第160話 幸せな時間
おれがリミアと恋人になってから一日が経過した月曜日の朝。
「……痛い」
目が覚めたおれは試しに頬をつねってみるが、やはり痛い。痛いということは、おれがリミアと恋人になったのは夢ではないということだ。転生により得た二回目の人生にて、とうとうおれは初めての彼女も得ることができた。
ああ、なにこれ、マジで最高なんだけど! 初の彼女というだけでも最高なのに、あんなに可愛くて優しくてスタイルもよくておしとやかな女の子が彼女とか最高すぎるんだけど! 神様、女神様、そしてルミル神様、本当にありがとうございます!!
こんな感じで昨日も一人浮かれ切っていたおれだが、もちろんサフィアとアイシス先輩のことも忘れてはいない。あの二人もおれのことを想ってくれているのなら、リミアだけでなくもちろんあの二人も幸せにする覚悟だ。
とはいえ、今日明日でなにかあるってわけでもないし、少しの間はリミアと二人での幸せな時間を噛みしめていても罰はあたらないだろう。ただ、昨日は嬉しさ以上に気恥ずかしさが大きく、リミアとは会えなかったんだけどさ。
そのリミアのほうも昨日はおれには会いに来なかったから、同じように気恥ずかしかったのかもしれない。しかし、今日は平日だから確実に魔法学院で顔を合わせることになる。今までも楽しかったが、今日は過去一で魔法学院に行くのが楽しみだ。
さて、時計をみるとだいぶ早い時間に目が覚めてしまったようだ。だが、せっかくだしさっさと登校して、おれの可愛い彼女が来るのを待つとしよう。できるだけ早く会いたいしな。
*****
おれが教室に入ると、すでに一人の女の子がいて窓の外を眺めていた。その女の子が誰なのか、今のおれに分からないはずもない。
「お、おはよう、リミア」
「あ、レインさん。お、おはようございます」
今まではなにげなくしていた挨拶だったのに、互いにうわずった声が出てしまった。関係性の変化が原因なのは明らかだが、このギクシャクした感じさえ今のおれには心地いい。
「だ、だいぶ早く来たんだな」
「れ、レインさんこそ」
「おれはあれだ。……その、早くリミアに会いたいなって思って」
「っ! じ、実はわたしも」
はにかみながらリミアはそう言った。なにこれ、今までも可愛かったのに、今日は今までの倍くらい可愛いんだけど! なんかリミアが輝いて見えるし、これが恋人効果なの!?
すごい嬉しいんだが、この後なにを話していいかが分からない。今まで、おれたちはどんな会話をしていたんだっけ? おれが言葉を探していると、なにかを思い出したようにリミアが口を開いた。
「そういえば、もらったネックレスは今も付けてるんですよ。目立ちそうなので、制服の中に入れてるんですけど」
そう言ってリミアは制服の胸元に手を入れると、そこからネックレスを取り出した。
「そっか……。ありがとな、すごい嬉しいよ」
「こちらこそ、ありがとうございます。ずっと、大切にしますね」
嬉しそうに頬を赤くして、「えへへ」と笑う姿もとても可愛い。その可愛さとネックレスを見ていると、あの夜のことを思い出してしまう。ヤバい、思い出したらまたしたくなってしまった。
「あのさ、リミア」
「はい、なんですか?」
「この時間なら、最低でも後三十分くらいは誰も来ないと思うんだ。だから、いいかな?」
「……! ど、どうぞ……」
おれがリミアの肩に手を置くと、その意図を察した彼女は目をつむった。おれはリミアの顔に自分の顔を近づけ、再び彼女と口づけを交わす。
あのときもそうだったけど、リミアの唇は柔らかくてとても気持ちいい。おれの身体にはえも言われぬ快感と高揚感が走り、何度もキスをしたくなってしまう。いや、実際に何度もしてしまい、リミアもそれを嬉しそうに受け入れてくれた。
「あの、レインさん……」
「なんだ?」
「キスもいいんですけど、こっちもいいですか?」
顔を真っ赤にし目を潤ませたリミアは、その細い両腕をおれのほうに伸ばしてきた。さすがに、この状況でそれがなにを示しているか分からないほどおれも鈍感ではない。おれはリミアに密着し、彼女の身体を優しく抱きしめる。
リミアの身体は温かくて柔らかく、おれの身体は先ほどと同様の快感と高揚感で満たされる。恋人とのハグって、こんなに幸せな気持ちになるんだな。
その後、他の生徒の気配がするまで、おれ達は恋人同士の幸せな時間を味わっていた。




