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【完結済】魔法学院の異常者 ~転生であらゆる魔法の無力化と模倣が出来るチートを得たので最強ですが、学院で気楽に青春を謳歌します~  作者: アズト
第5章

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第182話 昔話

 これは、レインがこの異世界に転生したときより数十年ほど昔の話。


 王都の大通りを二人の女性が並んで歩いている。その二人の女性は男であれば、いや、女であっても思わず目を奪われてしまうほどの美貌の持ち主だ。


「まったく、今日の授業も退屈で仕方がなかったねえ」


 そんな不満をこぼした女性の名はディーバ・バーンズアーク。この時代では魔法学院の生徒だが、学生とは思えないほどの美しさとスタイルを兼ね備えている、まさに絶世の美少女だ。なお、この時代のディーバは<変身(メルフォス)>を使わずに素でこの美貌である。


「まあ、君ほどの実力者ならそう思ってしまうのも当然か。なにせ、君はこの王都でも片手の指ですら余る人数しかいない、九星魔術師の一人だからな」


 そう返した女性の名はレイシス・エディルブラウ。未来のアイシスの祖母であり、この時代ではアイシスとよく似た容姿を持つ美少女だ。


「そうは言うけど、八星魔術師のアンタにとっても授業なんて退屈だろ?」


「そんなことはないよ。私にはまだまだ学ぶべきことがあるからな」


「相変わらずアンタは真面目だねえ……。勉学や鍛錬ばかりしてないで、たまには女らしいことでもしたらどうだい? 例えばほら、あの店できれいな服でも買うとかさ」


「そういう君は相変わらず美しい物が好きだな」


「そりゃ当然さ。美しい物同士が惹かれ合うのは自然の摂理だからね」


 長い桃色の髪を自慢げにかきあげながら、ディーバは豊満すぎる胸を張った。その様子を見て道行く男性が何人も足を止めるが、ディーバに話しかけようとする者は一人もいない。ディーバの容姿が秀ですぎているがゆえに、並の人間では近寄りがたいからだ。


 そんな男性達の様子を見て、レイシスはディーバに声をかける。


「美しい物だけでなく、たまには異性にも目を向けたらどうだ? 君ほどの人間なら相手は好きに選べるだろう?」


「だろうけど、男に興味はないねえ。そもそも、恋愛や結婚のなにがいいのかアタシには分かんないよ」


「ふむ……。……それなら、試しに子どもの名前でも考えてみたらどうだ? そうすれば、なにか価値観が変わるかもしれないぞ」


 道行く人々の中から赤ん坊を抱いて幸せそうに歩いている夫婦を目にしたレイシスは、思い付きからそんな提案をした。


「子供の名前ねえ……。それなら………………、レインとかどうだい?」


「……私の名前と似ているな。名づけの理由はなんだ?」


「なあに、アンタの名前から取ればアタシと違って真面目な子になるって思っただけさ。それに、この名前なら子どもが男でも女でも付けられるから考える手間が減るだろ」


「……そのような雑な考えで付けられた名前では、君のような適当な人間に育つ気がするがな……」


 隣で軽口を叩く親友を、レイシスは呆れ顔で見つめた。


「なんだい、うるさいねえ。だったら、言い出しっぺのアンタはどうなんだい?」


「私の子どもか……。……君のように名前に願いを込めるとして…………。……とりあえず女の子の名前なら浮かんだが、私の子どもにこの願いは難しいだろうな」


「そりゃまたどうしてだい?」


「私の家が公爵家だからだ。それに、近年は隣国との緊張状態が高まり戦争が近いとも言われている。もっと平和な時代にならなければ、私の願いは叶いそうにない」


「平和ねえ……。だったら、子どもじゃなくて孫はどうだい? もし戦争が起きたとしても、その頃には平和な世の中になってるだろ?」


 ディーバの言葉を受け、ふとレイシスは空を見上げた。空は厚い雲に覆われており、陽の光はどこにも見えない。


「どうだろうな……? ……もちろん、そうなって欲しいと願ってはいるが……」


「魔法の天才と呼ばれたアンタらしくない随分な弱気だねえ。……だったら、そのときはこのアタシがなんとかするさ」


 ディーバはすぐ近くにあった建物に飛び乗ると、胸に右手を当てて力強く宣言する。


「たとえ戦争が起きたとしても、アンタの孫が生まれる頃には平和な世の中を作ってあげるよ! 魔法の大天才と呼ばれたこのディーバ・バーンズアーク様がね!」


 そう高らかに宣言すると、ディーバはニカッと笑った。まるで、その笑顔に呼応するかのように雲が割れ、陽の光がディーバを照らす。その姿を眩しそうに見つめながら、レイシスは笑みを浮かべる。


「ふ……、そうだな。君ほどの魔術師なら我が国に勝利と平和をもたらしてくれるだろう」


「その通りさ。で、その平和な時代に生まれてくるアンタの孫の名前は?」


「……公爵家であるがゆえに自由な恋愛ができず、私は本当の意味で愛を知ることはないだろう。だがもし、政略結婚などと無縁の立場で日常を過ごせる子が生まれたら、その子には愛を知って欲しい。ゆえに――」


 雲の隙間から姿を見せた太陽に希望の光を見ながら、レイシスは未来の孫の名前を口にする。


「ゆえに、アイシス」


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