第153話 女子風呂
レインがディーバの家でおとなしくしているころ、他の四人は露天風呂へとやってきていた。
ここは、昔レインが作成した露天風呂である。ちなみに、この風呂のお湯は天然ではなく<熱水>で生み出した物だ。
「昼間から風呂ってのもいいもんだろ?」
「そうですね……」
「疲れが取れて癒されるわ……」
「自然の中にある露天風呂というのも悪くないものだな」
そうして、女性陣は試合での汗と疲れを流していたが、そんな中でふとサフィアが声を漏らした。
「こうやって裸を見ると、やっぱりものすごくおっきいわね……」
サフィアの視線の先にはディーバの胸がある。そこには、九星魔術師にふさわしい非常に豊満な二つの膨らみが存在していた。
「なんだい。アンタは胸の大きさでも気にしてるのか?」
「……え? あ、はい、そうです。あたしはこれっぽっちなので……」
「別に、胸なんか大きくても良いことなんかないんだけどねえ」
「そうですね。重くて肩も凝りますし」
「可愛……ではなく、好みの下着も少ないしな」
「あたしからすれば、そういう話は自慢にしか聞こえないのよ……」
サフィアは不満げに頬を膨らませた。その姿を見かねたのか、ディーバが優しく声をかける。
「……一時的にでいいんだったら、胸を大きくすることも可能だよ」
「え!? そんなことができるんですか!?」
「ああ、アタシならできるね。どうする?」
「ぜひ、お願いします」
その言葉を聞き、ディーバはサフィアに対して、いや、正確に言えばサフィアの胸に対して<変身>を発動する。すると、そこには六星魔術師相当の大きさを持つ双丘が現れた。
「なにこれ、重っ! でも、柔らかくてしゅごい……」
サフィアは初めて感じた重さと柔らかさに心を奪われ、幸せそうに自分の胸を揉み続けている。
「<変身>ってこんなことまでできるんですね」
「いや、アタシの<変身>が特別性なのさ。だから、その逆もできるよ」
ディーバがリミアとアイシスの胸に<変身>を発動すると、二人の胸は一星魔術師相当の大きさ、いや、小ささに変化した。
「……! 胸がなくなりました……」
「これは、驚きだな……」
目を丸くした二人をよそに、サフィアは興奮気味にディーバを見る。
「あ、あの、ディーバさん、いえ、ディーバ先生! この<変身>ってあたしでも使えるようになるんでしょうか? いや、使えるようになりたいです!」
「そうさねえ……。<変身>を使える可能性はあるが、ここまでの練度でそれを使いこなすのは、残念だけどまず無理だろうねえ……」
「う……。そうですか……」
そう言って、サフィアはガクリと肩を落とした。そんなサフィアを見て、ディーバは再び助け舟を出す。
「ただ、レインだったらアタシと同じ練度で<変身>が使えるよ。だから、王都に戻った後でもアイツに頼めば今と同じ姿になれるね」
「そ、そうなんですね! それなら、たまにレインに頼んでみようかしら? というか、レインはやっぱりこんな風に大きいほうが好きなのかな……?」
サフィアは再び自分の胸を揉みながら、誰にも聞こえないような小さな声でポツリと疑問をこぼした。
*****
未だに、自分の胸を嬉しそうに揉み続けているサフィアをリミアが微笑ましく眺めている中、ディーバはアイシスと話をしていた。
「アンタが強くなろうとしたきっかけは、確かレイシスにあるんだよね?」
「はい、そうです。お祖母様のような立派な人間になりたいと思い、ずっと鍛錬を続けてきました」
「そうかい。だが、アタシに言わせりゃアンタだってもう充分に立派な人間だよ。尊敬や憧れの念だけで、そこまで頑張れるもんじゃあないからね」
「あ、ありがとうございます」
頬を赤くして照れくさそうに笑うアイシスをディーバは嬉しそうに見つめた。その後、昔レイシスと交わしたとある話を思い出しその話題をアイシスに振る。
「レイシスと言えば、アンタは自分の名前の由来は聞いてるのかい?」
「いえ、聞いたことはないですね。ただ、お祖母様が名付け親だとは聞いています」
「なんだ、そうなのかい。……まあ、名付けたはいいが、その理由までは照れくさくて言えなかったんだろうねえ」
「私の名前の由来はなんなのですか?」
「んー、そうさねえ。……せっかくだからレイシス本人に訊きな。最初は拒むだろうけど、可愛い孫の頼みならいずれアイツも折れるだろうさ」
「……分かりました。機会があれば訊いてみます」
そう答えつつ自分の名前の由来はなんだろうと思考を巡らすアイシスに、ディーバは再び声をかける。
「それで、話は変わるんだけどさ」
「はい、なんですか?」
「アンタって、レインに惚れてるのかい?」
「っ!! い、い、いえ、べ、べ、別にそそそんなことは」
「いや、その反応はさすがに分かりやすすぎやしないかい……。安心しな。誰にも言やしないよ」
「はい……」
「しかし、驚きだねえ。アンタみたいな上玉があのレインに惚れるなんて……」
恥ずかしさから真っ赤に染まった顔を俯かせながら、アイシスは会話を続ける。
「私はどうすればいいのでしょう? こういう経験は初めてで、よく分からないのですが……」
「どうすればねえ……。とりあえず、レインと恋仲にはなりたいんだろう?」
「それは……、…………はい、そうですね。ですが、レイン君のほうは私をどう思っているのでしょう? 私は、彼に好かれるような人間なのでしょうか……?」
「好かれるって話なら、もう惚れられてても不思議じゃないけどねえ……」
「そ、そうなのですか!?」
思わぬ話に、アイシスはつい大きな声を出してしまった。だが、幸いにして、その声はリミアとサフィアには届かなかった。
「アンタみたいに見た目も中身も立派な相手なら、レインは簡単に惚れる気がするけどねえ……。魔法学院で一緒に過ごしていて、そう思えるような機会はなかったのかい?」
「どうなんでしょう……? この手のことに疎い私には、そういう判断が付かない物で……」
「うーむ、そうかい。……まあ、どちらにせよ、レインとの関係を進展させたいなら必要なのは攻めだね」
「……攻めとは?」
「そうさねえ……。やはり、男に有効なのはそれだね」
ディーバはアイシスの胸を指さしながらそう言った。そこには、すでに<変身>を解除し、小さなそれから本来の大きさに戻った立派な果実が浮かんでいる。
「胸……ですか?」
「ああ、そうさ。男はみんな女の身体、中でも胸が大好きだからねえ。特に、レインなんて人一倍胸が大好きさ」
「……た、確かに、彼にそういう一面があるのは私も理解しています」
「なら、話が早い。アンタはかなり恵まれた身体を持ってるんだし、チャンスがあったらその武器を思い切り振るってレインを誘惑しな」
「ゆ、誘惑!? で、ですが、それはさすがに恥ずかしいというか……」
「まっ、最終的にどうするかはアンタ次第さ。ただ、アタシは応援してるから、上手くいくように頑張んなよ」
「……は、はい、ありがとうございます……」
そう言って、アイシスは赤くなった顔を半分まで風呂に沈め、口からブクブクと泡を出していた。




