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第102話 オススメしたい商品

 アイシス先輩にぬいぐるみをプレゼントした後、おれ達は再び町中を出歩いて、いくつかの店を見て回った。


「バーンズアーク、次はこの店に入ってもいいか?」


 そちらを見るとショーウインドウがあり、そこには可愛い服が並んでいる。可愛い物が好きということは、当然可愛い服も好きということか。


「いいですよ、入りましょう」


 店に入ると、アイシス先輩は率先して可愛い服が並んでいるコーナーへと向かっていく。その様子は、普段は大人びた言動をするアイシス先輩とは真逆で、まさに年相応の女の子だった。


 その後、アイシス先輩は可愛い服を見ては試着を繰り返し、気にいった物をカゴに入れていく。なお、ここでのおれの主な役割は荷物持ちである。


「次は、向こうを見たいのだがいいか?」


「もちろんいいですよ」


 アイシス先輩の望みを断る気などないおれは、なんのコーナーかも確認せず二つ返事で了承する。そして、アイシス先輩の後に続いていくと、着いた先は下着コーナーだった。


 ……え? ここって、男子であるおれはいて大丈夫なのか? ……分からんが、幸いにして今この下着コーナーにいる客はおれ達だけだから大丈夫かな?


 おれのそんな疑問と心配をよそに下着を物色していたアイシス先輩が声をかけてきた。どうでもいいけど、下着を物色っていうと変な意味に聞こえる気がする。


「バーンズアーク、これはどう思う?」


「……えーっと、良いと思います」


 どうやら、アイシス先輩は今日ずっと可愛い物を目にしてきてテンションが上がっているらしく、平然と女性用の下着をおれに見せてきた。なにこれ、自分が着るかもしれない下着を男に見せるとか、もしかしておれ達は付き合っているのでは?


 まあ、今は少し冷静さを失っているんだろうが、さすがに試着したときにまで、その下着姿をおれに見せてくるということはないだろう。もちろん、見せてくれるのであれば全然構わない。むしろ、推奨。


 そんな感じで、おれ達が下着を見ていると、女性店員がこちらに近づいてきた。

……これはあれか。押し売りでもやりに来るのか? それとも、男であるおれが下着コーナーにいるのを注意しに来たのか?


「……あの、もしかして、アイシス様ですか?」


「「……え?」」


 その予想外の言葉におれ達が固まっていると、店員さんがさらに言葉を続ける。


「やっぱり、アイシス様ですね! わたし、平民にも優しく接してくれるアイシス様を尊敬しているんです!」


「そうか、ありがとう」


 アイシス先輩は店員さんが差し出してきた手を握り返しながらそう言った。一応は変装しているのにアイシス先輩だと気づくあたり、この店員さんはかなりのファンと言えるだろう。


「あっ、申し訳ありません! わたしったら興奮して、ついアイシス様に失礼な態度を……」


「いや、構わないよ。それより、私のこの格好を見て分かる通り、今日はお忍びで来ているんだ。だから、私の名前は呼ばないでもらえるか?」


「お忍び……」


 そう言いながら、店員さんはおれのほうを見る。そして、おれ達二人を何度か見た後で納得したように口を開く。


「そういうことですね、分かりました」


「ああ、よろしく頼む」


「それでしたら、アイ……、ではなくお客様、是非ともオススメしたい商品がございますがいかがでしょうか?」


「そういうことなら、喜んで見せてもらおう」


 アイシス先輩がそう答えると、店員さんはそのオススメの下着とやらを持ってきてアイシス先輩に見せ始めた。


「こちらなんですが、いかがでしょうか?」


「これは……、少々変わった物に見えるな」


「こちらは人気の商品ですし、今のお客様達にはふさわしいと思いますよ。もし、よろしければ、ご試着だけでもどうですか?」


「……それなら、試しに試着させてもらおうか」


「かしこまりました。では、お二人ともこちらへどうぞ」


 下着の試着ということもあり、すぐ近くではなく店の奥の試着室へと連れていかれた。中は個室に分かれており、他の試着中の客の姿は見えないようなので、おれが入っても問題はなさそうだ。


「では、こちらの試着室をお使いください」


「分かった」


 アイシス先輩が試着室のカーテンを開け中に入り数分後、中から声が聞こえてきた。


「一応、着てはみたのだが、どうだろう? 私にはよく分からないのだが……」


「そういうことでしたら、まずはわたしが確認させてもらってもよろしいでしょうか?」


「ああ、頼むよ」


 店員さんが試着室の中へと入っていき、アイシス先輩の下着姿を確認する。もちろん、店員さんが入っていくときにこっそり中を覗こうなどという不埒な真似を、紳士であるおれはしていない。


「よくお似合いですよ、お客様」


「そうか、ありがとう……」


「では、次は彼氏さんの感想をどうぞ」


 その言葉とともにおれの目の前にあったカーテンが開かれ、アイシス先輩の下着姿が露わになる。


 セクシーさを感じさせる黒い下着で布面識が狭く、さらに少し透けているように見える。そして、下着姿なので当然アイシス先輩の白い肌や脚、くびれた腰はもちろん大きな胸とその谷間もはっきりと見えていた。


 その扇情的な姿を見ておれが硬直していると、見られたことで同じくアイシス先輩も硬直する。そして、数秒後に意識を取り戻したアイシス先輩が「ひゃあああああ!!」という叫び声を上げた。


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