第181話 レインとアイシス
おれがサフィアと一夜をともにした後の朝。
閉め切ったカーテンの隙間からわずかに日の光が差し込み、窓の外からはスズメがチュンチュンと鳴いている声が聞こえてくる。こんなに清々しくて幸せに満ちた朝は一週間ぶりだなあ。
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――と、そんな出来事があってから一週間が経過した週末、今日はアイシス先輩とのデートの日だ。そして、いつの間にかおれ達はラブなホテルにやってきていた。さらに、いつの間にか二人ともシャワーを浴び終わっている。まるで、時間を消し飛ばす能力をくらった気分だ。
なので、今おれの隣にはバスローブを身に纏ったアイシス先輩が座っていた。バスローブが小さいのか、それともアイシス先輩の胸の大きさゆえか普通に胸の北半球や谷間が見えている。
で、なんなの、この状況!? 気付けば、もう完全にそういう流れなんだけどそういうことでいいの!? いいんだったら、このままアイシス先輩を押し倒しちゃうよ、おれ!?
「改めて、誕生日おめでとう、レイン君」
「あ、ありがとうございます、アイシス先輩」
おれの内心など知る由もないアイシス先輩は普通にお祝いの言葉を言ってくれた。というか、そういうことをするにしても、その前にプロポーズをしないといけないな。ただ、またしても良い言葉は思いつかなかったから、なんて言うかが決まっていないのだが。
「……あの、話があるんですがいいですか?」
「もちろんいいよ。なんだ?」
「リミアとサフィアにはもう話して了承をもらえてることなんですが、アイシス先輩にも――」
「すまないが、その前に一ついいか?」
そう言って、おれの話を遮ったアイシス先輩の顔は少し不満そうに見える。
「どうかしましたか?」
「私たちはもう恋人なんだし、そろそろ君の敬語と先輩呼びは改めても良いと思うのだが……」
「……ああ、そうですね。あ、また。と、とりあえず、呼び方から直しますね。……その、アイシス」
「……うん、そうやって名前で呼んでくれると嬉しいよ、レイン……」
そう答え頬を赤く染めたアイシス先輩、いや、アイシスの顔は子どものように可愛らしい。だが、その可愛らしい顔が、なにかを思い出したような表情に変化し口を開く。
「名前と言えば、レインは自分の名前の由来を知っているのか?」
「由来ですか? …………確か、師匠が自分に子どもができたら付けようって思っていた名前だって聞いたような気が……」
「ああ、私もそう聞いているな」
「……え? なんでアイシスが聞いて……? ……ああ、そっか。そういえば、アイシスのお祖母さんとおれの師匠は昔からの知り合いでしたね」
「その通りだ。だから、私の名前の由来も聞いてもらえるか? ……その、レインには聞いて欲しいから」
アイシスは恥ずかしそうに顔を赤くしながらそう言った。よくは分からないが、恋人であるアイシスの頼みなら当然聞くに決まっている。
「もちろんいいですよ」
「ありがとう。では――」
こうして、おれの知らない師匠達の昔話が始まった。




