第15話 いい勝負をしましょう!
おれは闘技場にカッコよく降り立った。そして、これからおれの実技試験が始まる。
だが、試合開始の前にあの失礼な奴にはガツンと一言かましてやる。そう思い、おれはカースナ先生とかいう奴に向かって言い放った。
「ラヴィクトワールエタモア(調子に乗んな!)」
「貴様、今なんて言ったんだ?」
「……おれの故郷の言葉で、『いい勝負をしましょう!』っていう意味ですよ」
「まったく聞いたことのない言葉だな。いったいどこの田舎から出てきたのやら……」
まあ、田舎っていうかこの世界から見れば異世界語ですけどね。しかし、仮にも先生相手に暴言を吐くのはまずいと思ったため、ついひよって相手が分からない言葉を使ってしまった。
だが、試合であればおれがひよる理由はない。つーか、この先生相手にひよってるやついる!? いねえよなぁ!? と思ったが、残念ながら審判の人は少し萎縮しているようだ。もしかすると、カースナ先生と審判の人は上下の関係なのかもしれない。
さて、真面目な話、この試合、相手のプレートを割って勝つのは当然。なんなら圧勝しておいたほうがいいだろう。まあ、おれなら余裕だな。
「では、さっさと始めよう。試合開始の宣言をしろ、審判」
「ハ……ハイ、カースナ先生!! 試合開始ィィィ」
審判がそう言い放った次の瞬間、カースナ先生のプレートが真っ二つに割れた。いや正確には、試合開始と共におれが<疾風刃>を発動し、カースナ先生のプレートを真っ二つに割った。
フッ、決まった。一瞬で勝利するおれ、超カッコイイ。
「なんだ、急にプレートが割れたぞ。どういうことだ、審判?」
「わ、分かりません。このタイミングで壊れたんでしょうか?」
どうやら、状況を飲み込めていないようなので、おれがその会話に割って入る。
「おれがプレートを割ったんですよ。見えなかったんですか、先生?」
「ふざけたことを言うな。そもそも貴様は試合開始のあと、まったく手を動かさなかったじゃないか?」
「いやいや、それなりの実力があれば手を使わずに魔法の発動ができることくらい知っているでしょう?」
「それは当然知っている。だが、貴様ごときにそんな真似ができるわけがないだろう」
……なんてこった。どうやら、おれは雑魚認定されていて、おれのやったことは理解してもらえないようだ。
「おい、審判。新しいプレートを用意しろ。そのあと、試合を再開する」
というわけで、残念ながらさっきのは無効試合となった。そのため、ちょっと時間ができたのでサフィアのほうを見てみると、おれに向かってなにかを叫んでいた。
遠くてよく聞こえないがたぶん「がんばれー!」だ。……実は「だいすきー!」だったりしない? そんなわけねえよなあ。母音が最初しか合ってないし。
その後、新しいプレートが用意され、再び審判が声を上げる。
「試合開始ィィィ」
とりあえず、おれは分かりやすいように右手を使って<疾風刃>を放つ。すると、当然カースナ先生は魔力障壁を展開してそれを防いだ。
「どうした、この程度か?」
「んー、先生からも攻撃していいですよ。なんなら全力でどうぞ」
「ほう、そう言ったことを後悔させてやる」
カースナ先生はおれに向かって風の中級攻撃魔法である<飄疾風刃>を放つ。当然、おれは魔力障壁を展開してそれを防ぐ。
「思ったよりはやるようだな。だが、私の魔法にいつまで耐えられるかな」
そう言って、カースナ先生は<飄疾風刃>を連発してくる。だが、その程度ではおれの魔力障壁にはヒビひとつ入らなかった。
とりあえず、もうしばらくこうしておき、まずはおれの防御力をアピールすればいいだろう。そして、その後、今度はおれの攻撃力をアピールして圧勝し、おれの実力を示してやる。
さて、また少し暇な時間ができたなーと思ってサフィアのほうをみると、手に汗を握っておれの試合を見ていた。こうして、美少女に見守ってもらいながら試合ができるとか、感無量だなあ。
「貴様、試合中にどこを見ている!?」
おっと、カースナ先生を怒らせてしまったようだ。そして、いつまで経ってもおれの魔力障壁を破壊できず、業を煮やしたカースナ先生は<旋嵐疾風刃>を放ってきた。仮にも魔法学院の先生なら上級魔法も使えるか。
そして、中級魔法を何発も受けた後に上級魔法をくらったことで、おれの魔力障壁の一部が砕け散った。まあ、防御力アピールはこんなもんでいいだろう。
「どうやら、防御には自信があるようだが、それもそろそろ終わりのようだな。くらえ、<旋嵐疾風刃>!」
「じゃあ、そろそろおれからもいきますよ。<旋嵐疾風刃>」
「馬鹿な!? 平民ごときが上級魔法だと!?」
おれとカースナ先生の<旋嵐疾風刃>が激突する。その結果、おれの<旋嵐疾風刃>がカースナ先生の<旋嵐疾風刃>を切り刻んで消滅させ、勢いをそのままにカースナ先生へと向かっていく。
そして、おれが上級魔法を使ったうえに自分の上級魔法を打ち破ったのを見たカースナ先生は動揺したのか、魔力障壁を展開し損ね、<旋嵐疾風刃>の直撃を受けた。
「ぐわあああああ!!」
カースナ先生が悲鳴を上げながら、その場に倒れて気絶した。まあ、ギリギリで反射的に自分の身体に魔力を纏って防御してたから、幸い大きな傷は負っていないようだ。それに、さっき回復魔法を使っていた試験官もいるし、特に心配はないだろう。
そして、当然カースナ先生が付けていたプレートは割れているので、これで予定通りおれの圧勝であり、その実力を示すことにも成功した。
だが、審判は目の前の結果に呆然としており、声を発しようとしない。
「すいません、審判さん。結果を訊いていいですか?」
「……え? あ、ああ。し、試合終了! レイン・バーンズアークは入学試験を合格とする!」
こうして、サフィアに続き、おれも無事に入学試験に合格した。
15話を読んで頂きありがとうございました。
また、評価やブックマークをしてくれた方もありがとうございました。
これからも本作をよろしくお願いします。
それで、投稿時間ですが、明日11/11(月)~11/15(金)は朝の7時頃にします。
理由は、本作を読んでくれる方が現状かなり少ないため、時間を変えることで少しでも読者さんが増えて欲しいと思ったからです。
それとその際に、総合ポイントが多ければ読んでくれる方が増えると思うので、良ければ評価やブックマークをして協力して貰えると助かります。
以上です。よろしくお願いします。