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第126話 正妻戦争

 モカちゃんがおれ達のほうを見て疑問を口にする。


「そういえば、このひとたちはだれなの?」


「この人達は王都でできたお姉ちゃんの友達だよ」


「そーなんだ。じゃあ、みんなもいっしょにおままごとしよ?」


 モカちゃんが向ける純粋無垢な瞳を前に、ノーと言えるわけがないしノーと言う理由も存在しない。美少女をこよなく愛するおれは小さい女の子も大好き……、ではなく子どもと遊んであげるのは大人として当然の行いだからな。


「おれはもちろんいいぞ」


「あたしもいいわよ。子どもは好きだし」


「私も構わない。これも良い勉強になるだろう」


 というわけで、おれ達もおままごとに参加することになった。すると、モカちゃんはおれのことを指さして宣言する。


「じゃあ、おにいちゃんがモカのパパやくね」


 まあ、この中で男はおれしかいないから妥当な配役だな。ただ、もしおれが天性の年下殺しであれば、モカちゃんの夫役もありえたかもしれない。


「それで、いつもみたいにリミアおねえちゃんがママやく」


「ということは、おれとリミアが夫婦ってことか」


「……わ、わたしとレインさんが夫婦……」


 リミアは頬を赤くしながらそう言い、その姿は心なしか嬉しそうに見える。だが、この配役に異を唱える者がいた。


「ちょっと待って! 夫婦……じゃなくて、ママ役はあたしのほうがいいんじゃないかしら! ほら、モカちゃんとあたしの髪型とかそっくりだし」


 確かに、モカちゃんはツインテールなので髪型はサフィアとそっくりだ。そう考えると、サフィアの発言には一理ある。……あるか? 髪型と親子に因果関係なくね? おれと同じことを考えたのか、サフィアの意見に異を唱える者がいた。


「待って欲しい。そういうことなら、ママ役にふさわしいのは私だろう。モカちゃんと私の髪色は似ているしな」


 確かに、モカちゃんは水色の髪なので、アイシス先輩の青色の髪に似ていると言える。そう考えると、アイシス先輩の発言には一理あるか。髪の色は遺伝による部分が大きいと聞くからな。だが、そんなアイシス先輩の意見に異を唱える者がいた。


「待ってください。モカちゃんとおままごとをするときはわたしがいつもママ役だったので、一番ママ役にふさわしいのはわたしです」


 どうやら、三人ともママ役をやりたいみたいだな。おままごとをした記憶などないおれにはよく分からんが、どうやらママ役というのは一番人気らしい。


「それなら、あたしは親戚や近所の子ども達とよく遊んであげてるわよ。もちろん、おままごとだって何度もしてるわ」


「それなら、私は…………、私は強い……ので、子どもに危険が迫っても守ることができる」


 もっともらしいサフィアの意見に対し、おままごとどころかその手の遊びをろくにしてこなかっただろうアイシス先輩の意見は明らかにズレていた。


「わたしは料理が得意です。どうせなら、モカちゃんも美味しいご飯が食べたいよね?」


「うん、たべたい!」


「料理なら、あたしだって少しはできるわよ」


「わ、私はできない……」


 ここでも、貴族であるアイシス先輩には不利なようだ。だが、そんな貴族であるからこその利点を閃いたらしく、アイシス先輩がモカちゃんの両肩に手を置きながら口を開く。


「私の家は裕福だから、とても美味しい料理を食べさせてあげられるぞ」


「そうなの?」


「ああ、それに欲しい物があれば、なんでも買ってあげよう」


「なんでも……」


 アイシス先輩の言葉に、モカちゃんは目を輝かせていた。これが、お金の力というやつか。


「そ、それはちょっとずるいと思います!」


「ええ、ずるいわ!」


 さすがに、お金の力では勝ち目が欠片もない二人は抗議を始め、激しく火花を散らしあう。なんだかよく分からないけど、三人ともたくさんお話ししてとっても仲良しだっピよ!


 そして、お話しの矛先はおれのほうへと向けられ、三人がグイッと迫ってきた。


「レインさんは誰をお嫁さんにしたいんですか!?」


「そうよ、あなたは誰と夫婦になりたいの!?」


「そうだ、君は誰と結婚したいんだ!?」


 三人とも、ただのおままごとだとは思えない真剣な瞳をしているが、言い争った興奮のせいか話の方向がズレているような気がする。そのズレを戻す意味も含めて、おれはモカちゃんに話しかける。


「モカちゃん。実はパパ、この三人のことが大好きなんだ」


「「「っ!!」」」


 背を向けてしまったから分からないが、おれの言葉にモカちゃんではなくリミア達のほうが強く反応した気がする。


「だから、三人ともママにしたいんだけど、駄目かな?」


「んー、よくわかんないけどたのしそうだからいいよー」


 小さな子どもなだけあって深く考えていないようで、モカちゃんからはあっさりと了承をもらえた。


「というわけで、三人ともママ役で。……ってあれ、なんでみんなして後ろを向いてるんだ?」


「な、なんでもないです」


「こ、これはあれよ。急に森が見たくなったのよ」


「そ、そうだな。心の準備と言うか……」


 よく分からないがしばしの間、三人ともおれと目どころか顔を合わせようとしなかった。だが、その後のおままごとでは、魅力的な三人の妻と可愛い娘との幸せな生活を楽しめたのでよしとしよう。


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