第165話 一緒にいられれば
サフィアとの深夜デートを終えたおれは自室へと帰宅した。リミアの姿はないがもう自分の部屋に帰ったようで、その旨を示す書置きが机に置かれている。
「サフィアも言ってたけど、今日は寝れる気がしないなあ……」
なんたって、リミアに続きサフィアとも付き合うことになったからな。しかも、何度もキスをしたり抱きしめ合ったりしたので興奮して眠れない。明日が平日でなければ、今日はずっと一緒にいたかったくらいだ。
ああ、なにこれ、マジで最高すぎる! 彼女が一人いるというだけでも最高だったのに、そんな彼女に負けず劣らずの可愛さを持つ二人目の彼女ができるとか最高すぎるでしょ! 神様、女神様、そしてルミル神様、本当の本当ににありがとうございます!!
そして、こんな感じで浮かれ切っているおれだが、もちろんアイシス先輩のことも忘れてはいない。こうなると、アイシス先輩もおれのことを想ってくれている気がしてきたし、もしそうなら当然アイシス先輩も幸せにする覚悟だ。
さて、眠れる気は全くしないが、少しでも身体を休めるためにベッドには入っておくか。
*****
朝が来て魔法学院に登校したおれだが、放課後になるまでサフィアとは上手く話せなかった。昨日、正確に言うと今日ベッドに入るまではテンションが高く気にならなかったが、時間が経って冷静になると恋人になったばかりというのはやはり気恥ずかしい。
だが、さすがにこのままなにもせずに帰るというわけにはいかない。気を遣ってくれたらしく、今日のリミアは放課後すぐに帰った。つまり、今のおれはサフィアと二人きりなのでとりあえず話しかけなければ。
「な、なあ、サフィア」
「な、なに?」
「……と、とりあえず、いつものように訓練場に行かないか?」
「そ、そうね。行きましょうか」
互いにぎこちない会話だったが、なんとか二人の時間を継続することができた。そして、訓練場なら教室とかと違い人目を気にする必要もない。ないということで、おれがサフィアに視線を向けると彼女は照れくさそうにはにかんだ。
なにこれ、リミアのときもそうだったけど、今日は今までの倍くらい可愛いんだけど! サフィアも輝いて見えるし、恋人効果のすごさを改めて実感した。
ただ、そのすごさゆえ、なにを話していいか分からない。おれが言葉を探していると、先にサフィアが話し始めてくれた。
「……今日は誘ってくれてありがと」
「誘ったっていっても訓練場だけどな。というか、よく考えたら放課後なんだし外に行けば良かったのか……」
「別に、場所なんてどこでもいいわよ。今日、こうしてあなたと一緒にいられればそれで……」
「……ああ、そっか。まだ、今日が誕生日だもんな」
「うん……」
サフィアは左腕に付けたブレスレットを嬉しそうに見つめている。おれはあまり意識したことないけど、女の子にとっての誕生日はとても大切な物なのかもしれないな。……あれ、そういえばさっきの会話といい、もしかしてそういうことか?
「サフィア。もしかして、昨日の夜におれの部屋に来たのって、誕生日におれと一緒にいたかったからか?」
「……なんで、そういうところは察しがいいのよ……」
「すいません……。それと、そういう理由でおれの部屋に来たのに、あんなことになって本当にごめんな」
「もういいわよ。そのおかげで、こうしてあなたと付き合えたんだし」
そう言って、サフィアはおれに抱きついてきた。サフィアの身体も温かくて柔らかく、おれの身体は快感と高揚感で満たされる。やっぱり、恋人とのハグってすごい幸せな気持ちになるな。
「ねえ、レイン。手……」
「こうでいいのか?」
「うん……」
サフィアがその小さくてきれいな両手を開いたので、おれは彼女の両手に自分の両手を重ねて繋いだ。いわゆる恋人繋ぎというやつであり、繋いだ両手からも彼女の温かさと柔らかさが伝わってくる。
「後は……」
「ああ、分かった」
おれ達は両手を重ね合ったまま、互いの唇も重ねる。サフィアの唇も柔らかく、やはり恋人とのキスは気持ちがいい。その、えも言われぬ快感と高揚感から、おれ達は何度もキスをしてしまう。
その後、下校時間までずっとおれ達は恋人同士の幸せな時間を味わっていた。




