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第四章  『覚醒』

「やはり覚醒はしていなかったのだな」

「はい・・・」

 うなだれた様のメイドさん。

 そして、その横には佐藤夕実。

「無茶をしたものだ」

「悠斗は無事かな」

「無事では済まんだろうな」

 泣き出すエミューをなだめるメイドさん。

 夕実は、いやフェリテリテは黒き霧に包まれた山裾を見つめる。

 ドラゴンの羽ばたきで少しずつその正体を現すディアヌス・ブレーン。

 ワインのコルクのようにその巨体が山裾に開いた大きな黒い穴を埋めていた。

「あちらとこちら世界をつなぐあの穴をあけた楔としてディアヌス・ブレーンを使ったのだろう。これは容易に消せるものではないからな」

「伝説の通りにあれを灼熱のドラゴンの炎で焼き尽くすことはできないのですか?」

「焼いたところで、また生えてくる。あれはそういうものだ。せめて、ルウ・エリアルがいればと思ったのだが・・・」

「僕が悠斗に無理言ったから」

「気にするな。覚醒してなければ意味がないのだ。探りを入れたが手ごたえはなかった。結局、他に方法を考えるしかなかったのだ」

 フェリテリテは気丈にエミューを励まそうとするが、瞳からは涙が流れ落ちた。

(夕実の意識が強くなっているのか?)

 フェリテリテはもう既にフェリテリテ自身だけの存在ではなくなっていた。

 夕美の意識は悠斗の遺体を探せと命じるが、それは無茶だとフェリテリテが諌める。

 どちらも自分という意識があり、まるで理性と本能の葛藤の如くせめぎ合うのだった。

「鈴木先輩・・・ルウ・エリアル・・・」


 夢だ

       そう思った

 長い夢            あっけないものだ

       そう思った

 いやなこといっぱい 

      いっぱいしんだ

          しんだにんげんでいっぱい

             にんげんきらい


 そうやって一人でひきこもって、一人で死んでいくのだと決めたのだ。

 しかし、寂しさに耐えきれず、エルザを、話し相手を作った。

『はい、マスター』 

 満足した。

 美味しいお茶を入れてくれないかい?

『はい、マスター』

 けれども、人が来てから思った。

 ぜんぜん違うのだな。

 人っていうのは。

 何だか包まれているような。

 そう、今のこんな風に・・・


 ゆるやかな目覚めは、ぬるぬるとした感触と共にだった。

 ディアヌス・ブレーンの中にいた。

 悠斗は自分のどの位置にいるかよくわかった。

 悠斗はもう既に悠斗自身だけの存在ではなくなっていた。

 悠斗は少しためらってからその肉の壁を切り裂いた。

(私はもう一度生まれるのだ。このディアヌス・ブレーンの腹の中から)


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