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第120話 ボディタッチ


 放課後、おれはアイシス先輩に用があるし仕事もあるので、生徒会室へと向かっている。……のだが、その途中で上級生と思われる女子生徒達に囲まれていた。


「キミがバーンズアークって子だよね?」


「魔法大会、見たよー。すごかったよねー」


「暇だったら、今からウチらと遊ばない?」


 教室に続き、ここでも魔法大会の話か。同級生はもちろん、上級生の中でもおれは話題になっているらしい。とはいえ、この人達もけっこう可愛いし、こうして女子に囲まれるのは悪くない。いや、むしろ、嬉しい。


 というか、こうやって声をかけてくる女子の中にはなにか裏があるのではなく、純粋に強者であるおれへの憧れから好意を向けてくる人もいるのではないだろうか? だが、憧れは理解から最も遠い感情であり、好意の有無をおれでは理解することができない。


 それに、昼休みにリミアとサフィアに釘を刺されたばかりだからな。相手は先輩だし失礼にならないように軽くお喋りだけして、この場を離れる感じでいくか。そう思い、少しだけお喋りに興じていると、次第に先輩達がおれに近づいて来る。


「じゃあ、そろそろ遊びに行こっか?」


「どこ行くー?」


「ウチ、あのお店に行きたーい」


 そう言って、一人はおれの右腕に、もう一人は左腕に、そして最後の一人は背中に抱きついてきた。くっ、さすがは先輩だけあってこのレベルのボディタッチもお手の物というわけか。


 それに対し、おれはこの手のボディタッチに対して全然耐性がない。リミア達と出会ってから何度か嬉しい経験もあったのだが、いつまで経っても耐性が付く気がしない。


 ま、マズイぞ……。いや、嬉しんだけどさ。嬉しいんだけど、さすがにこのまま先輩達に付いて行くわけにはいかない。だが、男としてこの状況には抗いがたい。どうやって、この状況から抜け出そうか考えていると、聞き馴染みがあるが普段よりも温度の低い声が聞こえてきた。


「君達、すまないが少しいいか?」


「あ、アイシス生徒会長!? ど、どうしたんですか?」


「君達と一緒にいる彼は生徒会の一員なんだ。それで、生徒会の仕事が溜まっているから、できれば彼を解放して欲しいんだが」


「そ、そうなんですね。すいません、分かりました。ウチらはこれで帰りますね」


 そう言って、女子生徒達は素早く帰っていった。まあ、あんな状態で急に生徒会長で公爵令嬢のアイシス先輩に話しかけられれば、ああいうふうに動揺するよな。そんな女子生徒達を見送ると、アイシス先輩はおれに視線を向ける。


「君はずいぶんと女子生徒達に人気があるようだな」


「……あー、なんかこの前の魔法大会が原因みたいでして……」


「そういうことか……」


「あ、でも、おれは遊びに行かずにちゃんと生徒会室に行くつもりでしたよ」


「それならいいのだが……」


 そう言いながら、アイシス先輩はおれのことをジッと見つめている。そして、なぜかは分からないが、先ほどの女子生徒達のようにおれの左腕に抱きついてきた。


「では、行こうか」


「え、あ、はい」


 アイシス先輩はそのボディタッチ状態で普通に歩き出した。まあ、大きくて柔らかい胸が当たっているから嬉しんだが、これはどういう状況なんだ? ……あれか、さっき仕事が溜まっているって言ってたし、おれが逃げないように捕まえてるのか?


「すいません、仕事が忙しいときにお喋りとかしていて……」


「……いや、先ほどはそう言ったが、実はそこまで仕事が溜まっているわけではないんだ」


「そうなんですか? じゃあ、なんで?」


「……それはその、なんとなくというか……」


 アイシス先輩は赤くなった頬を隠すように横を向いた。そのまま、申し訳なさそうな声でおれに問いかける。


「楽しそうに会話をしているところを邪魔してしまい、すまなかった。……やはり、迷惑だったか?」


「いえ、別にそんなことはないですよ。むしろ、今の状況のが嬉しいというか」


「嬉しい……? ……ああ、そういうことか」


 しまった! つい、嬉しいとか言っちまった! アイシス先輩には前に魔法学院の屋上で下心のある嘘をついたこともあったし、おれの考えはバレてしまったみたいだ。だが、それにも関わらず、アイシス先輩はおれの左腕から離れようとはしない。


「……あの、いいんですか? アイシス先輩的には嫌だったりするんじゃ?」


「いや、別に嫌ではないよ。むしろ……」


「むしろ?」


「……なんでもない。それより、君が嬉しいというのなら、このまま生徒会室まで行こうか」


 アイシス先輩はおれに抱きついた腕にさらに力を込めた。なぜ、アイシス先輩がこんなことをしてくれるのか、その理由を考えたいところだ。……ところなのだが、先ほど以上にアイシス先輩と密着したこの状態で、他のことに思考を割ける余裕がこのおれにあるはずもなかった。


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