第151話 魔術師の最高峰②
「こうして戦うのは楽しいもんだねえ。久しぶりに血が騒ぐよ」
どこまでも、ディーバは余裕の態度を崩さない。それに対し、アイシス達三人は息も乱れ、疲労が大きく蓄積してきている。
「……いったい、どうしたらいいのよ?」
「……アイシスさん、なにか手はありますか? なにか、ディーバさんの防御を搔い潜る策が必要ですよね?」
「……そうだな。………………ディーバ殿ほどの相手に通じるかは分からないが、この作戦はどうだ? 実行するには二人の緻密な連携が必要だができそうか?」
アイシスがリミアとサフィアに耳打ちすると、二人は目を見合わせてから口を開く。
「「……やってみます。……いえ、やってみせます!」」
「良い返事だ。だが、おそらくそれだけでは足りない。だから、<凌魔封結界>を使う」
「それって、どんな魔法なんですか?」
「それは――」
「複数人で発動可能な結界魔法だね。発動時、魔法陣に魔力を込めた者の能力を大きく向上させ、逆にそれ以外の者の能力を落とす効果がある。その強力な効果ゆえ、発動時間が短く使用後の疲労も大きいが良い魔法だ。それを使えるとは、さすがはレイシスの孫だよ」
魔法の説明を終えたディーバは、まるで子どもの成長を喜ぶ親のように嬉しそうに笑った。
「さすが、よくご存じで。ちなみに、この結界魔法もディーバ殿なら解除できるんですよね?」
「そりゃアタシはそれを解除する魔法も使えるさ。けど、それじゃ面白くないだろう。だから、来な」
「……ええ、いかせてもらいます。<凌魔封結界>!」
アイシスが描いた魔法陣にリミアとサフィアも魔力を込め、三人で<凌魔封結界>を発動した。すると、地面に星型の大きな陣が描かれ、周囲一帯が銀色の幕で覆われる。
「<四重絶零氷柱槍>!」
「<輝閃光矢>!」
「<灼熱火炎弾>!」
「ほう……。想像以上に魔力が上がったねえ」
三人が放った魔法を、ディーバは先ほどまでとは違い上級攻撃魔法で相殺した。その間に、アイシスは再びディーバに接近し体術戦を繰り広げる。
「良いねえ。体術の威力も速度も目に見えて良くなってるよ」
「お褒めいただき光栄です。<四重絶零氷柱槍>!」
アイシスはディーバの上に飛び上がると、ディーバの四方から巨大な氷柱を放つ。その後、反対側に着地し氷柱の後ろに姿を隠しなからディーバに高速で接近する。しかも、それだけではない――
「いくわよ、ミア!」
「はい! <極煌閃光矢>!!」
リミアの放った巨大な光の矢がディーバめがけて飛んでいく。だが、ディーバは一切の動揺を見せず、まずは四方から放たれた<絶零氷柱槍>を同じく<絶零氷柱槍>で相殺しつつ思考を巡らせる。
(あの<極煌閃光矢>のすぐ後ろに<灼熱火炎弾>が放たれてるね。魔法をピタリとくっつけて攻撃魔法が一つしかないとアタシに誤認させる策か)
「良い策だが甘いね。<剛塊岩石砲>、さらに……!?」
<極煌閃光矢>を<剛塊岩石砲>で相殺したディーバに衝撃が走った。なぜなら、光の矢の後ろにあったのは巨大な火球ではなく巨大な炎鳥、つまり<神聖不死鳥>だったからだ。
<神聖不死鳥>。それは、かつてディーバがレインに見せられたときに、「それ、戦闘でなんの役に立つんだい?」と言い放った魔法。<灼熱火炎弾>と形状以外はほぼ違わない魔法をレイン以外に使う者がいないと思っていたがゆえに、ディーバの思考と動きが一瞬硬直する。
その隙に、前方からは神聖なる不死鳥、後方からはアイシスが高速で接近する。もはや、ディーバにはその二つの攻撃を同時に防ぐ時間は存在しない――はずだった。
「馬鹿な!?」
「ディーバさんが……!?」
「消えた!?」




