で、本作は完結になります。最後は駆け足での完結になってしまいましたが、最終話まで読んでくれた方、大変ありがとうございました。皆様に楽しんで頂ける作品になったなら、作者冥利に尽きます。
そして、もしよろしければ最後に評価やブックマーク、感想などをしてくれると凄く嬉しいです。次回作を書くための励みになるので、何卒よろしくお願い致します。
それともちろん、すでに評価やブックマーク、感想などをしてくれた方もありがとうございました。執筆を続ける上でとても励みになりました。
では改めて、本作を最後まで読んで頂き、本当の本当にありがとうございました!




