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【小説家になろう】夏のホラー企画関連

【夏のホラー2023】不思議な体験は誰にも話さない方がいい

作者: 吉野貴博


 何か怖い話とか不思議な話ってない?と聞くと、Aさんはこんな話をしてくれた。



暑い暑い言ってますがね、そりゃ昔だって夏は暑かったんですよ、数字にしたら大したことないかも知れませんが、子供の頃だって夏は暑いって思ってたんですよ。

私はあきらめて何も言わず、もう暑いとも思わずぐでーっと歩いていたんですけどね、ある日突然Bくんがにっこにこ笑って

「いいとこ行こう!」と誘ってくれたんです。

なんだよさっさと帰りたいよと思うんですけどそれを言う元気すらなくて、Bくんの歩く後ろをついて行くんですね。

通学路を外れてどこまで行くんだろうと思ったんですが、思った途端

「ここだよ!」と電柱の根元を指さすんです。

日陰なんかありゃしない、お日さまがさんさんと照っていて、電柱の影だって短くあるだけです、Bくん私の手を取ってその指さしていたところに私の手を持っていきますと、ひんやりしているんです。

そりゃ驚きましたよ、なんでこの空間だけひんやり涼しいのか。びっくりして暑さも忘れたんですよ。

両手をその空間に持っていくと両手ともひんやりする、抜くとじわじわ暑さが戻ってくる、不思議だと思っていたら、Bくんその空間に突撃してはUターンしまた突撃しと行ったり来たりして、

「すずしー!」と大喜びです。

その場所にずっと立ちっぱなしはしないのかと言うと

「さすがに寒くなったし、出たら暑さを強く感じて、よくなかった」と言うんですよ。やったのかよって。

私はびっくりして、不思議だなーと思いつつ、もう手を入れるのは止めてBくんが大喜びで出たり入ったりするのを見ていました。

Bくんは毎日そこに通って、私も時々は一緒に行きまして、Bくんが誘う他のクラスメートと不思議だねと言い合ったりしていました。

その後何があったということもありませんし、親に言っても

「へぇ。なんだろうね」くらいで「ちょっと連れてってみてよ」というまでにもいかず、そのうち夏も終わってそこで騒ぐこともなくなりました。



 へぇ!不思議な話ですね!というとAさん続けて



これ真相が何だったのかは解りませんし、この先も解ることはないでしょう、で、あなた、作家さんですよね、こうやって話を聞いてそれを書いたり、自分でもいろいろ考えて書いたりしてるんでしょう、あなたならこの話にどんな真相を思いつきますか?



 なるほど挑戦か、ちょっと集中して考えて

 それは幽霊ですね。冬の寒い日にそこで死んでしまった人がいて、幽霊になってずっとそこに立っていた。でも夜はその道を誰も通らないから幽霊がいることを知られず、昼間は陽の光が幽霊を見えないようにしてしまい、誰もそこに幽霊がいることに気がつかない。

 Bくんがたまたまそこを通って、幽霊の中を通ってその冷たさに気がついた、でも幽霊だとは解らず冷たい空気があると面白がって何度も涼んだりみんなを呼んだりした、

 そんなところでどうでしょうか。



 Aさん感心してくれて



その後、大人になってBくんは消防士になりました。

火事の現場に勇敢に突撃して大勢の人を助けましてね、優秀さを表彰されて、でも天狗にはならず謙虚な姿勢がみんなに愛されたそうです。でも、とうとう火事の現場で亡くなってしまって。


「まぁ子供の頃の、いい思いでですよ」



 そう言った途端、Aさんは一瞬肩を震わせて顔面蒼白になり、両腕で自分の体を抱きしめてうずくまり、ぶるぶる震え始めた。


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